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躍進企業REPORT

公和印刷:リスロンA37(H-UV搭載)1号機導入

印刷ジャーナル 2012年10月25日
今井寛社長
A全判オフセット4色印刷機「リスロンA37(H-UV搭載)」

 「人と技術の調和」を経営理念に掲げ、多様化する市場ニーズに対し、高い技術力で応えてきた公和印刷(株)(本社/東京都文京区水道1-2-1、今井寛社長)。その同社は今年3月、多様化する印刷ニーズ新たな戦力として小森コーポレーション製・A全判オフセット4色印刷機「リスロンA37(H-UV搭載)」の第1号機を導入した。「都市型工場にはコンパクトでコストパフォーマンスの高い印刷機が必要」と提唱してきた同社・今井社長に、導入に至った経緯や現在の稼働状況について伺った。


 同社は昭和21年の創業。以来、東京・文京区を基盤に事業を展開し、今年3月には設立60周年を迎えている。創業当時は、活版印刷による書籍関連の仕事を主軸にしてきたが、時代の潮流、そして市場ニーズの変化に対応すべく、オフセット印刷への移行を図り、それまで書籍印刷中心であった業務体制からカラー物の商業印刷をメインとする印刷会社へと転身し、今日に至っている。特に昭和後期から平成初頭にかけて積極的な設備投資を行い、KOMORIの菊全4色機2台、菊半4色機2台の計4台16胴の体制で稼働を行ってきた。
 しかし、これらの設備導入から10年以上が経過。その間、印刷ニーズもより高度な印刷技術、さらに短納期対応など顧客からの厳しい要望に応えられないような状況になっていたという。
 「一番のきっかけとしては、当社の営業部から『この仕事は、品質について非常に厳しい印刷なので、協力会社に委託して欲しい』との依頼が印刷現場に届くようになったこと」(今井社長)。
 それまで品質については、自信を持って活動していた同社であったが、日々、進化し続ける市場ニーズへの対応力の減退、さらには社内スタッフからも品質への信頼が薄れている。その現実を知ることとなった今井社長は、あらためて設備投資を前提とした生産体制の見直しを検討することになった。

コンパクトサイズの戦力機開発を要望
 
 しかし激変する市場環境を考慮すると、印刷工程の川上から川下までの生産設備を新たに導入することは、非常にリスクが高いと考えた今井社長は創業当時から唯一、社内で設備を持っていた印刷部門に経営資源を集中し強化することを決断し、その計画を6年前に実行。その最初の入れ替えは、菊全4色機の「リスロンS40」であった。
 だが、これまで菊全機2台を並列設置していた同社は、想定外のある問題に直面することとなった。
 「その新台は、従来機と比較して機械サイズが大きく、また、多彩なオプションを装備していることから実際の設置面積は、予想を超えるものとなってしまった」(今井社長)。
 10年という歳月は、変化し続ける印刷ニーズに適用するため、生産機も進化し、また機能性を高めるために機械サイズも比例するように大きくなっていた。住宅や一般商業ビルが隣接する東京・文京区に生産拠点を構える同社にとって、設置スペースは限りある財産とも言える。実際に搬入された印刷機を見て、今井社長は、「もちろん物理的には設置可能だが、通路の確保などを考慮したとき、菊全機を併設することは不可能と、なかば諦めた」と同サイズの印刷機をもう1台併設することは無理と実感したという。
 以後、今井社長は「日本市場に考慮した機械設計をして欲しい。特に当社のように会社数が密集している首都圏の国土事情を反映した設備」の開発をKOMORIに対し強く求めてきた。その要望に応えるかたちで、今井社長のもとにKOMORIからコンパクトサイズの菊全機を開発する予定であり、その開発にあたりヒアリング調査をさせて欲しいとの連絡があった。
 今井社長は、その中で「コンパクト設計」、「最高回転数13,000程度」、「過度なオプション装備の廃止」を大項目として、かつ厳しい市場環境にも威力を発揮するコストパフォーマンスの高い印刷機としての開発を強く要望。最終的に、その要望のほぼ100%が満たされた製品としてA全判オフセット印刷機「リスロンA37」が正式リリースされ、今井社長は、迷うことなくその第1号機の導入を決断した。
 「山形の工場で実機を初めて見たとき、これが本当に菊全の紙が通るのか、と疑うぐらいにそのコンパクト性に驚愕した」(今井社長)。
 本稼働から数ヵ月が経過した現在、何の問題なく稼働しており、また併設の「リスロンS40」との品質の差を感じないほどのクオリティの高い印刷を実現していると今井社長は「リスロンA37」を評価。なお同機には、H-UVも搭載。合わせて並列設置されている「リスロンS40」にもH-UVの後付け設置を施し、菊全判機設置工場内を完全なパウダーレス工場としている。
 「1台だけがH-UV機ということでは、本来の瞬発力が発揮できないはず。それならば、完全にH-UV仕様にすることで、持てる全ての特性を活用できると判断した。おそらく当社は、菊全機のH-UV搭載機が2台併設されている東京23区内唯一の印刷会社であると思う」(今井社長)。

菊全機として問題なく稼働
 
 印刷現場を管理・統轄している同社・沼野仁製造部部長も「実機を見たときの正直な感想は、あまりにも小さかったので、本当に菊全の紙を印刷できるのかと思った」と、その第一印象を振り返ったうえで「実際に稼働させてみると菊全の給紙も安定しており、既設のリスロンS40と比較しても遜色ないことから、現場として完全な菊全機という位置づけで稼働を行っている」とその機能性を評価している。また並列設置している「リスロンS40」と「リスロンA37」の使い分けについて沼野部長は、「当初は、菊全サイズの用紙はリスロンS40で、A全サイズ以下は、リスロンA37で印刷するといったことを計画していたが、先ほど説明したように菊全紙の給紙に全く問題がないことが確認できたので、現在では、機械の使い分けを行っていない。また品質の差もまったく感じていない」と、あくまでも菊全機としての稼働を実施していることを明らかにした。
 同社では、油性からH-UVへの移行に伴い、主要な顧客に対しては品質チェックを実施し、確認を得てきた。すでに油性印刷からH-UVに移行した印刷物のリピートオーダーも受注しているという。
 また同機を担当する製造部・印刷課の田代裕晶係長は「操作性もよく、小回りがきく印刷機であると実感している。現在では印刷絵柄や用紙にもよるが、常時11,000〜12,000回転で稼働させている。またH-UVを搭載しているのでパウダーによるトラブルもなく、また板取りを行う手間が無くなったことは、オペレーターにとって非常に助かる設備である」と、その感想を述べている。
 今井社長は、「リスロンA37」の導入成果について「本稼働からまだ間もないが、体感的には生産効率で20%は向上している。特にオペレーターの負荷低減には、大きな成果を発揮しているはず」と説明。またH-UVについては「UV自体は以前からある技術ではあるが、電力消費やオゾン排気ダクトの設置など、都心型の当社のような工場では、近隣への配慮から手を出せる設備ではなかった。H-UVであれば、それらの問題を気にすることなく、速乾印刷を実施することができる。インキをはじめとする諸資材コストは、油性に比べ割高になるが、速乾性による作業効率の向上でカバーできると確信している」と語った。