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躍進企業REPORT

広研印刷:顧客視点の品質を追求 〜 都市型工場の課題をH-UVで解決

印刷ジャーナル 2012年2月25日
前川社長
H-UV搭載 リスロンG40

 「お客様に安心と満足を与え、感動をお届けする」を経営理念に掲げ、新しい価値を提案する情報発信サービス企業として展開する広研印刷(株)(本社/東京都豊島区高田3-3-16、前川光社長)は昨年2月、同社・早稲田工場に東京エリアでは1号機となるH-UV(ハイブリッドUVシステム)搭載の「リスロンG40(菊全判4色機)」を導入。設置スペースなどの問題を抱える都市型印刷工場において同機は、どんな効果をもたらしたのか。その点について前川社長に伺った。

「感動経営」を実践
 
 同社は1960年5月に広報技術研究所として創業し、公共団体の委託による広報印刷の企画・編集をはじめ、グラフィックデザイン、写真撮影等の事業を展開。以後、印刷設備を導入し、書籍印刷を中心に事業領域を拡大。創業以来「ホスピタリティ(おもてなし)」を常に意識した事業展開は、多くの顧客企業から信頼と評価を受け、一昨年5月には、創業50周年を迎えている。
 「当社としてお客様に感動を与えたい。それには、お客様が求める以上のことを提供しなければ、お客様は満足も感動もしてくれない。そこで今年度の経営計画に『感動経営』を掲げ、お客様の立場となって真剣に考えることを実践してきた」(前川社長)。
 また同社は1972年から毎年、経営計画を策定している。この経営計画は全従業員が執筆する参加型の経営計画で、同社の特徴の1つと言える。
 「年度ごとに設定された会社全体の方針に対し、各担当役員が経営目標への基本方針を打ち出す。それに対し、こんどは部門長がアクションプランを策定し、さらに部員がアクションプラン実行に向けた取り組み計画を発表するもの」(前川社長)。
 その同社が今回、H-UV搭載の「リスロンG40」を導入した背景について前川社長は次のように説明する。
 「更新が近づいている既存機は老朽化し、トラブルも少なくはなかった。当社は、4/4色の書籍印刷の仕事が多く、残念ながら裏づきコスレなどの事故も発生していた。その問題を解決できる設備が必要であった。H-UVについては私自身、内覧会も見学しており、もし設備できれば当社の抱えている問題を一気に解消できる印刷設備だと感じていた」(前川社長)。
 また同社がH-UVに魅力を感じるもう1つの要因として設置スペースの問題が挙げられる。
 「当社の印刷工場は、スペース的に決して広い工場ではない。ページ物主体であることから台数も多く、例えば4色300ページの仕事であれば、片面を刷った乾燥待ちのパレットがどんどん増えていく。しかし速乾のH-UVであれば、即座に裏面印刷に移行できるので、スペース的な問題も改善できる。また一般的なUV機と違い排気ダクトが必要ないので、当社のような都心型の印刷工場にとっては、理想的な印刷機といえる」(前川社長)。

品質の安定化を目指しCMSにチャレンジ
 
 昨年3月から本稼働を開始したH-UV搭載の「リスロンG40」。速乾性による生産性の向上を評価する一方、前川社長は「一番期待していたのは品質。生産性は、印刷会社側の理論であるが、品質はお客様と直結するもの。つまりいくら生産性が上がっても品質面で、お客様に満足してもらえる製品が提供できなければ意味がない」と同社の経営計画である「感動経営」の実現がH-UVに課せられた使命であると語った。そして、その思いは結果として現れることとなる。
 「昨年9月は印刷部門で事故0件を達成している。私の記憶でも、ここ10年はなかったこと。もちろん単月のことであるが、これまでは些細なことではあるが何らかの事故が発生していた。その面では導入効果があったと感じている」(前川社長)。
 また、さらなる品質の安定化を目指している同社では、CMSへの取り組みを2年ほど前から開始している。その推進メンバーであるメディア情報本部クロスメディア推進部の塚本茂雄テクニカルマネージャーは「フロント部門をはじめへ製版、印刷の各セクションで色に関する情報を共有し、効率化を図ることが目的だった」と説明。またその取り組みの骨子そしてにジャパンカラー標準印刷認証の認定取得を選択した。現在は、ファイルメーカーで数値管理を行い、再版時の濃度、ドットゲインなど基本に稼働するシステムの運用を予定しているという。

MAX回転数でも問題なく速乾
 
 H-UV搭載の「リスロンG40」は印刷現場では、どう評価されているのか。早稲田工場・生産推進部統括の前川桂常務は次のように語っている。
 「ドライダウンがないので色調合わせに時間をかけず、素早い刷り出しが可能となった。またパウダーによる事故や品質の低下などの問題が解消されたので、これまで品質的に問題があった仕事もH-UV機に移行している」(前川常務)。
 さらに、これまで協力工場に委託していた厚紙印刷も導入後は内製化を実現。また油性機との比較については、仕事内容によって異なるが、これまで油性機で11,000回転から12,000回転で印刷していた仕事もH-UV機では14,000回転で稼働できるようになり、さらに条件にもよるが15,000回転以上でも全く問題なく稼働させることができたという。
 「回転数だけで見れば約20%、トータルでは10%程度の向上だが、現在20マッチング、20枚での刷り出し完了を目指し、取り組みを開始しているので、これが実現できればさらに生産効率は上がるはず」(前川常務)。
 今後の課題として前川常務は「生産性も重要だが一番の目的は、お客様に最高の製品を提供すること、つまり事故を徹底的になくすことである。現在、品質面では非常に良い結果が出せているので、今後は、生産効率をはじめ、利益に関連する部分に着手している段階である」と語る。
 早稲田工場・印刷部の徳武哲副部長は「初めてのUV機ということで多少の不安もあったが、現在は順調に稼働している。生産スピードも速く、立ち上げ時の損紙も大幅に削減できた。また印刷立ち会い時もドライダウンがないのでOKがでれば、すぐに本刷りに移行できる」と、また担当オペレーターの萩原敬課長代理は「これまでのようにキズ、コスレなどを心配することなく、安心して回転数を上げて印刷できる。また速乾なのでスペースを有効活用できる」と同じく中川和幸主任は「休み明けの稼働でも、すぐに色調整ができ、パウダーなどの作業負荷が全くない」とそれぞれ評価している。
 最後に前川社長は、今後の展開について「正直なところ、導入の目的のなかには、特殊原反などを使用した新しい印刷物への対応という考えは全くなかった。しかし営業展開していくうえで今年からは商業印刷に力を入れていく方針を打ち出しているので、その中の新たな取り組みとして進めていく可能性はある」と説明したうえで「この2〜3年で新規開拓を含め、取引先が増えてきた。だが、そのほとんどが出版社で一般商業印刷については、広告代理店からの受注に傾倒していた部分がある。しかし、この景気で広告代理店経由の仕事が減少しており、そこで直接取引しているクライアントに対し、企画提案を行い、商業印刷の受注を伸ばしていくことを目指していく。その構想に今回のH-UVは必要不可欠な設備の1つとなるはず」語ってくれた。