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躍進企業REPORT

アンリ:ドイツ・KBA社の水なしUV印刷機「ジーニアス52UV」国内1号機導入

印刷ジャーナル 2012年1月1日
野々下社長
中間 営業統括本部長
梶原 製造・工務統括
国内1号機の「ジーニアス52UV」
紙厚0.8ミリまで。ベニア板への印刷も。
幅広い商材のサンプル

小ロット対応力強化 〜 非吸収素材への特殊印刷で差別化
ヤレ削減に大きな効果

 プリベイドカード印刷をはじめ、特殊印刷のレンチキュラーやスクラッチ加工・バリアブル印刷、スキミングバリアカードなどを小ロットから提供する(株)アンリ(大阪市東成区深江南2-8-37、野々下誠人社長)は昨年9月、新たな戦略機としてドイツ・KBA社の菊四裁水なしUV印刷機「ジーニアス52UV」国内1号機を導入。2012年、非吸収素材への特殊印刷分野において価格競争力に磨きをかけるとともに、商材の拡大を図ることで、同社の真骨頂とも言える「小ロット多品種への対応力」強化に乗り出す。


 同社の創業は昭和60年。テレホンカード生産事業をきっかけに、パッケージ印刷の(株)スリービーと中古印刷機器販売の(株)ジェピックの合同出資によって誕生したUVの特殊印刷特化型企業だ。
 平成2年に大阪で開催された「国際花と緑の博覧会」をきっかけにテレホンカードの需要は急増。平成4年の同社テレホンカード生産枚数は月産50万枚に達したという。
 しかし携帯電話の普及に伴い、その需要は激減。そこで同社は同じ「カード」というメディアに特化する形で、プリペイドカードや一般カードにその事業領域を広げ、さらに平成15年にはレンチキュラー、平成18年にはスキミングバリアカードを開発するなど、PVCPC、PETといったプラスチック系素材への印刷で大きな成長を遂げる。
 また、15年ほど前から品質の安定を目的に水なし印刷を採用。水なしUV印刷の草分け的存在としても知られる。

    ◇   ◇

 いまや同社を象徴する商材へと成長したレンチキュラー。カマボコ状の凸レンズを用いることで、見る角度によって絵柄が変化したり、立体感が得られたりする印刷技術だ。同社がこれに注目し始めた当初、その技術は非常に閉鎖的な状況にあったことから、同社は独自でこの技術開発に着手。野々下社長は「失敗の連続で費用がかさみ、あきらめかけたこともあった」と当時の苦労を振り返る。
 そんな「産みの苦しみ」を経て軌道に乗せたビジネス。取締役営業統括本部長の中間章夫氏は「ニッチな市場ではあるが、テレビや映画が3D化されたことで、レンチキュラーへの認識も広がりつつあり、受注案件も増えている」との現状を語る。

    ◇   ◇

 早くから小ロット多品種への市場の流れを捉えてきた野々下社長。2012年からはその方向性をより鮮明に打ち出す考えだ。
 昨年9月、新たな戦略機としてドイツ・KBA社の菊四裁水なしUV印刷機「ジーニアス52UV」を導入。これは昨年のIGAS2011で東レブースに展示された機械。もちろん国内1号機である。
 まず「戦略1」として野々下社長は、ヤレ削減によるコスト削減および価格競争力強化を挙げる。同機はアニロックス方式で、アニロックスローラーとインキ着ローラー、版胴、ブラン胴の4つしかない。そのアニロックスからショートインキングトレインの働きで、直接インキを版面とブラン面に転移するため、刷り出しから本刷りまでのヤレは10枚程度で済む。「現在、原材料価格は高騰しており、菊四サイズのPET1枚が100円程度する。そのヤレを10枚に抑えることができれば、我々がターゲットとする小ロット多品種においてコスト削減だけでなく、価格競争力においても大幅な強化が図れる」(野々下社長)
 また製造・工務統括の梶原和章氏は「印刷の立ち上がりが早いだけでなく、ジョブチェンジもわずか6分程度。従来の3倍のジョブ数はこなせるだろう」と説明。さらに「グリッパーの受け渡しがないため、縦方向の見当精度が非常に高い。シビアな見当精度が求められるレンチキュラーで威力を発揮する」としている。

    ◇   ◇

 続く「戦略2」は、商材のバリエーション拡大である。同機は紙厚0.8ミリまで対応し、例えばベニヤ板やブリキ板にも印刷できる。中間氏は、「いままで外注していた仕事の内製化はもちろん、商材の幅が広がることで、営業展開にも厚みをもたせることができる」との考えを語るとともに、工場見学も幅広く受け入れ、オープンにしていく意向を語っている。
 また梶原氏は「現在、水なし印刷の特徴を活かした高精細印刷にもチャレンジしている」とし、その可能性にも期待を寄せている。
 「どこかでできる印刷は、すべてこなせる印刷会社」を目指すアンリ。「ジーニアス52UV」という新たな戦略機をひっさげ、2012年、小ロット多品種の特殊印刷分野においてさらなる競争力強化に乗り出す。