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躍進企業REPORT

コンパス:TDP導入でモノクロ頁物の生産効率が向上

印刷ジャーナル 2011年9月15日
東條社長
ピンクマスターと比べて設置面積は半分に
刷版工程のスピード化が印刷工程にも波及

 モノクロ頁物印刷を軸に「引き出しの多い印刷会社」を目指す(株)コンパス(大阪市北区天神西町7-8、東條章樹社長)は今年4月、それまで刷版工程の主役だったピンクマスター製版機を廃棄し、処理液やトナー、インクカートリッジも使わない三菱製紙の完全プロセスレスCTPシステム「サーマルディジプレートシステム」へと切り替え、モノクロ頁物印刷において同社が生命線とする「品質」に磨きをかけるとともに、生産効率の大幅な改善を達成している。

封筒印刷でも事業拡大

 同社の歴史は40年以上前にさかのぼる。軽印刷業として産声をあげた「東條プリント」がその源流だ。「品質」へのこだわりを生命線としてきた「東條イズム」は、いまも受け継がれ、とくにモノクロ頁物印刷においては、「小ロット対応」「低コスト」「短納期」といったアドバンテージを付加、かつ明確に提示することで企業価値を高めているのが特徴だ。
 「4色機も設備してカラー印刷も手掛けているが、『モノクロ頁物印刷のコンパス』というイメージは未だに強い。実際、モノクロ頁物印刷の売り上げは全体の半数を占め、基盤事業として最大の強みであることは事実だ」と語る東條社長。ただ、現在同社が目指すのは「引き出しの多い印刷会社」。その一環として封筒印刷事業を強化している。
 「電子書籍が騒がれる中、我々がいますぐその知識と技術を習得してビジネス展開できるかというと疑問だ。そこでオフセット印刷業の延長線上で何ができるのかを考え、封筒印刷にフォーカスした展開を考えた。商業印刷と比較して競合相手は少なく、参入の余地はあると判断。4〜5年前から本格的な事業を展開している」(東條社長)
 新たなビジネス領域拡大の矛先として同社が選択した封筒印刷ビジネス。いわゆる「手の掛かる仕事」を中心とした既存顧客などからの注文で、いまや単色、2色、4色の計3台の封筒専用印刷機ラインはフル稼働状況にあるという。「薄利ではあるが、いまの時代、設備がフル稼働していることは成功だと言えるだろう」(東條社長)

懸念されたアナログへの対応も克服

 同社におけるサーマルディジプレートとの出会いは開発当初にさかのぼる。テスト段階での協力要請を受けたのがきっかけだ。
 それから数年経った今年4月、同社のモノクロ頁物印刷の刷版工程を支えていた2台のピンクマスターの内、1台に機械トラブルが生じ、修理依頼したところ「いますぐ部品を調達するのは困難な状況」との答え。東日本大震災の影響によるものだとの説明だった。
 そこでダイヤミックから提案されたのがサーマルディジプレートへの切り替えだった。「テスト段階から関わっていたし、その後の開発で耐刷性や印刷適正が向上していることもよく理解していた。なにより、生産に追われている我々にとって『即日にでも納入できる』というダイヤミックさんの柔軟性、誠意が導入のきっかけだった」と東條社長は説明。現場の評価に後押しされる形で2台のピンクマスター製版機を廃棄、2台の菊四裁判完全プロセスレスCTP「サーマルディジプレートシステム TDP-459」を導入した。
 導入の背景には、もちろん製品への高い評価があったわけだが、ただ1点、懸念されたのはアナログへの対応だった。
 同社の場合、版を預かって再版することはなく、ほとんどが新版での入稿になるが、デジタル入稿が増えたといっても、まだまだアナログ入稿は残っている。そこで選択肢はスキャニングによるデジタル化ということになるが、網点写真部分のモアレは避けられない。それでは「東條イズム」に反することから、営業サイドでクライアントの協力を仰ぎ、徹底した訴求活動でデジタル入稿への切り替え、もしくはアナログの場合は網点を使わないというルール付けで、その課題をクリアしている。

「設置スペース」=「コスト」

 導入から半年が経過した現在、2台で月平均3,000版以上を処理する同社。従来から比べると版数は格段に増加しているにも関わらず、従業員の残業は激減。生産効率の向上は顕著に表れている。このことについて東條社長は「サーマルディジプレートシステムの高い生産性がもたらした部分に加え、刷版工程のスピード化が印刷工程へと波及し、オペレータの生産効率に対する意識を変えるといった相乗効果を生んでいる」との見方を語っている。
 さらに、「対ピンクマスター」の観点から、網点の再現性や耐刷性に信頼を寄せる一方、サーマルディジプレートシステムの大きな魅力でもあるメンテナンス性についても高い評価を示している。実際メンテナンスは、専用の不織布清掃クロス「ナノワイパー」にアルコールをつけて、サーマルヘッドとローラーを軽く拭くだけ。現像液などの交換・洗浄といった時間のかかるメンテナンス作業が不要になることのメリットは大きい。
 ピンクマスターから切り替えたサーマルディジプレートシステムは、生産効率、品質、メンテナンス性といった様々なメリットをもたらしたわけだが、都心部に工場を構える同社にとって、省スペース設計は大きなアドバンテージだという。実際、ピンクマスターと比べて設置面積はおよそ半分。「『スペース』=『コスト』である。これは馬鹿にできない。今回、残り半分のスペースが空いたことからカラーのデジタル印刷機を導入する予定だ」(東條社長)
 今後は、生産コスト削減を目指し、封筒印刷の刷版工程もサーマルディジプレートへの移行を進めたいとする同社。クライアントの要求が高度化する一方、単価の下落はなお続いている。そんな中、短時間で効率の良い生産工程を追求することで利益を創出する。コンパスは、サーマルディジプレートシステム導入で、この効果を実現している。