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躍進企業REPORT

不二グラフィック:「bccksBunko」の生産受注で、ブックオンデマンドのビジネスモデル具現化

印刷ジャーナル 2011年6月25日
取締役常務執行役員 宮村 知史 氏
「書籍印刷への適正」で高い評価を得たフルカラー・オンデマンド印刷機「RISAPRESS Color651」(手前)およびモノクロ・オンデマンド印刷機「RISAPRESS105HR」(奥)が肩を並べる形で設置されている。
1冊当たりの料金は、モノクロ48頁の文庫本で525円(本体価格500円)という低価格を実現。
誰もがブログのように簡単にWeb上で本を作れるCGMサービス「BCCKS」(ブックス)。
Web上に作られた本を、実際の紙の本に出版できるサービス「bccksBunko」。1冊からでも美しい文庫本と新書版がオンデマンドで印刷され、ユーザの手元に届けられる。

 デジタル印刷分野の強化に乗り出している不二グラフィック株式会社。昨年4月、簡単にWeb上で本を作れるCGMサービス「BCCKS」(ブックス)が展開する出版サービス「bccksBunko」(ブックス文庫)の生産委託を受注し、ブックオンデマンドのビジネスモデルを具現化している。

原点は業界紙関連ビジネス

 同社の創業は昭和28年。大阪・北区に本社を置く不二印刷(株)の関連会社「新報印刷(株)」として産声をあげた同社は、組版から印刷までを手掛ける業界紙関連ビジネスを中心に、その社歴を綴ってきた。その後、平成5年に同じくグループ企業であった製版部門のアクトフジックス(株)およびデザイン部門の旧不二グラフィック(株)の2社を吸収する形で合併し、不二印刷100%子会社として現在の不二グラフィック(株)が誕生した。以来、文字物を中心に、地方自治体や金融、教育関連といった印刷需要を支えている。

デジタル印刷の後加工充実で独自性打ち出す

 グループ全体で5台のオフセット輪転機を稼働させ、ギフト・通信販売・旅行代理店のカタログ・パンフレットなどを中心に、自己完結型のビジネスモデルを追求する不二グループ。オフセット輪転印刷にフォーカスした企業経営に徹しつつも、印刷ビジネスに軸足を置いたクリエイティブ企業としての存在感を明確に打ち出しているのが特長だ。
 現在、この不二グループ全体が掲げるテーマが「デジタル印刷分野の強化」。不二グラフィックでも平成11年から教育関連テキストの印刷を皮切りに、デジタル印刷機の運用を開始しているが、平成21年からは、その取り組みを加速させているという。
 その一つとして後加工の充実が挙げられる。同社では「デジタル印刷の後加工」にフォーカスした設備投資および運用を通じて独自性を見いだし、企業価値を高めている。そのラインナップは中綴じ、無線綴じはもちろん、B2からの折り、表面加工、穴あけなど多岐にわたり、これらすべてがデジタル印刷物に照準を合わせた形で運用され、いわゆる「ブックオンデマンド」を実現している。また、無線綴じでは、PUR糊にも対応するなど、広い守備範囲も武器としている。

機種選択の争点は「書籍印刷への適正」

 グループが掲げるデジタル印刷分野の強化。その明確な方針に沿って同社が着手したのは、モノクロ機の増設とカラー機の新設である。平成21年から機種の検証に乗り出した同社だったが、そんな最中、ある案件が浮上する。それは誰もがブログのように簡単にWeb上で本を作れるCGMサービス「BCCKS」(ブックス)が展開する出版サービス「bccksBunko」(ブックス文庫)の生産委託だ。「bccksBunko」とは、Web上に作られた本を、実際の紙の本に出版できるサービス。1冊からでも美しい文庫本と新書版がオンデマンドで印刷され、ユーザの手元に届けられるというもの。1冊当たりの料金は、モノクロ48頁の文庫本で525円(本体価格500円)という低価格を実現し、誰でも本を作って売ることができ、また購入することができる。
 このサービスのブックオンデマンド部分の受注をめぐって、デジタル印刷機の導入を急いだ同社。検討の結果、クライアントの評価にも後押しされる形でモリサワのRISAPRESSの導入が決定。2010年2月、フルカラー・オンデマンド印刷機「RISAPRESS Color651」およびモノクロ・オンデマンド印刷機「RISAPRESS 105HR」が肩を並べる形で設置された。
 機種選択の争点となったのは、やはり「書籍印刷への適正」。同社のデジタル印刷ビジネスを統括する宮村知史常務取締役は「モノクロ機は、細線や小文字、白抜き文字やハーフトーンなどの再現性を、またカラー機は、ワックスを内包しオイルレスでの低温定着が可能となったデジタルトナーHDによるテカリが少なくオフセット印刷に近い品質を高く評価しました。書籍のオンデマンド印刷に適した条件を兼ね備えた生産機としてクライアントの評価も高いことから同機種の選択を決めました」と説明する。

手厚いメンテナンス体制は重要なポイント

 「bccksBunko」のブックオンデマンド部分の一括受注に成功し、昨年4月から生産をスタートさせた同社。印刷データは週単位で一括入稿され、翌週金曜日に発送するという流れだ。仕様はモノクロ/カラーごとに、32頁から320頁まで16頁刻みと定められており、サーバにアップロードされた入稿データは自動面付けされ、RISAPRESSで出力される。
 およそ1年間の運用を経たいま、改めてRISAPRESSの評価を聞いてみた。
 「ひとことで言えば『使い勝手が良い』ということになるでしょう。たとえばジョブの切り替わり時やジョブ中の設定した枚数カウント時に合紙を入れることができます。また表裏の見当調整を簡単に設定できる点などもオペレータは高く評価しているようです。さらに薄紙についてはとくにカールが少ないため、いわゆる後加工適正に優れた印刷物ができると言えるでしょう」
 一方、宮村常務は、サポート面でも高い満足度を示している。
 「デジタル印刷はやはり瞬発力が必要とされます。そこで安心できるサポート、手厚いメンテナンス体制は重要なポイント。RISAPRESSのサービスマンの熱意にはいつも感心させられています」
 販売実績の多いモリサワでは、製造元であるコニカミノルタビジネスソリューションズの技術開発部と密に連携したサポート体制を整えている。販売する側の目とユーザ側の目を反映させたメンテンス体制は、多くのユーザから高く評価されている。

発送業務の効率化にも着手

 今後さらに広がるであろう「bccksBunko」サービスを視野に入れ、デジタル印刷部門の強化を図る同社。同様にデジタル印刷機を活用する「仕組み」を利用した受注案件もいくつか抱えているという。このような需要の増加に対して同社では、発送業務も課題の一つとしており、今後、バリアブル印刷を活用した発送業務の効率化にも取り組んでいく考え。