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躍進企業REPORT

富士精版印刷:常温ワンウェイシステムを枚葉機にも導入

印刷ジャーナル 2010年4月5日
若林工場長(右)と淀野顧問
常温ワンウェイシステム

 富士精版印刷(株)(大阪市淀川区西宮原2丁目・吉賀文雄社長)は、環境対応の一環として市島工場(兵庫県丹波市市島町)のオフセット輪転機に導入した「常温ワンウェイシステム」を、先頃、本社工場の枚葉機3台にも導入した。
 システムは、印刷機の湿し水運用について、従来の循環システムからワンウェイシステム、つまり水の常温を保って一方供給するもので、水の冷却を不要とし、このため冷凍機もフィルターも必要とせず、また、電気消費量や消耗品などのコスト削減といったメリットがある他、湿し水冷却による結露が原因の印刷トラブルを低減させるというメリットがある。とくに湿し水の適性供給によって一切の廃液を出さない仕組みとなっており、品質を損なうことなく環境への負荷が少なくて、しかも経済的なシステムとして各方面から注目されている。
 同社が、最初にこのシステムを導入したのは今から6年ほど前のこと。
若林栄樹取締役製造本部長が埼玉の印刷会社で導入されていたのを見学したことに始まる。
 米どころでもある市島市の排水規制も厳しいことからこの導入を決意、以来、研究を重ねて導入に至るわけだが、当初オペレーターは二の足を踏み、時には冷凍機を使用する作業員も出るなど長年にわたり「水を冷やす」という意識と習慣が若林本部長を悩ませたようだ。
 まず1ケ月間ほど冷凍機を完全ストップさせ、徹底したテストを繰り返しながら徐々にシステムの信頼度を高めていった。
  ◇   ◇   ◇
 輪転機につづいて「水の適性管理」が課題という本社工場の枚葉機(菊全8色両面兼用機・菊全5色機・菊全4色機)3台に導入されたのは昨年末のこと。
 従来型枚葉機での湿し水循環型システムでは、適温は15~20度とされ、水温が低すぎるとインキのしまり・結露など、また、高すぎるとインキの乳化による転移不良などのトラブルの原因ともなるが、導入に際しては改良と工夫を重ねながら水上がり不良、若干の版面温度上昇による乳化傾向などの諸問題を克服し、常温(室温)での適性品質を保つことに成功した。
 システムそのものは、タンク内で常温設定された水を機械の水舟内量をセンサーで管理し、必要に応じて供給していく仕組み。
 高い品質を維持しながらトラブルの原因を解消しコストを削減。さらに環境負荷の低減が図れる他、汚れた水が還ってこないためにタンク内の水はいつもきれいで、タンクの掃除にしても年末年初などの長期停止時だけで済む。煩わしい洗浄作業も低減できるということだ。(若林本部長)
 同社では、このシステム導入機により1枚のシートにAM175/300線とFMスクリーニングで印刷した見本帖を作成し、その違いを表現(紹介)しているが、この作成にあたってデジタルソリューション課の淀野顧問は「高精細印刷が高度になるほど品質の管理と技術力が要求される。CTP化によって高精細印刷も安定しているが、技術としては難しく、この作成は作業員のスキルアップの証しともいえる」と語る。
 最新の印刷機で最新の技術、そして付随する高度な技術力を戦力の1つとして、富士精版印刷はこれからも環境に配慮しながら、顧客のニーズをしっかり捉えて訴求力ある印刷物の提供に努めていくという。