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躍進企業REPORT

日経印刷:グラフィックガーデンで芳野製・2高速無線ラインが稼動

印刷ジャーナル 2009年12月5日
林社長
乱丁検査装置「トライデント」を搭載した高速丁合機
生産管理システムも組み込まれる信頼の新鋭機の前で、吉村本部長(左)と山本課長

 四季折々の季節の変化を、その姿全体にコマーシャルウォールのごとく映し出す...。建築家・菊竹清訓氏がデザインしたという日経印刷(株)(本社/東京都千代田区飯田橋2-15-5、林吉男社長)のフラッグシップ工場「グラフィックガーデン」(東京都板橋区舟渡3-7-16)のことだ。ワンストップサービスを実現する同工場では、デザイン、印刷、製本・加工から発送までの最新鋭設備を集約。同社はこの工場が竣工された昨年8月、製本部門の新戦力として芳野マシナリー(株)(本社/埼玉県戸田市美女木2-27-25)のコンピュータ制御全自動高速無線綴機「121型」を中心に据えた高速無線綴製本システムを加え、書籍関係の完全内製化を実現した。ワンストップサービスを強みとする同工場の一翼を担うシステムとして活躍している。

 日経印刷は昭和39年10月に創業。東京オリンピック開会式の、まさにその日に飯田橋の地で産声を上げた。以後、東京都内を中心に事業所を展開。現在は飯田橋の本社オフィスを柱に、モノクロ印刷のハイデルベルグフロント(東京都江東区平野2-3-14)、アナログ製版と特色モノクロ印刷で顧客ニーズに対応するプリンティングセンター(東京都江東区平野2-2-39)、出版系や学校関連の印刷物に強い24時間モノクロ専門の浮間工場(東京都北区浮間2-15-8)の各拠点を構え、カラー印刷を得意とする「グラフィックガーデン」と連携しながら、様々な印刷需要に柔軟に対応する体制を整えている。
 従業員は400名。このうち180名が勤務する同工場は、総工費30億円をかけて竣工された。まさに会社の期待を背負っている同工場の敷地面積は1800坪。地上4階建の建物は、4階が企画・デザイン部門および製版部門、3階が印刷部門、2階が製本部門、1階が発送部門となっており、上から下に向けてモノづくりが流れていく構造で、ワンストップサービスを効率的に行なえる設計になっている。
 同工場の強みは、もちろんワンストップサービスだけではない。入退室ログの徹底管理や耐火・免震までを徹底的に配慮した頑強なサーバルームによる万全なセキュリティ環境により、顧客の情報資産を保護している。また、同社は平成18年のプライバシーマーク認定取得に加え、本年10月にはISMSも認証取得し、顧客の情報資産を預かる印刷会社としての信頼をさらに高めている。
 一方、昨今の環境配慮という社会的ニーズへの対応も万全である。水なし印刷、FSC森林認証紙の採用、ISO14001は認証取得だけでなく、プロジェクト活動としても環境問題に積極的に取り組んでいる。環境配慮型の印刷物や損紙などのリサイクルで、地球環境への負荷軽減を推進している。

~平成9年、浮間工場に芳野製・高速無線綴ライン1号機を導入~

 同社は平成9年7月に浮間工場を竣工。同社はここに初の製本機として芳野製の無線綴機「121型」を導入し、製本・後加工工程の内製化を開始した。それから十余年にわたり愛用し、新工場の竣工と合わせ、2号機となる「121型」のハイグレードタイプを増設したわけである。このことは10年以上にわたり同機を使用してきたユーザーの「信頼の証」とも言えるだろう。
 2号機も同一メーカーの同機種を選択した理由について、同社生産本部製本部製本課の山本裕司課長は次のように話している。
 「10年以上の経験から、芳野マシンのイロハを熟知していたことも理由の一つだが、1号機のラインが丁合機とバインダー以外は他社製だったことに比べ、2号機のラインは丁合機からバインダー、断裁機までの全てを『芳野ライン』で統一している。これにより、製本システムという全体の最適化が図れる。また、新工場の図面に最適なライン設計を提案してくれるなど、メーカーとしても信頼できると安心して増設を決定した」
 平成9年、内製化を始めた当初は手探りで製本を学んできたという同社。しかし、今ではメーカーのサポートがなくても社内で社員教育できるほどオペレーターの製本技術は向上した。同社生産本部の吉村和敏本部長は、「およそ3ヵ月で使いこなせるように教育している。4月に配属したら、7月には一人前になっている」と話す。
 新工場の竣工に合わせ、同社は浮間工場の製本設備を新工場に集約。そしてあらゆる製本・後加工機が設置された新工場では、2号機に負けることなく稼働する1号機の姿も見ることができた。十年選手が現役で活躍する様子からは、芳野の機械が堅牢性と耐久性にも優れていることの証明とも言えるだろう。

~乱丁検査装置「トライデント」を搭載~

 2号機の増設は、一部外注に出していた書籍関係を完全に内製化するためであったという同社。
 この丁合機からバインダー、断裁までがオール芳野製という2号機の丁合ライン(24駒)には、芳野マシナリーが2003年に開発した乱丁防止装置「トライデント」が8機搭載されている(1機で3駒に対応)。乱丁があってもラインを止めることなく自動排出するため、生産性の向上に大きく貢献しているようだ。山本課長は「誤作動が少なく、8500回転で稼動させても全くストップしない。乱丁によるトラブルは導入以来、ゼロ記録を更新中である」と話し、トライデントの性能を高く評価している。
 1ライン目の導入当初は、まだトライデントが発売されていなかったため、1ライン目には他社製の乱丁防止装置が搭載されているが、「誤作動が多く、かえって非効率的なので現在は検査手順書を作成し、人の目による検査を行なっている」と山本課長。予算さえ許せば、1ライン目にもトライデントを後付けしたいほどだという。

~「生産管理システム」導入でさらなる生産性向上へ~

 また、2ライン目には芳野の提案による「生産管理システム」が組み込まれていることも特長のつだ。チョコ停のデータを蓄積し、将来的にそれを分析して生産性向上に役立てるという。「すでに1年以上のデータを蓄積しているので、そろそろ分析を行なっても良い時期」と吉村本部長。同社では、2005年よりトヨタ生産方式を学びながら生産の標準化を進めており、今後もあらゆる仕事を数値化することによる標準化を目指し、強いコスト体質の企業を目指していく方針だ。
 全社の期待を集める同社の新工場「グラフィックガーデン」は、もはや印刷工場の領域を越えた21世紀型の生産工場と言って間違いない。