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躍進企業REPORT

螢印刷:創立50周年迎え、次世代型印刷会社へ躍進

印刷ジャーナル 2009年1月25日
HOTARU(THAILAND)
螢日国際貿易有限公司

 螢印刷(株)(本社/大阪市西区新町2-4-2、鳥山良一社長)は昨年9月に創立50周年を迎え、新たな決意で新年をスタートしている。同社は海外向けマニュアル制作を得意とする印刷会社で、中国やタイなどへの海外進出を成功させてきた。また、多言語組版から印刷、製本までの一貫生産体制も確立している。一方、昨今では紙だけでなく様々なメディアに目を向け、情報加工の最適ソリューションを提供する次世代対応型の印刷会社として躍進を続けている。そこで今回、同社の鳥山社長を訪ね、同社の成長の軌跡と今後の展開について話を伺った。


 同社は昭和29年9月、大阪市南区鰻谷仲之町にて、前社長の鳥山隆氏が創業した。そして5年後の昭和34年9月に現社名の螢印刷(株)として法人化。以来その社名は中国やタイなどの海外拠点にも使用している。これについて鳥山社長は「社名の由来についてはよく聞かれるのだが、正直これと言った理由はない。しかし螢印刷という社名は世界で当社だけであり、日本だけでなく外国でも取引先にすぐに覚えてもらえるという利点がある」と、今後も歴史と伝統ある同社名を継続していく方針を示す。
 ただ「昨今では社名に『印刷』とあるだけで取引を敬遠する顧客もある」(鳥山社長)との理由から、平成17年8月に東京に新設したデータ処理加工などを専門にする関連会社については社名から「印刷」を取り、螢ネクストリテラシー(株)の社名で設立している。そして翌年には、螢印刷としても東京営業所を設立した。鳥山社長は「従来は紙に印刷するのが仕事の中心だったが、紙の印刷需要が縮小する中、今後は紙以外の媒体での仕事を考えていかなければならない。そこで当社では10年程前からプリプレス工程の充実に力を入れ、現在ではデザイン、キャッチコピーから制作、撮影までも自社で行なえる体制を整えている。もちろん、様々な言語に対応できる。今後は色々なバリエーションに富んだ仕事を提案していきたい」と話す。
 さらに同社は平成19年5月、製本・後加工工程を専門とする(株)ホタルコーポレーションを大阪市大正区に設立した。一貫生産を実現する陣列が整った今「後はひたすら新たな仕事を創出する『提案営業』で仕事を増やすのみ」と、鳥山社長は今後も積極的に営業展開していく姿勢を見せている。提案営業。言い古された言葉であるが、これを実際に迅速に行動に移してきたことが、同社の成長と企業存続の一因となっていることは間違いないだろう。

取引先の海外進出にともない、海外拠点を設立

 「海外向け印刷物ならお任せ下さい」。同社のキャッチフレーズである。今でこそ同社を語るのに多言語は欠かせないが、そんな同社も設立当初はタイプからスタートし、活版印刷、オフセットへと進んだ、一般的な商業印刷物をメインとする印刷会社であったという。
 そんな同社が海外拠点を設立するに至った背景には、主要顧客の海外進出が理由であったと鳥山社長は話す。「主要顧客がグローバル戦略を掲げ海外生産を増やしていくときに、各国の言語での印刷物が必要になり、弊社がその打診を受けた。その段階では実は何の対策もなかったのだが、黙っていても仕事が海外に流れていくだけ。また海外進出は私の夢でもあったので『やります』と答えた。その後翻訳をはじめ制作するソフトなど、社内環境も変えていった。その数年後、まずはじめの拠点として私自身が中国まで調査に出向き、上海に会社を設立した」。
 この初の海外進出となった螢印刷上海事務所の設立が2002年5月の話。そして同社ではそれを機に多言語印刷物の受注を順調に拡大し、その後、現地法人を上海と深せんに設立している。さらに設立50周年を目前に控えた平成20年7月には、HOTARU(THAILAND)CO.,LTDをタイに新設し、現在、中国には70名、タイには8名のスタッフが在籍し、全社員が一丸となって仕事に取り組んでいる。
 海外進出に成功した理由について、鳥山社長は「設備よりも環境よりも、現地スタッフと日本人スタッフとのコミュニケーションが一番難しいと思う。現地スタッフとの関係を上手くできたことが、海外進出を成功できた一番の理由だと認識している」と話す。ちなみに、同社は本年中にはヨーロッパへの進出を予定しており、グローバル展開をさらに加速させる方針だ。

需要創出する提案営業で次代へ躍進

 鳥山社長は1983年に同社へ入社し、印刷・製本など現場を経験した後に営業を担当。専務取締役を経て、2002年より2代目社長として手腕を発揮しているが、就任当初、同社では「どんぶり経営」的な部分が多少なりとも残っていたという。このため、鳥山社長が社長就任後、一番に行なったのは経営計画を策定し、目標に向けて全社員のベクトルを同じ方向に向けることであったという。また、社員のモチベーションを高めるため、給与体制も見直した。賞与は年4回。また仕事だけでなく社員のプライベートにも考慮し、毎週水曜日は「ノー残業デー」とするなど、ユニークな制度も試みた。
 一方、今後は環境や情報保護など、企業としてCSRにも力を入れていく必要があると考え、平成14年12月にはISO14001(1996年度版)を認証取得。平成18年3月には環境保護印刷マーク認証取得。そして平成18年4月にはISO14001(2004年度版)を認証取得。同年9月にプライバシーマークを認証取得。平成19年11月にはFSC(COC)を認証取得した。
そしてこの間、平成19年2月には本社を従来の大正区から利便性に優れた現在の大阪市西区新町に移転。新オフィスで再スタートを切った。
 創立50周年を迎えて初の新年となる2009年の展開について鳥山社長は、「世界規模での経済不況となり、我慢を余儀なくされる年になることは間違いないが、だからと言って消極的な考えはない。企画力・デザイン力にさらに磨きをかけ、インターネットやPODなどを活用した提案営業をさらに推進する。営業と技術の人間がチームを組んで営業に出向き、完全なる提案営業でお客様の利益になる仕事を創出していきたい」と、あくまでも積極的な姿勢でこの世界的な経済不況を乗り切る決意を見せる。
 次世代型印刷会社として、さらにグローバル化を加速させていく同社の今後に注目したい。