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躍進企業REPORT

エーゼット企画:サインと印刷のコラボレーション

印刷ジャーナル 2009年1月1日
原田社長
最大印刷幅5mの超大型IJ「ジェットアイ5000」
厚さ5cmまでの素材にプリントできるフラットベッドUV硬化IJ「Mimaki JF-1631」

 「トータルサインコミュニケーションズ」--屋内外ビジュアル看板の企画から出力・加工・施工までを手掛ける(株)エーゼット企画(東大阪市菱江2-15-12、原田順一社長)は、関西トップクラスの高い生産処理能力と、特殊需要にも対応できる守備範囲の広さで印刷会社のサイン需要開拓を強力にサポートしている。潜在的なサイン需要を喚起し、事業領域を拡大、企業価値向上に繋がる印刷会社とのコラボレーションを呼びかけている。

サイン業界デジタル化の先駆者

 同社の創業は昭和8年。原田社長の父・常太郎氏が手書きによるネームプレートの版下業として立ち上げた会社だ。原田社長は東京のカラー分解を手掛ける会社で製版技術を習得した後、昭和44年に入社。それまで培った製版技術を活かして木製写真製版カメラを導入し、ネームプレート業界の写真製版事業を展開した。その後、電子部品などの配線図のCAD化にも着手。ここから同社のデジタル化の歴史が始まる。
 ほぼ同時期に同社は大きな転機を迎える。カッティングシステムの開発だ。それまで職人による手作業の世界であったカッティングフィルム工程にコンピュータ技術を持ち込み、サイン業界におけるデジタル化の道をはじめて切り開いたのが同社・原田社長であった。その後、フィルムを製造する積水化学工業との合弁会社「アバンザ」を通じて、このカッティングシステムは爆発的に普及。同社もおよそ10台のカッティングマシンを駆使し、主力事業として大きな成長を遂げた。
 しかし、カッティングマシンの普及が進むと市場の競争は激化する。そこで「文字の次はビジュアルだ」と考えた原田社長は平成5年、静電トナープリンタと大型ラミネート機を導入し、ビジュアル事業部門を設立。デザイン・写真・イラスト・文字をシームレスに統合させた「トータルビジュアルサイン」という概念のもと、屋外ビジュアル看板の第一人者として事業を拡大。その手法をインクジェット技術に見出すことで、関西トップクラスの生産処理能力を誇る企業に成長した。

サインと印刷は共通項

 「品質第一主義」の同社には、シビアな目をもつラボの顧客も多い。また生産処理能力もさることながら、関西では数少ない最大プリント幅5m幅の溶剤系超大型インクジェットプリンタ「ジェットアイ5000」や、厚さ5cmまでの硬質素材にダイレクトプリントできる大型フラットベッドUV硬化インクジェットプリンタ「Mimaki JF-1631」など、特殊需要にも対応できる守備範囲の広さも特徴のひとつだ。
 そんな同社は、数年前から印刷会社のサイン需要開拓をサポートする「コラボレーション」を提案している。
 サイン業界では、デジタル化の進展とともに急速なビジュアル化が進み、制作工程のデジタル化は、サインと印刷の業際を消し去りつつある。実際、大手印刷会社ではワンソースマルチユースを実現するデジタルデータの強みを活かし、新規事業としてサイン事業に着手している。ただ、中小印刷業にとってはサイン事業への設備投資は負担が大きく、さらに平成16年には屋外広告物法が大きく改訂され、屋外広告士の資格が義務づけられた上、平成19年から大阪府でも屋外広告業務は届出制から登録制に移行するなど、規制が強化されていることから、簡単に参入できないのが現状である。そこを「コラボレーションでお手伝いする」というのがエーゼット企画の姿勢だ。
 「印刷会社の営業の方は、あらゆる業種の企業に出入りしている。印刷物を発注する企業のほとんどが、多かれ少なかれ看板や表示物も必要としているはず。いまやデジタルの時代。DTPデータをビジュアルサインに活用することが可能で、大きなビジネスチャンスを秘めている。印刷会社の方には当社のサインに関するノウハウと設備を利用していただき、当社は印刷会社の営業力を利用させていただく。そういったコラボレーションにより、潜在的なサイン需要を喚起し、事業領域を拡大、強いては企業価値向上につなげていただければと考えている。当社ではすでにそのサポート体制は万全である」(原田社長)
 全印工連が打ち出した業界中期計画「業態変革実践プラン」のキーワードは「ワンストップサービス」。印刷用に制作されたDTPデータのマルチユースにおいて、サイン事業は身近な存在にあると言えるだろう。

ワンRIPマルチデバイスの実現

 サイン受注の営業方法にはやはり印刷受注と違ったノウハウが必要だが、同社では、営業ツールの作成や、場合によっては同行営業にも対応してくれる。DTPデータ流用でネックとなるカラーマネジメントについても実績がある同社だが、さらに対応能力を強化すべく昨年5月、大阪の製版会社である(株)ダイム(大阪府吹田市江坂町、安平健一社長)と業務提携している。同社は、コンテンツマネジメントシステムをはじめ、色の標準化、RGBワークフロー、多色分版といったカラーマネジメントのノウハウをはじめ、製版印刷技術、画像処理技術、デジタル化技術をもつダイムと業務提携することで、製版印刷分野から大型屋外サインまでの受注、制作、印刷、施工、コンテンツ管理までのワークフローを構築し、製版印刷分野とサイン分野を包括したワンRIPマルチデバイスの実現に着手。高次元でのワンストップサービス提供を可能としている。
 そのコラボレーション第一弾として昨年10月、グラフィックデザイナーである北川一成氏の個展に参画。キャンバス上に描かれたデザイン画をダイム側で非接触スキャナ入力し、画像処理、カラーマネジメントを施した後、エーゼット企画の大型フラットベッドUV硬化インクジェットプリンタ「Mimaki JF-1631」でキャンバス上にインクジェットで出力。その高い表現力、再現性は各方面から高い評価を得ている。
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 「昨年ドイツで開催されたdrupa2008は『インクジェットdrupa』とも称され、印刷という分野でインクジェット技術が大きく開花した。我々にとってこれは『脅威』ではなく『チャンス』だと捉えている。スクリーン印刷業界でもおよそ6割の業者がインクジェットを導入しているという。今後、さらにインクジェット技術が普及すれば、印刷業とサイン業のコラボレーションによるビジネスチャンスは急速に拡大する。ぜひ、印刷の隣接ビジネスであるサインのニーズを開拓して、当社をワンストップサービス実現のためのコラボレーションパートナーとしてご利用いただきたい」(原田社長)