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躍進企業REPORT

陽弘社:ばらつき解消、検査体制の平衡化実現

印刷ジャーナル 2007年7月25日
黒澤さん
検査のばらつき解消
TM-160α

 (株)陽弘社(本社/埼玉県戸田市美女木東、柴田善三郎社長)は、昭和42年の創業以来、「高品質と低廉価格と短納期」を企業理念に社員教育と徹底した生産合理化を推進する製本会社として市場から高い評価と信頼を得ている。その同社では、さらなる高品質への要求に応えるため(株)北電子製・CCDカメラ駒別対応型乱丁防止装置「TM-160α」(1ライン20駒)を導入。そこで今回、同社・柴田年弘専務に導入後の成果や今後の展開などについてお話を伺った。

 まず導入に至る背景について柴田専務は「製本業というのは、昔から職人気質が高い仕事だったため、品質の管理などは全て人的な確認であった。しかし現在では、製本機械の高機能化が進み、作業スピードもそれに合わせて向上しており、人による確認だけでは追いつかないのが現状。またオペレーターによって確認事項が個々違ってくるなど品質管理面で統一性が保てなかった。その検査のばらつきを解消するために検査装置の導入を決めた」と品質管理体制の均衡化を図ることが目的であったと説明する。
 そこで同社では、社内的に統一した品質管理体制を構築するための新戦力として今年2月、北電子製CCDカメラ駒別対応型乱丁防止装置「TM-160α」を導入。同装置は、従来機「TM-150」をさらにバージョンアップした最新乱丁防止装置。同製品はCCDカメラ方式のためセンター方式と比べ、文字物どうしの検査に優れ、駒別にモニターが内蔵されている装置のためリアルタイムで検査状況が判断できるほか、検査記録については履歴の保存や履歴分画像をモニターに映し出すことができる。駒別に独立した装置のため中綴じ機、丁合機以外の幅広い用途に対応可能な高精度・簡単操作を実現した乱丁防止装置となっている。
 導入後の成果について柴田専務は「従来の乱丁防止装置では、検査できない部分まで確認できることが大きい。また機械の速度を上げても誤作動による停止がないこと、そしてセット時間の大幅短縮など安定した稼働ができることが最大の魅力である」とその性能を評価する。
 実際に、現場で作業を担当しているオペレーターの黒澤さんは「立ち上がりも早く、操作自体もタッチパネル方式のため非常に簡単に行なえる。検査箇所の設定については、印刷物の内容によって判断するなどオペレーターの技量が伴うが、設定ポイントを決めれば、あとは高速稼働をしても誤作動もなく、安心して作業を進められる」と使い易さと運用上の注意点について説明する。
 同検査装置の導入により品質管理の強化、安定した生産体制の構築を実現した同社であるが、しかし柴田専務は検査装置に100%依存した品質管理体制は同社の理想とするかたちではないと語る。その点について柴田専務は「カメラタイプの検査装置であっても、全ての不良を発見できるとは考えていない。製品ごとに見るべきポイントを設定し、その装置の能力を最大限に発揮させるのは、やはりオペレーターの努力が伴う。そのためにもオペレーターには、機械に全て頼ることなく品質管理に対する意識をもってもらうように徹底している」と検査装置による品質管理を一つの手段として捉え、あくまでも機械・人が融合した生産体制を構築することが重要であると強調する。
 同社が品質管理の強化を押し進めるもう一つの背景として、加工資材である印刷物の不良品混入を柴田専務は指摘する。同社では、不良などが発見された場合、カメラ付携帯電話でその製品を撮影し、印刷の担当者宛にメール添付し、その状況を把握してもらっている。そのうえで、今後の作業スケジュールをあらためて両社間で確認してから作業を行なうようにしているという。
 「印刷物に不良があること自体はしょうがないと思っている。しかし我々が一番困るのは、不良製品が搬入されたときに作業を中止するのか、それとも無理にでも続行するのか判断がつかないこと。電話で印刷担当者にその切迫した状況を伝えるのは難しいが、画像として送れば、問題の重要性がすぐに確認してもらえるとともに、解決策の実行までの時間がかからない」(柴田専務)。
 携帯メールを駆使し、事故対応を円滑に行なっている同社であるが、資材搬入から加工出荷までの工程の実情について柴田専務は、印刷会社を父親に、製本会社を母親に例え、次のように説明する。「父親(印刷会社)は、子供(印刷物)が生まれたら、あとの子育て(加工)は母親(製本会社)に任せる。つまり印刷物が出来たら、そのあとのことはすべて製本会社に丸投げ。母親は、どんな問題児(不良品)であっても立派な大人(最終製品)に育てなければならない」。
 現在の市場では、品質管理に対するニーズが高まり、印刷・製本など印刷関連企業では、最新の検査装置の導入や、管理体制の強化を実践している。しかし柴田専務は、「印刷会社と製本会社ではまだまだ認識の違いも多い。それは印刷会社の先は、製本業者だが、我々の先には、もう最終ユーザーしか存在しない。その責任感の違いが大きいと感じている」と語るように、両社間では品質に対する認識の格差に隔たりがあるのが現実である。柴田専務は、両社でより協力し合い、そして共通の認識をもった品質管理体制を構築することが、問題解決の手段であると強調する。
 なお導入後の同社では、人員配置の適正化によって作業性の向上を実現しており、最終ユーザーに密接した産業という自負を持って今後も高品質、効率化を目指し邁進していくという。