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印刷通販事業による企業戦略

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ネット印刷ITP「いろぷり」、非対面&リアル営業を融合

ITPグループのスケールメリットで飛躍

印刷ジャーナル 2021年11月15日号掲載

 「いろぷり」は、京都で創業100余年の歴史を誇るITPグループのネット印刷ITP(株)(北井元司社長)が運営するネット印刷通販。ITPの社員教育プログラム「夢語り塾」における「印刷の未来について」メンバーの立案から誕生した。コロナ禍の只中でのスタートであったが、「祖業である印刷を時代とともに後世に繋げたい」と思いを込め、ITPグループのスケールメリットを生かし、非対面とリアル営業のメリットを融合させた営業展開により、競争が厳しい印刷通販業界に新風を吹き込んでいる。

ITPグループの社是、経営理念を背景に北井社長


開設2年目は原点回帰 - さらなる進化へ


 ネット印刷通販「いろぷり」がオープンして1年が経過した。北井社長は「あっという間の1年だった」と振り返る。新型コロナウイルスの感染拡大とそれに伴う緊急事態宣言など、日本全体がこれまで経験したことのない未曾有の中での船出である。立ち止まっている余裕などあるわけはなく、がむしゃらに走り続けた1年であったに違いない。

 開設当初は、コロナ禍でも非対面ビジネスを可能にするネット印刷通販の優位性に加え、創業100年を超える(株)ITP(旧・石田大成社)が立ち上げたという信頼と実績の旗を高く掲げて展開。2020年9月までを第1フェーズ「助走期間」、今年3月までを第2フェーズ「確立・定着」、今年4月からを第3フェーズ「充実・拡大」として、段階的に、着実に成長路線を歩んできた。今年7月からは2年目を迎え、「原点回帰-さらなる進化」を経営テーマに掲げ、1年間でステップアップした現在を原点に「次のステージに向けステップアップを目指し、さらに進化したい」と北井社長は意欲を示す。

 現在「いろぷり」で取り扱う商品ラインアップは40カテゴリー・120アイテム。ユーザー登録は約2,500件(個人登録40%・企業登録60%)。主にBtoBをターゲットに会員数を増加させてきた。北井社長は「オープン当時から継続中の『発送遅延ゼロ』『製品品質ノンクレーム』を積み重ねてきた実績が、いろぷりの品質と信頼に?がっている」と自信を覗かせる。

 リピート率は90%を超え、今年4月にサイト上で掲載した「いろぷりが支持される7つの理由」や、7月に実施した「いろぷりオープン1年感謝キャンペーン」も大きな反響を得た。これらの取り組みが新規会員登録および受注拡大につながったようだ。

「いろぷり」のトップ画面


サイト掲載外の「見積りします」サービスが好評


 「いろぷり」は、社会のニーズを捉えながら着実にサービスメニューを増加させている。昨年10月からはコロナ禍での「働き方改革」と「感染対策」をキーワードにした感染対策・抗菌商品グッズを販売。さらに同業印刷会社のアウトソーシング先としての力を強化するため、平版印刷の対応力を拡大し、大部数の印刷カテゴリーや輪転印刷も追加したほか、印刷とデザインをセットにした「デザインオーダー」サービス(デザインコース・複製コース)も開始した。新商品の開発については、同業の印刷会社・印刷関連業者と新たな提携ネットワーク構築を図り、業界内の横の連携にも取り組んでいる。

 本年10月からは、名入れもできる「各種卓上カレンダー」のオーダーをスタート。また、高精細・高色域のデジタル印刷機JetPress750Sを活用した「プレミアムデジタルプレス」もサイト内に掲載し、壁掛けカレンダーや簡易アルバムは依然として人気が高い商品だ。「学校のクラブ活動だけのアルバムなどの需要も多い」(北井社長)。ITPでは2021年4月入社の新入社員がコロナ禍により一堂に集える機会がなかった新入社員がサマー研修を実施。それをこのほど簡易アルバムとして作成した。

 さらに、いろぷりの特長の1つとして、サイト上にはない仕様・要望に柔軟に応える窓口として設けている「見積りします」がある。この窓口には、会員・非会員を問わず、連日依頼があるという。北井社長は「受注の60%はサイト掲載外でのお見積り依頼からの注文で、反響は大きい」と手応えを感じている。

 「サイトに掲載していない仕様は注文できないだろうと思い、これまで印刷通販サービスを利用してこなかった方の多さに驚いている」(北井社長)

 さらに、コロナ禍でのニーズとして浮上してきたのが、印刷サービス以降のDM・ポスティングサービスや新聞折込サービスだ。これらはサイト上には掲載していないが、「お問い合わせをいただければ、ニーズに応じて対応させていただいている」(北井社長)ということだ。


「いろぷり」はITPへの窓口としても機能


 いろぷりでは、サイトを活用した非対面の受発注だけでなく、いろぷりの新規開拓営業についてはオープン当時より、顔が見える対面営業を基本とした営業活動を展開している。これにより、同業の印刷会社や一般企業の新規会員登録・注文が大きく飛躍している。

 さらに、今年10月からは新たに首都圏営業を増員・強化。「これにより新規営業のエリアを一層拡大していきたい」(北井社長)。また、これにより、いろぷりを活用した使い勝手の良さだけでなく、ITPグループのスケールメリットを利用できることも相乗効果を生んでいるという。

 「いろぷり」はITPへの窓口としても機能しており、編集・取材、プロモーション、各種バーチャルブース展示会システムなどを含めたトータルサービスの提供がいろぷりサイトを介して活用可能となっている。

 「バーチャルブースのCGについては、以前某TV局からの依頼で放送された実績のあるCGチームも健在で、自社でのコンテンツ制作・3D制作スタッフの存在も大きい。この3Dを生かした新商品も現在開発中である」(北井社長)。


9つの新規プロジェクトを展開


 ネット印刷ITPでは今年7月から、ITPが掲げる「ITPプロジェクト9」(9つの新プロジェクト活動)に含まれる「ネット販売プロジェクト」にいろぷりスタッフが積極的に参画している。

 同プロジェクトは、WebやSNSプロモーションをITPグループの既存ネットワークと連携させることで相乗効果を生み、若手社員を中心に研修および教育の実施や新たなビジネス展開に発展することを目的としてスタートしたもの。またネット印刷ITPでも「いろぷりWeb戦略チーム」を立ち上げ、Web広告やSEO対策、SNS戦略、サイトユーザビリティの向上など、Webプロモーションの活性化を目指した新たな活動をスタートしている。

 その一環であるのが、いろぷりサイト内で現在、テスト掲載中の「いろぷりこらむ」だ。「印刷のことをあまり知らない人、ネット印刷を利用しようかと考えている人などを意識して、ネット印刷について身近に感じてもらうためにスタートした」と北井社長は話す。

 コラムの内容は、「ネット印刷はなぜ安い?安さの理由の紹介」、「パンフレットとリーフレットの違い」、「中綴じ冊子印刷とは?製本方法や用途について」、「知っておくと便利な冊子サイズ」などで、印刷の知識がなくても印刷発注の参考になる情報を発信している。

 「今後は『お客様の声』なども充実させ、お客様と双方向の架け橋となるような情報発信を目指していく」(北井社長) ​


今年7月にITPグループの「社是」を制定


 ITPグループは今年7月、新たに「社是」を制定した。同社グループのような企業規模でこれまで社是がなかったことには驚かされたが、「経営理念やキャッチフレーズは従来からあったが、『社是』というものはなかった。これはITPグループ新入社員や新卒入社説明会での質問から出てきたもので、『そういえばITPには正式な社是がない』ということから、社是の制定と改めて社員へのメッセージとして、各オフィスに掲示された」(北井社長)。そして、社是として「挑戦と創造」「品質と信頼」「進化と改革」が制定された。

 一昨年・昨年と、新型コロナの影響により印刷業界全体が低迷。大型の印刷機や生産ラインを稼働させるITPグループの工場でも、時差・時短シフト勤務を取り入れた「働き方改革」の生産体制が根付き始めた一方で、営業・制作・DTPにおけるDX化は大きく加速した。ITPの4つの工場のスマートファクトリー化を2022年より本格的に進めていくようだ。
 
 「これからも同業の印刷会社との横の繋がりをさらに強化し、提携ネットワークで共に助け合いながら、より利便性の高い総合印刷通販サイトを目指し、サイトデザインやユーザビリティーの向上、商品アイテム・新サービスの拡充など、お客様へのサービスを強化しながら、ITPの祖業である『印刷』を時代とともに繋げ、進化していきたい」(北井社長)

 ITPグループの総力を結集し、競争力強化を続ける「いろぷり」。その積極的な取り組みからは、これまでの総合印刷通販の構図を塗り替えかねない勢いを感じさせる。コロナ禍の終息とともに、その勢いはますます加速していきそうだ。