PJweb news

印刷産業のトレンドを捉える印刷業界専門紙【印刷ジャーナル】のニュース配信サイト:PJ web news|印刷時報株式会社

トップ > 特集 > 検査システムによる品質管理と標準化:シリウスビジョン、画像検査機の世界トップメーカー目指す

 「印刷物」を「工業製品」と捉える以上、その製造メーカーには「品質保証」というひとつの責任が生じる。そこには生産工程における機資材の見直しや工程間での工夫など、様々な手段が考えられるわけだが、最終手段はやはり生産物を「検査」「検品」するということになる。印刷業界においても多くの検査関連機器が市場投入されており、「不良品をどう処理するか」、また「不良の原因を如何に生産工程へとフィードバックするか」といったシステマチックな検査工程から生まれる高品質で安定した製品供給は、クライアントの信用を獲得する手段であり、問題があった時もその製品の出荷時の検査記録などがチェックできる体制にあるかどうかが発注先の評価対象に加えられるようになってきている。つまり検査エビデンスの存在が求められるようになってきているということだ。また一方で、多品種・小ロット・短納期化が進む中では品質管理の検証による作業の効率化、損紙低減によるコストダウンなど、経営的観点からも重要性を増している。そこで今回は「検査関連機器・システム」を取り上げる。

特集一覧へ

シリウスビジョン、画像検査機の世界トップメーカー目指す

製品開発方針は「永遠の未完成」〜ソフトウエア開発強化、営業本部開設で実現へ

印刷ジャーナル 2021年3月15日号掲載

 「オンリーワン画像検査技術で世界の製品品質向上に貢献し、人々の生活に豊かさと幸福をもたらす」。シリウスビジョン(株)(本社/横浜市港北区新横浜2-4-17、辻谷潤一社長)は2021年、このミッションのもと新社名に変更するとともに、ソフトウエア開発の一層の強化や営業本部の開設など、その実現に向けた取り組みを進めている。宮沢賢治のことば「永遠の未完成」を製品開発方針に掲げる画像検査機メーカーとして、飽くなき探究心で研究開発を進めるとともに、営業面においてはスピード経営で販売を進め、画像検査機の世界トップメーカーを目指す。

辻谷 社長


オンリーワン画像検査技術とは


 「本当の不良だけをみつけたいのに、疑似不良や欠陥の過検出によって、検査機がビービー鳴り続けたり、しょっちゅう止まったりして、作業が進まない」「検査レベルを甘くすると、過検出がなくなって検査機は回り続けるが、みつけたい欠陥をスルーしてしまい、不良流出が起こる、なんとかしてほしい」これは切実な印刷工場現場からの生の声である。

 近年、印刷品質に対する要求が高まり、印刷文字輪郭の微細な欠けやかすれ、文字つぶれ、淡い色むらや色濃度違い、細い傷や毛埃の噛みこみ異物などの欠陥検出が必要となっている。これらの厳しい欠陥を検出するために検査レベルを高くすると、印刷文字輪郭部の太り細りやばらつき、印刷基材の伸び縮み、多色印刷時の見当ずれ、印刷抜き加工時の抜きずれなど、良品レベルの差異であっても、それを不良とみなしてしまう過検出が起こる。

 シリウスビジョンのオンリーワン画像検査アルゴリズムである「輪郭ファジー」、「伸縮補正位置合わせ」、「ずれ許容」そして、「寸法・位置・色差計測」の各機能を搭載した画像検査ソフトウエア『AsmilVision』が、この印刷工場現場の悩みを解決する。厳しい検査レベルにしても、疑似不良や過検出に悩まされることはなく、本当の不良だけをみつけてくれるのである。


ウイズコロナ時代に対応したリモートの取り組みを積極的に展開


 2020年、新型コロナウイルスの影響で印刷業界が大きな打撃を受ける中、同社は国内市場の売上を前年比25%以上アップした。その大きな理由はリモートを積極的に活用して、オンリーワンの画像検査技術を広めてきた取り組みにある。

 「2020年4月〜8月頃まで、売上は前年より大きく減少していたが、リモートを活用した販促活動を積極的に展開してきた結果、9月頃から受注が増えはじめ、12月の2020年決算は対前年比25%以上の売上アップとなった」(辻谷社長)

 コロナ禍の影響を、逆に良い方向に利用した取り組みが成功したと言えるだろう。ウェブ会議やウェブ訪問、昨年9月には例年の「ナビタスビジョンフェア」を初のウェビナーとして開催。また、これと同時に「INNOVATION WORLD(イノベーションワールド)」という画像検査機のデモなどを動画で紹介する特設サイトを開設した。この特設サイトのトップページでは、シールラベル・カード検査/ブランクス検査/検査ユニット/検版システム/容器検査などの検査カテゴリーが建物として並んでおり、建物内に入ってワークショップをクリックすると、各画像検査機のポイントを3分程度で簡単にまとめたミニセミナーを視聴できるほか、製品資料もダウンロードできるようになっている。

 「開設後2週間で5,000件以上のアクセスがあった。また、その7割は、当社のホームページを初めて見たという顧客であった。画像検査機というのは、実際に見てもらわないと買ってもらえない機械であるが、イノベーションワールドで前もってデモを見てもらうことによって、これまでの商談で『デモを見に来てください』という道筋をスキップして商談できるようになり、短いパスで導入まで辿り着けるようになった」(辻谷社長)

 また、イノベーションワールドの視聴が難しい顧客に対しては、北新横浜にある技術センターから実機によるオンラインデモができる環境を整えている。
 

2021年はソフトウエア元年。「焼き焦がすほどの情熱」で開発強化


 同社が加わるナビタスグループは2020年3月、ソフトウエアの開発会社である(株)ウェブインパクト(東京都千代田区)をM&Aし、ソフトウエア事業を一気に強化した。

 「ウェブ系ソフトウエア開発を得意としており、20数名の開発者がいる。その効果は大きく、急激に受注が増えているのもウェブインパクトのメンバーがシリウスビジョンの中核ソフトウエア『AsmilVision』の新機能開発や既存機能の改善を行っているからである」(辻谷社長)

 「AsmilVision(アスミルビジョン)」の商品名は「明日を、見る、ビジョン=検査システム」として、ユーザーの印刷現場の発展を支援するとともに、印刷品質向上のために貢献したいという思いが込められている。

 同社は10年前の設立当初から、「現場で使える検査システム」をモットーに製品開発を続けているが、現場からの声を何よりも重要な開発課題と捉え、開発者自らが現場に足を運ぶことで直接ニーズを吸い上げ、難しい課題に対しても前向きにチャレンジすることで新たな技術を開発し、製品化につなげている。こうして製品化された『AsmilVision』は、シリウスビジョンのオンリーワン画像検査技術を中核におきつつ、ユーザーインターフェースを見直し、誰でも使いやすく気持ちよく検査工程をこなしていける工夫を取り入れている。

 また、ナビタスグループは2020年4月、画像検査ソフトウエア開発専門会社としてWillable(株)(横浜市港北区)を設立。同社では、『AsmilVision』とともに、シリウスビジョンの将来を担う次世代画像検査ソフトウエアを開発している。ウェブインパクトとWillable、シリウスビジョンの3社でソフトウエア開発を強化していく考えだ。

 「2021年は、『ソフトウエア元年』としてソフトウエア開発にさらに力を入れていく年としていきたい。シリウスは冬の大三角形として知られる星のひとつで、おおいぬ座の一等星。太陽の次に明るい星であるシリウスの「焼き焦がすほどの情熱」でソフトウエア開発をしていきたいという気持ちを込めて命名した。また、その情熱で開発するシリウスビジョンの画像検査機が世界で一番輝いていくとともに、ナイル川がエジプトを豊かにしたように、世界の人々の生活を豊かにしていきたい」(辻谷社長)


標準化で利益の出せる画像検査機開発。営業本部設立でグローバルに営業強化


 同社は2011年の設立から10年、検査用の標準ソフトウエアを開発することで高収益のビジネスモデルを構築してきた。

 「当社はこれまで、『技術者集団』であることにプライドを持ち、技術力を競争力としてきた。技術力により、ユーザーの皆様方の口コミで営業してきた。すなわち『技術で売る』ことをポリシーとしてきたが、高い技術力を有する画像検査機をより幅広いユーザー層に知っていただくため、2021年より営業本部を開設した。これまでは『営業の弱い企業』であったが、今後は営業にも強い会社への変革を目指している」(辻谷社長)

 そして、同社では営業戦略の1つとして、中国市場に力を入れていく方針で、上海に設立した現地法人「シリウスビジョン上海」で今年から営業活動を開始した。

 「中国に力を入れるというよりも、むしろ中国に賭けているといった方がいいかも知れない」(辻谷社長)。同社は中国市場の展開を2021年の最大のテーマとしているようだ。

 ヨーロッパ市場については、(株)ヒューテック(香川県高松市)と協力して営業展開しているが、「日本の画像検査ソフトウエアがヨーロッパのものよりもすごいと評価してくれる大手企業が複数でてきている」(辻谷社長)。


技術開発、販売実績の両面で世界一の画像検査機メーカー目指す


 印刷業界の経営状況が厳しい中、同社はAIやIoT技術の開発も進めており、画像検査機を基軸に工場の自動化を支援し、顧客の生産効率を高めるとともに、コストを削減できる仕組みを開発し、印刷業界の発展に貢献していく。

 「リモートを活用した営業展開をさらに強化するとともに、『イノベーションワールド』などのウェブコンテンツもさらに充実させながら、中国をはじめ、世界に画像検査機を販売していきたい」(辻谷社長)

 同社は今後も、画像検査機メーカーとして飽くなき探究心で研究開発を推進していくとともに、営業についてはスピード経営で販売を推進する。2021年の目標は前年比120%以上の成長を維持し、累計販売台数は1,500台突破を目指す。そして、10年以内にワールドワイドでの画像検査事業売上100億円突破を達成するとともに、画像検査機メーカーとして世界ナンバーワンを目指していく方針だ。



画像検査機をもっと身近に、使いやすく
豊富なラインアップ提供


 「画像検査機をもっと身近に、使いやすく」。シリウスビジョンの画像検査機のコンセプトである。同社では、豊富なラインアップを取り揃えている。

 「現場で使える画像検査機」を様々な印刷現場に提供してきた同社。独自開発の検査ソフト「FlexVision」(フレックスビジョン)や「AsmilVision」(アスミルビジョン)が搭載され、人の目と同じように、良品を正しく良品として選別しつつ本当の不良だけを検出する。24時間安定して同じ基準でミスなく検査できる。

 検査基準のマスター画像は1枚だけでOK。マスターとしてPDFなどの版下デザインデータを採用することも可能。刷出し検版からインライン、RTR、枚葉検査まで製版時のデザインマスター(PDF)を利用することもできる。簡易な操作インターフェースにより、検査設定登録はマウスを数回クリックするだけのため、初めてのオペレーターでも直感的に設定から検査までを行える。


可変印字検査、デジタル全可変検査にも対応


 デジタル印刷機の普及にともない、画像検査機にもバリアブル検査など異なる印字の検査が求められるようになってきた。

 そのような中、同社の画像検査機は、ロット番号や使用期限などの可変印字がある印刷物に対し、文字認識機能と各種コード読み取り機能で自動的に可変印字を読み取り、デジタル印刷機に読み込ませる印字情報デジタルデータ(CSVファイル)と照合して、正しく印字されているかを確認する機能がある。さらに可変印字マスタフォントを自動的に入れ替えて比較検査することで、可変印字の品質(欠け、はみ出し、かすれ、つぶれ、ピンホール等)も検査することができる。

 また、デジタル印刷機を使うと、ページ毎にすべて異なる文字や絵柄を印刷することも可能になるが、同社はこの全可変印刷の品質検査が行える技術を開発している。デジタル印刷機に読み込ませるデジタル画像(PDFやTiff)を基準画像として使用し、カメラで撮像したアナログ画像との比較検査を行うもので、色合い・画質や画像サイズが異なる画像同士の比較差分検査が可能である。


PDF・印刷物 大判検版システムを提供


 製版工程では、印刷用の版を製作後、間違ったデザインデータで版を製作していないか、版に欠けや傷がないか、異物はついていないかなどを本印刷前にテスト(刷り出し印刷)し、検査を行う必要がある。

SV-PL7000

 同社のPDF・印刷物大判検版システムは、幅広い分野の検査対象物(シール・ラベル/カード/商業印刷物、軟包材フィルムなど)を比較検査するシステム。スキャン時間と検査実行の合計時間は8秒以内、さらに新規の検査設定も20〜30秒以内で完了し、多面付け品も簡単に設定できる。伸縮補正、輪郭ファジー、ずれ許容技術により、高速高精度で検査しながら、過検出せずに良品と不良品を正しく判別する。
 
 読取可能な最大サイズは1,300×900mm。解像度は600dpi/300dpi/150dpiから選択することができる。フィルム製品などのしわや伸び縮みに対応した、エアー吸着機構を搭載している。