ウェブを積極的に活用した展開で国内市場はコロナ禍でも好調〜売上は前年比20%以上アップ
コロナ禍により我々の顧客であるラベル、一般の印刷会社は大きな打撃を受けている。その影響により、ナビタスビジョンも2020年4月〜8月頃までは売上は昨年より大きく減少していた。しかし競合他社に先駆けてリモートを活用した販促活動を積極的に展開してきた結果、9月頃から一気に受注が増えはじめ、2020年決算(12月)は対前年比20%以上の売上アップとなった。コロナ禍の影響を、逆に良い方向に利用することができた結果だと認識している。
具体的なリモートの取り組みとしては、ウェブ会議やウェブ訪問、昨年9月には例年の「ナビタスフェア」を初のウェビナーとして開催した。また、これと同時に「INNOVATION WORLD(イノベーションワールド)」という検査機のデモなどを動画で紹介する特設サイトを開設した。この特設サイトのトップページでは、シールラベル・カード検査/ブランクス検査/検査ユニット/検版システム/容器検査などの検査カテゴリーが建物として並んでおり、建物内に入ってワークショップをクリックすると、各検査機のポイントを3分程度で簡単にまとめたミニセミナーを視聴できるほか、製品資料もダウンロードできるようになっている。
これが好評で、開設後2週間で5,000件以上のアクセスがあった。また、その7割は「ナビタスビジョンのホームページを初めて見た」という顧客であった。検査機というものは、実際に実機を見てもらわないと買ってもらえない機械であるが、イノベーションワールドで前もってデモを見てもらうことで、これまでの商談で「デモを見に来てください」という道筋をスキップして商談できるようになり、短いパスで導入まで辿り着けるようになったと感じている。また、イノベーションワールドの視聴が難しい顧客に対しては、北新横浜にある技術センターから実機によるオンラインデモができる環境を整え、中継でデモを行うなどの方法でデモを見ていただいている。
これらの取り組みにより、2020年の10月〜11月は、昨年に比べ案件ベースで1.5倍以上、金額ベースでは3倍以上の売上となり、年間を通して一気に巻き返すことができた。リモートの活用で当社の情報を一気に出すことができ、これにより、ユーザの潜在ニーズに短い期間で背中を押すことができたと感じている。
「焼き焦がすほどの情熱」でソフトウェア開発を強化〜2021年を「ソフトウェア元年」に
ナビタスグループでは、従来からの特殊印刷機を安定事業、検査機を急成長市場と位置付けている。ナビタスグループは2020年3月、コンピュータソフトの開発・運営・販売の(株)ウェブインパクトをM&Aし、ソフトウェア事業を一気に強化、加速することができた。ウェブ系のソフト開発を得意としており20数名の開発者がいる企業であるが、その効果は非常に大きく、急激に受注が増えているのもウェブインパクトのメンバーがシリウスビジョンの中核ソフトウェア「AsmilVision」に対し新機能開発や既存機能の改善をしてくれているお陰である。
また、2020年4月には、画像検査ソフトウェア開発専門会社ウィラブル(Willable)㈱を設立し、シリウスビジョンの将来を担う次世代画像検査ソフトウェアを開発している。今後は、ウェブインパクトとウィラブル、シリウスビジョンの3社でソフトウェア開発に注力していく。ナビタスグループが検査機事業に参入して10年目の節目でもある2021年は、「ソフトウェア元年」としてソフトウェア開発にさらに力を入れていく年となる。
「シリウス」は、冬の大三角形として知られている星のひとつで、おおいぬ座の一等星。私が大の犬好きであるということと、太陽の次に明るい星であるシリウスの「焼き焦がすほどの情熱」でソフトウェア開発に努力していきたいという気持ちを込めて命名した。また、その情熱で開発するシリウスビジョンの検査機が世界で一番輝いていくとともに、ナイルの星のシリウスにより、ナイル川がエジプトを豊かにしたように、世界を豊かにしていきたいという思いを込めている。
また、シリウスビジョンの行動指針は(1)オンリーワン技術(2)ナンバーワン製品(3)ファーストワン行動を掲げており、オンリーワンの画像処理技術により、ナンバーワンに輝く世界一のシリウス星を目指し、1年の始まりを創った古代エジプト人のように、ファーストワンで行動していきたいと考えている。
そして、コーポレートカラーは、ナイルを流れる水のように、柔軟な発想で豊饒な世界を創るために水色とした。
標準化により利益の出せる検査機に〜営業本部を設立
ナビタスという会社はこれまで、特殊印刷機のメーカーという体質だったからか、特注機を作ることが好きなメンバーが多かった。しかし、特注機は顧客ごとに仕様が異なるため、その都度設計と開発が必要となり、手間が掛かる。同仕様の機械を複数台製作しない限り、十分な利益を上げることが難しい。受託請負で一品一様のソフトウェアを製作するのと同じである。一方、ナビタスビジョンは、検査用の標準ソフトウェアを開発することで、高収益のビジネスモデルを構築してきた。今回の新ブランド誕生を機に、その検査用標準ソフトウェアを搭載して印刷品質検査を実行するためのハードウエア、すなわち検査機の標準化も進めていく予定である。
ナビタスビジョンは「技術者集団」であることにプライドを持ち、技術力を競争力としてきた。技術力により、ユーザーの皆様方の口コミで営業してきた。すなわち、「技術で売る」ことをポリシーとしてきたが、高い技術力を有する検査機をより幅広いユーザー層に知っていただくために、営業体制を強化していく必要性を感じている。そこで、ナビタスビジョンはシリウスビジョンに社名変更した2021年より「営業本部」を開設した。これまでは「営業力の弱い企業」と自社を卑下してきたが、新たなメンバーも雇用し、今後は営業にも強い会社への変革を目指している。
そして、そのための営業戦略については、日本市場が伸びていると冒頭に話したが、それでもコロナの影響がないわけではない。また、タイやベトナムなどのアセアン諸国にもコロナで思うような営業活動ができない状況の中、中国市場に力を入れていくことにした。そのために、2020年9月に上海に現地法人「シリウスビジョン上海」を設立した。中国人がほとんどの十数人規模の組織となっているが、多額の資金を投入するとともに、日本の若手中核メンバーを取締役として抜擢するなど、非常に力を入れている。というよりもむしろ中国に賭けていると言ってもよく、これが2021年の最大のテーマとも言える。
ヨーロッパ市場については、昨年から(株)ヒューテックと協力して営業展開しているが、コロナの影響で立上げが遅れているのが正直なところである。しかし、そんな中でも「極東である日本の検査機メーカーのソフトウェアがヨーロッパのメーカーのものよりもすごい」と評価してくれるヨーロッパの大手企業が複数でてきており、時間はかかるかも知れないが、広がっていくことを期待している。
現地の営業は、コロナの影響により営業先の会社に入れないので、検査機を車のトランクに積み込んで玄関でデモを行うという、巡業の形で営業活動を行い、具体的な引き合いが増えていると聞いている。
リモート営業をさらに強化〜技術開発力、販売実績の両側面で世界一の検査機メーカー目指す
2020年9月の「ナビタスフェア」に引き続いて、12月には第2回のウェビナー「検版業務の悩みを解決する検版システム導入のメリットと成功事例のご紹介」を開催した。検版業務の悩みの解決になぜ検版システムが必要なのか、検版システムを使うとどのようなメリットがあるのかなどを成功事例と交えて紹介し、検版業務に課題や悩みを感じている企業、検版システムのメリットを知りたいという企業から多くの聴講をいただくことができた。今後は少なくとも、3ヵ月に1回はテーマをカテゴリー毎に分類し、ウェビナーを開催していきたいと考えている。
一方、リアルの展示会については、2月に開催される「page2021」「TOKYO PACK2021」の出展を予定している。
印刷業界の経営状況が厳しい中、近年は検査機を支援するツールとなるAIやIoTを活用した技術開発を自社だけでなく、外部ともコラボレーションしながら進めている。今後も自動化により生産効率を高めるとともにコストを削減できる仕組みを開発し、印刷業界の発展に貢献していく考えである。
2021年は、リモートを活用した営業展開をさらに強化していくとともに、「イノベーションワールド」などのウェブコンテンツもさらに充実させながら、中国をはじめ、世界に検査システムを販売していく。
シリウスビジョンでは、世界を豊かにするという目標に向かって、研究開発を進めていきたい。2〜3年の長期スパンで、メーカーとして飽くなき探究心で研究開発を推進していくとともに、営業についてはスピード経営で販売を推進していくつもりである。
シリウスビジョンとしての2021年の目標は前年比120%以上の成長を維持していくことで、、累計販売台数は1,500台突破を目指していく。また、これから10年以内に世界の売上100億円突破を達成し、印刷検査機メーカーとして世界ナンバーワンになりたいと考えている。