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トップ > 特集 > 抗菌印刷 特集:SIAA、抗菌印刷で衛生的な社会に貢献へ

 未だ終息が見えない新型コロナウイルス感染症問題。5月末に緊急事態宣言が全面解除され、企業活動も再開に向けて徐々に動き出したものの、第2波、第3波への警戒懸念によって再び日本中が自粛ムードに包まれており、移動や接触が制限される中で印刷産業も相次ぐイベントの自粛や延期などによって印刷物が激減している。そんな中、ひとつのキーワードとして最近よく目にするのが「抗菌」だ。新型コロナウイルス感染症の拡大にともない、「安心・安全・衛生」への関心は一層高まっており、不特定多数の人が触れる機会が多い各種印刷物についても、「抗菌印刷」として衛生性を付与した印刷物加工物が広がりを見せている。  そこで今回、「抗菌印刷」にスポットを当て、「アフターコロナ」「Withコロナ」時代の「ニューノーマル」における新たな需要として、印刷業界の「衛生的な社会への貢献」を紹介する。

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抗菌印刷で衛生的な社会に貢献へ
安心・安全・快適を提供

SIAAマークの表示で安全性の証明にも

印刷ジャーナル 2020年9月15日号掲載

 コロナ禍を背景に、安心・安全・衛生への関心は社会全体で高まっている。そのような中、昨今目にすることが多くなってきたキーワードのひとつが「抗菌」だ。印刷業界においても、抗菌インキを使用した「抗菌印刷」に取り組む企業は急速に増えており、SIAA(一般社団法人抗菌製品技術協議会)の加入についても「ここ4ヵ月で160社ほどの加入があったが、そのうち半分は印刷・関連業界」(平沼進専務理事)とのことで、もはや抗菌印刷への取り組みは印刷会社にとってウイズコロナ時代のニューノーマルとも言えそうだ。そこで今回、弊紙では「抗菌印刷で衛生的な社会に貢献へ」という観点から、抗菌印刷に積極的に取り組む印刷会社、また印刷会社の抗菌印刷への取り組みをサポートするメーカーの製品を紹介するとともに、抗菌/防カビの専門団体であるSIAAの平沼進専務理事に「抗菌印刷」に取り組む必要性や現在の状況を聞いた。


 「抗菌」とは、製品の表面上における細菌の増殖を抑制することで、菌を一時的に死滅・除去する殺菌・除菌とは区別される。表面の細菌を増殖させないように加工されている製品を「抗菌加工製品」といい、抗菌印刷により製造された印刷物も抗菌加工製品となる。

 JIS(日本工業規格)では、加工されていない製品の表面と比較し、細菌の増殖割合が100分の1以下(抗菌活性値2以上)である場合、その製品に抗菌効果があると規定している。

 社会全体で「抗菌」への意識が高まっている中、インキメーカーの「抗菌インキ」を活用して抗菌印刷に取り組む印刷会社は急増しているが、SIAAの平沼氏は、それと同時にSIAAに加入する必要性を訴えている。

 「印刷物は家電製品や日用品などと同じで『雑貨品』となる。雑貨品は日本においては欧米とは違い、食品や薬剤のように安全性を表示する法律的な義務はない。このため、業界基準ではあってもSIAAの会員となり、印刷物に『SIAA』のマークを表示することで、人体などに影響のない安全な印刷物であることを広く社会に証明することができる」(平沼氏)

 SIAAが実施した消費者アンケートによると、現在のSIAAマークの認知度は10〜20%であり、まだまだ認知度は高いとは言えないが、平沼氏は「某大手流通では、約10年前から抗菌加工製品にはすべてSIAAマークを付けている。流通全体的にも、例えばまな板であってもSIAAマークが付いていないものより、付いているものの方が流通している傾向があるので、消費者にもそれなりに影響力は出てきているのではないかと認識している」と説明している。

 今後、印刷物のエンドユーザーである生活者が安心・安全に手に取ることができる印刷物であることの証明として、SIAAマークの使用は印刷業界のニューノーマルとなっていきそうだ。

新規加入の半分は印刷・関連会社

 SIAAの会員数は約330社(2020年3月現在)。長引くコロナ禍を背景に、その後も加入企業は増え続けており、直近の4ヵ月の加入企業数は約160社。そして驚かされるのは、このうちの半数以上は印刷・関連業者となっていることだ。平沼氏は「今年の加入の目標であった40社を1ヵ月で達成できたことになる。若干であるが印刷物のSIAAマークが定着しつつある雰囲気を感じ始めている」と話し、今後のさらなる印刷業界からの加入増加を見込んでいるという。

 国内の印刷会社がSIAAの正会員に加入するには、抗菌加工製品の抗菌性能がSIAA自主基準に適合している必要がある。また、加入には入会金10万円と年会費10万円が必要となるが、「登録件数ごとの費用はないので、このような団体の会費としては、ある意味、非常に経済的だと認識している」(平沼氏)。

SIAA加入後は「自己認証制度」。インキメーカーにも協力を求めて品質管理体制を徹底

 抗菌印刷物をSIAAに製品登録する場合、JNLA試験事業者(証明書発行機関)による抗菌試験をパスする必要がある。しかし、一度試験をパスすれば、毎年のように定期的に試験報告書の提出を義務付ける機関などもある中、「自己認証制度」で提出義務を定めていないのがSIAAの特長である。ただ、このため「品質管理体制に若干の不安要素がある印刷会社があるのも事実」と平沼氏は明かす。

 「SIAAは自己認証制度のため、会員企業には管理責任者を置いてもらい、自社の抗菌加工製品の抗菌性を含めた品質管理を担っていただくことをお願いしている。ただ、零細規模の印刷会社の中には『SIAA登録しているインキを使用しているのだから大丈夫だろう』と、自社における品質管理を軽んじているように見受けられる企業があるのも事実。このためSIAA登録しているインキメーカーには、このような印刷会社のフォローも合わせてお願いしている」(平沼氏)

 平沼氏は「印刷物は消費者に直結するものであるので、会員企業の印刷会社には、さすがSIAAマークを取得している印刷会社は安心であるということを今後も消費者にアピールしていただけることを期待したい。SIAAがキャッチフレーズとしている『安心・安全・快適』な印刷物を消費者の手元に届けていただきたい」と、会員企業による印刷業界の社会的な価値向上に期待している。