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 「生活や文化に彩りを添え、新しい価値と感動を提供し続ける」ー今年6月29日付の役員人事で富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ(株)(以下「FFGS」)の代表取締役社長に就任した辻重紀氏。所信表明では、「刷版」「パッケージ・フレキソ」「デジタルプレス」の3つを具体的な重点事業と位置づけ、それぞれ強化していく考えを述べた上で、「富士フイルムグループの総合力を結集し、すべての顧客の企業価値向上に貢献していく」との強い意志を表明した。それから3ヵ月半が経過したいま、FFGSの新たな舵取り役として組織を統率する辻社長にインタビューし、改めて具体的な事業の展開や方向性などについて聞いた。

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すべての顧客の企業価値向上に貢献
力強く革新に挑む 〜 新しい価値と感動を提供

FFGS代表取締役社長 辻重紀氏に聞く 〜 技術力強みに3重点事業強化へ

印刷ジャーナル 2017年10月15日号掲載

 「生活や文化に彩りを添え、新しい価値と感動を提供し続ける」ー今年6月29日付の役員人事で富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ(株)(以下「FFGS」)の代表取締役社長に就任した辻重紀氏。所信表明では、「刷版」「パッケージ・フレキソ」「デジタルプレス」の3つを具体的な重点事業と位置づけ、それぞれ強化していく考えを述べた上で、「富士フイルムグループの総合力を結集し、すべての顧客の企業価値向上に貢献していく」との強い意志を表明した。それから3ヵ月半が経過したいま、FFGSの新たな舵取り役として組織を統率する辻社長にインタビューし、改めて具体的な事業の展開や方向性などについて聞いた。

■新社長に就任されてからおよそ3ヵ月半。まず、その重責を体感されてきた現在の心境をお聞かせ下さい。

 昭和56年の入社以来、これまでその多くを営業職として従事してきた私が、その後、常務、専務と取締役を歴任させていただき、それぞれの立場においてその責務を果たしてきた。しかし、「代表取締役社長」という立場においては、これまでとまったく違った責任の重さを痛感している。
 やはり、トップとして「最終決断」を下し、事を進めなければならない場面が出てくる。この3ヵ月半の間でもいくつかそんな場面があった。今までにはない「決断」という重責を担うこと、そしてその「決断」をスピード感をもって実行し、やるべきことをしっかりやっていくことの重要性を感じている。決して大げさなことではなく、ひとつひとつ着実に進めていきたいと思っている。振り返ってみると、あっという間の3ヵ月半だったように思う。
 ご挨拶に伺う中でも、営業だっただけに以前からよく知る多くのお客様から「厳しい時期だが頑張って」という激励の言葉を頂いた。お客様から「見られている」という意識も自分の中では良いプレッシャーになっている。そして何より印刷業界におけるFFGSのブランド力に対する期待感を肌で感じている。そこに対してもしっかりと応えていきたいという思いを強く持っている。
 私はやはり営業気質。社内のデスクにいるよりは、お客様にお会いしている方が性に合う。これからも積極的にお客様のところにお邪魔して様々な話をする中で、お客様1社1社の課題解決に向けて邁進できたらと思っている。

辻社長ご自身、日本の印刷産業の現状や課題をどのように捉えていますか。

 紙媒体ということに限定すると、言うまでもなく減少傾向にあり、急激に改善するということは考えにくい。下落率がどう変化していくかだと思う。その中で、我々のお客様である印刷会社様は様々な課題にチャレンジしていると認識している。
 例えば、いままでは「如何に生産性を向上させるか」という課題に対し、「より高速な印刷機を導入する」といった解決策が用いられてきたが、今は後加工を含めたワンストップサービスの展開やマーケティングオートメーション(以下「MA」)との連携などにより、単なる生産性の向上だけでなく、クライアントへのサービス向上や営業活動の効率化にも同時にトライされている。つまり、印刷そのものも重要であるが「その周辺で如何に付加価値を加えるか」という取り組みである。
 そういう意味では、単に「紙に刷る」ということも大事だが、その過程でIoTやAIを如何にして印刷ビジネスに取り込み活用するかが、今後の業界の課題と言えるのではないだろうか。
 そこでポイントになるのは決して「デジタルVS紙」ではないということ。デジタル技術と紙媒体は互いに融合し合うことで新たな付加価値を生む可能性がある。ダイレクトメールの分野では、既にそんな動きが見られる。つまり、「紙なのか?デジタルなのか?」ではなく、「入り口はどちらか?」と捉えればいい。紙が入り口でデジタルが出口、デジタルが入り口で紙が出口、どちらでも良いわけだ。そこを有機的に捉え、印刷会社の先のクライアントが何を望んでいるのかという視点が必要になってくる。そこに我々が如何にお手伝いできるかだと思う。
 我々は、刷版以外でもワークフロー分野や後加工分野などに注力してきた。さらに当社の強みであるインクジェット技術を核とした新しいデバイスの提案も含めて、今後はそんな課題解決に貢献したいと考えている。

■長年、営業職に関わられてきた辻社長ですが、企業の舵取り役としてどのような「色」を出していこうと思われますか。

 まず、「対お客様」ということで言うと、これまでもお客様の声をひとつひとつ聞きながら、様々な課題を共有し、解決していくようなソリューションを実践してきた。これはベースであって非常に大事なことだと思っている。つまり、お客様に利益をもたらすような提案力が我々には求められているわけだ。
 また、お客様の取り組みや事業展開が多様化していることも事実で、1社1社の課題に合った提案も必要になってくるだろう。これからはデバイスだけの提案では通用しない。システム全体が提案できなければいけないし、そこにどのような効果があって、どのような価値が生まれるかを含めて提案できる能力が求められる。
 一方、社内的なことで言うと、今年4月、「生活や文化に彩りを添え、新しい価値と感動を提供し続ける」という新しいビジョンを制定した。印刷文化の中に新しい価値や、その先にある感動を生み出していくという思いを込めたものだ。このビジョンの具現化に注力したい。
 加えて組織の中に「三遊間を作りたくない」という思いがある。つまり「誰かがやってくれるだろう」というように互いが見合ってしまうのではなく、自らが拾いに行くような組織にしたいということ。そのためには、自分たちの壁を破る「個の力」が必要だ。年月が経つと組織は硬直化して「見えない壁」ができてしまう。そこを如何に壊すかが重要だと思っている。つまり、組織の縦のラインだけでなく「横も斜めも見れる組織」が理想的である。お客様へのソリューション提案も、そういった「個の力」と「組織の力」が必要だと考える。

■御社の強みをどのように捉えられていますか。

 いままでプリプレスからプレス、ポストプレスという、いわゆる生産現場だけの議論に終始してきた時代もあったが、これからはもう少し幅広い話になってくる。インダストリー4・0時代をどう迎えるかはdrupa2016でもメガトレンドとしてクローズアップされたが、つまり、生産現場の管理から会社全体の管理、さらにはクライアントへのサービスまでを含めたワークフローを考える必要が出てくる。ここにお客様の課題に応じて幅広い製品を提案できる我々の強みが活きてくる。IoTを活用し、ファクトリーオートメーションや、さらにその先の展開まで、FFGSには期待が寄せられていると認識している。そこには確実にお客様へ貢献できるようしっかりと取り組みたい。
 また、我々は国内の刷版分野において高いシェアを頂戴している。そのお客様との情報交換を通じて課題やニーズをいち早くキャッチし、その声を早期に研究開発や製品に反映させることができる。これも大きな強みである。
 さらに、革新的なインクジェット技術「FUJIFILM Inkjet Technology」は我々の揺るぎのない強みだと自負している。
 9月5日に富士フイルムデジタルプレス(株)主催で開催した「Power of Inkjet Session 2017」において、B2インクジェットデジタル印刷機「JetPress720S」の活用状況や導入効果をご紹介いただいた(株)第一印刷所(本社/新潟県新潟市中央区和合町2-4-18、堀一社長)の小出博信代表取締役専務による講演の中で、JetPress720Sはあくまで小ロットをターゲットにしているが、それにより、オフセット枚葉印刷機でのカラー印刷においてロットが14・2%向上し、生産性が20%向上したというお話があった。改めて当社の製品が工場全体の生産性向上にしっかりと貢献できていることを確認できた。その他にもインクジェット分野には、「環境」や「生産性」「IoT」「MAとの親和性」など、多くのキーワードが存在する。それをお客様の課題に合わせて具体的な生産手段として提案していく。

■重点事業と位置づける「刷版」「パッケージ・フレキソ」「デジタルプレス」の3事業における具体的な方針をお聞かせ下さい。

 まず刷版事業では、コスト削減と環境対応という最重要課題を「省資源」というイノベーションで同時に解決する「SUPERIA」をさらに推進する。
 完全無処理CTPのラインアップに、高い耐刷力とUV印刷適性を発揮する「SUPERIA ZD」を加えたことで、より広い用途で完全無処理版の「省資源」効果を実感していただけるようになった。
 また、CTPプレートや印刷薬品を中心とした製品の開発・提供だけでなく、印刷現場の課題解決を支援する「Eco&Fast Printing」によるソリューションで品質安定化、生産性向上、コスト削減を図り、最終的に顧客の利益向上につなげていく。
 次に、パッケージ・フレキソ事業では、FLENEXを中心とした環境対応のソリューションを提案していく。
 軟包装分野は国内ではグラビア印刷が主流だが、欧米では環境対応の問題からフレキソ印刷が主流であり、当社も欧米を中心にフレキソ版や関連機器の売り上げが伸びている。
 とくに欧州や中国では、環境規制がさらに厳しくなっており、この流れはいずれ日本にも拡がると考えている。
 今後もフレキソ印刷資材を中心に、環境対応を図り、品質を向上させながら、これまで以上に収益性を高めるための製品の開発やソリューションの提案に取り組んでいく。加えて、小ロット・多品種への課題に対しては、当社のインクジェット技術がここでも活かせると考えている。
 最後にデジタルプレス事業だが、富士フイルムは、2008年のdrupaで「Jet Press 720」を発表以来、商印分野を中心に他社に先駆けてインクジェットデジタルプレスの導入を進めており、現在「Jet Press 720S」はワールドワイドで導入台数が100台に届こうとしている。
 またdrupa2016では、「プリントヘッド」「インク」「画像処理」の技術と、それを統合する「インテグレーション技術」を総称して「FUJIFILM Inkjet Technology」として発表した。このテクノロジーを活かし、自社製品の枠を超えて印刷業界全体にイノベーションを起こすため、ハイデルベルグ社と共同開発した次世代のB1インクジェットデジタルプレス「Primefire 106」や、窒素パージ技術の採用により低臭気を実現した軟包装分野向けUVインクジェットデジタルプレス「Jet Press 540WV」など、オフセットトランスファーになりえるインクジェットデバイスを訴求していく。
 また、同分野においては、富士フイルムグループの総合力で開発とソリューションの拡大を進めていきたい。そのひとつとして、これまでもPODを中心に連携を進めている富士ゼロックスとの協力関係をさらに強化し、一体となってデバイスやソフトウェアなどのソリューション開発・提供を進めていく。
 また、後加工までを含めたトータルワークフローのソリューション展開も重要な位置付けにある。ユーザーの仕事に合わせた後加工機の提案と、メーカーを横断した導入サポートを行う「Post Pressトータルソリューション」を、知識や経験の豊富な専任スタッフを配置して進めてきたが、これをさらに強化し、ユーザーの要件・課題と時代のニーズに応じた提案を進めていく。

■それでは辻社長のプライベートについて、ご趣味などをお聞かせ下さい。

 もともと体を動かすことが好きだったが、ケガをするといけないのでいまはゴルフぐらいしかしていない。
 身長があるので、よく「バスケットやバレーボールをしていたのか」と言われるが、中学校から高校、大学とサッカーをやっていた。その後も草サッカーで27歳までプレイしていた。その影響で私の子供たちも地元のクラブチームでサッカーをやっている。とくに好きなチームはなく、サッカー観戦そのものが好きである。
 ゴルフ歴は長いが、練習もしないので、なかなか上達しない。ゴルフそのものよりも緑豊かな環境でのあの雰囲気、仲間と楽しく1日過ごせるということの方が性に合っているのかもしれない。
 あと、自動車の運転が好きで、長時間運転も苦にならない。昔はライセンスも持っていたが...。
 旅行も車で行くことが多かった。東京から四国一周した時は、途中でお金がなくなり、大阪でアルバイトして帰ってきたことも...(笑)。あとは北海道も自動車で一周したことがある。
 お酒は呑む。顔に出ないため「強いだろう」と言われるが、人並みぐらいだと自分では思っている(笑)。
 性格は、短気ではないが、気は長くない方だ。

■最後に、印刷関連業界に向けたメッセージをお願いします。

 FFGSは、長年培ってきた印刷材料の技術や、インクジェット技術をはじめとする革新的なテクノロジーに注力する中で、長年にわたって印刷業界の皆様に育てて頂いた。これからもお客様の声を大事にしながら、お客様の企業価値の向上に貢献できる製品、サービスを提供することで、業界の発展に寄与していきたい。
ーありがとうございました。