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トップ > 特集 > 「ランダ・ナノグラフィー印刷プロセス」最新動向:「ランダ・ナノグラフィー印刷プロセス」の最新動向 〜実用化に向け開発を加速〜

 drupa2012で話題となったランダ社(ベニー・ランダCEO)の「ランダ・ナノグラフィー印刷プロセス」。ランダブースには会期中10万人が訪れ、ブース内に設置されたシアターで延べ70回にわたり行われたプレゼンテーションには、およそ4万人が参加するなど、その新技術は全世界の注目の的となった。しかし、大きな関心を集めたランダの新技術ではあるが、それ以降の公式な情報発信は少なく、その後の動向についてはあまり明らかにされていない。そこで今回、ランダ社と戦略的提携を締結した(株)小森コーポレーションの吉川武志氏に、改めて「ランダ・ナノグラフィー印刷プロセス」について解説してもらうとともに製品・技術を含めた現時点の開発状況などを語ってもらった。

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「ランダ・ナノグラフィー印刷プロセス」の最新動向
〜実用化に向け開発を加速〜

小森コーポレーション・吉川武志氏に聞く

印刷ジャーナル 2015年1月1日号掲載

 「ランダ・ナノグラフィー印刷プロセス」は、水性インクを使った新しいデジタル印刷技術で、その中核をなすのは数十ナノサイズの顔料粒子を使ったランダナノインクだ。強力な光の吸収体で、均一でシャープなドット、高光沢忠実度、広いCMYK色域を特徴としている。この技術は、デジタルインク画像を形成するためのインク・イジェクターを採用しており、そのプロセスにおいて、非常に高速に動作して画像を形成する。まず、ランダナノインク各色は、紙などの被印刷媒体ではなく、熱をもったブランケットのようなコンベヤーベルト上に吐出されてイメージを形成。描画されたイメージは、インクの水分が蒸発することで極薄のインク膜(0.5ミクロン)となり、ベルトから圧胴上の被印刷媒体に転写される。これによりオフセット印刷機と同等の高い印刷速度を実現し、また転写方式を採用しているので、どんな紙、プラスチックにも印刷可能となっている。

様々な角度からテスト・検証を実施

イメージを正確に転写できる超薄膜のインク

 従来のインクジェット方式の場合、射出されたインクは紙に着弾した瞬間に紙の繊維を貫通してしまう。これによって表面に残ったインクの濃度は低くなり、またインク自体が紙に吸収されてしまうのでドット形状も輪郭もギザギザになってしまう。つまり射出したインクは、そのまま濃度に反映されず非効率的な使用になるほか、品質も安定的ではない。またインクには、水や溶剤などが含まれているので紙の繊維の中まで入った時に膨潤させるなど、用紙自体にも影響を起こす可能性がある。
 ランダナノインクでは、ナノレベルの顔料「naopigments」を用いることで超効率的な光吸収ができる。またオフセット印刷よりも薄い、超薄膜でのインクによるイメージが可能。この技術によってドット形状も均一になり、またムダなインク消費を抑制することができる。
 また高い色再現性を有しており、CMYKにおける色再現領域では、Pantoneカラーの約65%をカバー、またCMYK+OVGでは、約75%をカバーしていると言われている。これによりパッケージ印刷などに用いられる特色にも安定して利用できるはず。

2015年後半にベータテストを予定

 drupa2012以降の話題としては、ランダ社のデジタル印刷機のデジタルフロントエンドにEFI社の「Fiery」をベースとした最も先進的な技術を採用することが決定したこと。これによりソフトウェア側からランダ社のデジタル印刷機をサポートする体制ができた。昨年末の発表によると2015年の後半には、このデジタルフロントエンドを含めた客先でのベータテストを予定している。今後は、すべての最先端ワークフローとの統合や最新色標準の認証取得、印刷機上での直前修正機能などの実現に向け検証を進めていく。さらに高性能デジタルフロントエンドの搭載により、1枚1枚がすべて異なる絵柄を印刷するEPID(フルバリアブル)への対応も視野に入れている。
 また戦略的提携パートナーである当社が日本企業ということから、印刷のテストパターンの中に漢字(明朝体)も含まれており、非常に細かな部分の再現も実現している。
 ランダ社は昨年5月、欧州のALTANA社より1億ユーロの出資を受け、開発資金を確保し、さらなる技術開発を進める体制を構築している。今後は、24時間・7日間連続で生産できる耐久性やインラインの検査装置搭載などもその開発項目に加わっていく。

ユニークな設計コンセプトは健在のようだ

多彩なオプション機能も開発

 これまでランダ社のデジタル印刷機は、商業印刷向けやパッケージ印刷向けごとに名称を変えていたが今後は、すべてを「S10」という名称に統一していく。1,050mm幅の「S10」の標準仕様としては、4色(CMYK)システムで片面印刷機として提供。またデジタルフロントエンドについては、エントリーレベルのものを標準装備していく予定。また検査装置も搭載されている。
 機能性をさらに高めるオプションとしては、4色にオレンジ、バイオレット、グリーンを追加した7色仕様、また両面印刷対応機能として反転機構、フルバリアブルに対応する高性能デジタルフロントエンド、ノンストップ装置(フィーダー・デリバリー等)、インラインコーターなどをラインアップとして予定している。