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 日本のビッグデータ市場は、2012年の1,900億円から2017年には6,300億円に成長すると見込まれており、このビッグデータがもたらす潜在的な経済効果は7兆7,700億円で、うち小売業では1兆1,529億円と推定されている。しかし、これらの多くはインターネットの世界が主役となっており、リアル店舗ではデータサイエンティストの不足などを理由にビッグデータの活用は進んでいない。  そんな中、コダック(同)(藤原浩社長)とデータ分析および関連サービスを提供する(株)ブレインパッド(本社/東京都港区、草野隆史社長)はこのほど、印刷業界に特化したビッグデータソリューション事業における提携を発表。ブレインパッドが提供するマーケティング・インテリジェンス・ソリューション「exQuick(イクスクイック)」をコダックから印刷業界向けに販売することを提携の柱に、既存データの有効活用によるビジネス効率向上を訴求していく。そこで今回、両社のトップ対談を企画し、印刷業界におけるビッグデータ活用の必要性や両社がタッグを組むことの意味、さらに今回提供する具体的なソリューションについて語ってもらった。

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対談|「宝の山」を掘り起こせ! 〜 印刷業界のビッグデータ活用支援へ

コダック合同会社 藤原浩社長 × 株式会社ブレインパッド 草野隆史社長

印刷ジャーナル 2014年8月25日号掲載

 コダック(同)(藤原浩社長)とデータ分析および関連サービスを提供する(株)ブレインパッド(本社/東京都港区、草野隆史社長)はこのほど、印刷業界に特化したビッグデータソリューション事業における提携を発表。ブレインパッドが提供するマーケティング・インテリジェンス・ソリューション「exQuick(イクスクイック)」をコダックから印刷業界向けに販売することを提携の柱に、既存データの有効活用によるビジネス効率向上を訴求していく。そこで今回、両社のトップ対談を企画し、印刷業界におけるビッグデータ活用の必要性や両社がタッグを組むことの意味、さらに今回提供する具体的なソリューションについて語ってもらった。

「宝の山」へ導くビッグデータブーム

草野 ビッグデータとは、厳密に言うと「とてつもなく大量のデータ」を指しているわけだが、現状、様々なところで取り上げられている文脈から読み取ると「データの有効活用」自体に世の中のトレンドが集まっていると認識している。つまり、大量のデータを保有する企業、あるいは業界以外は無関係ということではなく、「既存のデータを活用してビジネス効率を高めよう」というのが、昨今のビッグデータブームの根底にある。
 当社はここ10年で「ビッグデータ分析の会社」と呼ばれるようになったが、実際のところ、厳密な意味でのビッグデータはそれほど多く存在するわけではない。我々のビジネスの多くが、企業の中に既にあるデータを有効活用してビジネス効率を高めるお手伝いである。そこでの失敗は少なく、やっただけの価値を見出すことができる。

藤原 確かに「ビッグデータ」というと大げさにとられがちだ。ただ、草野社長が言う「ビジネスにインパクトを与えるような既存データベースの活用」でも日本は遅れているように思う。草野社長は、その理由をどう分析しているのか。

草野 これはあくまで私見ではあるが、アメリカを例に取ると、まず多民族国家で様々な言語が混在するマーケット環境が複雑で、DMにしても、英語で送るか、スペイン語で送るのかによってレスポンス率は大きく変わってくる。そういったモザイク的な市場に対して精緻なマーケティングが必要不可欠だったというのがアメリカで活用が進んでいる理由のひとつでもある。

藤原 逆に言えば、ハードルが高かったからこそ、そこに積極投資してきたということか。

草野 日本では、いまでこそ「格差」がひとつの社会問題になっているが、以前は「1億総中流」と言われ、厚みのある中間層にマス広告を展開すれば充分効果があったわけだ。そういうマーケット環境の違いがベースにある。

藤原 日本は、比較的均一な民族性や文化であるがゆえに、データ活用に対する強い動機付けが欠けていたということだろう。

草野 また、日本におけるIT投資は、「攻め」というよりは、コスト削減や効率化を前提とした「守り」のスタンスが多く、売り上げを伸ばそうというものが少ないように思われる。

藤原 同感である。本来は売り上げを伸ばすための「宝の山」であるデータ活用に目が向けられていないという現状は否めない。

草野 結果として「ITに投資してもビジネスが伸びない」「したがってIT投資も進まない」というネガティブなスパイラルに陥っている。そういう意味で、昨今のビッグデータブームが「宝の山」の存在を気付かせるきっかけになればと思っている。


データ分析とバリアブル印刷技術

藤原 IT業界でERP(Enterprise Resource Planning/統合業務パッケージ)ビジネスに携わっていた私から見て、印刷業界は、委託された印刷物製造に徹しているように思えた。これまでは、それでも利益が上がっていたわけだ。しかしマーケットが急変し、個人の嗜好に合わせたメッセージングが必要になった今、同一大量印刷の市場はシュリンクし、利益率も低下している。
 そこで印刷業界が次にどこで生き残るのか。この答えは「ITとの融合」である。そして既存のデータベースを成長のために活用していくことが唯一の道だと考える。
 実際、アメリカではビッグデータを活用して当社の「プロスパー5000」のような非常に生産性の高いハイエンドデジタル印刷機で印刷し、業績を伸ばしている印刷会社もある。それなりの投資が必要になるにも関わらず、印刷ボリューム、投資への見返りを確保できるということから、盛んにそういうビジネスが立ち上がっている。
 日本ではまだまだその機運が足りないし、そもそも既存のデータを如何に活用するかということに対する経営者の認識が低い。印刷会社がその「宝の山」に気付き、クライアントに提案できるようになれば、異次元の差別化になると確信している。我々のビッグデータソリューションは、印刷会社の営業力、マーケティング力の強化に繋がるもので、「お客様の経営パートナーになる」というコダックのビジョンを具現化する取り組みである。印刷業界の将来像を提示していく上でも重要な取り組みとして位置付けている。

草野 そのビジョンの具現化に向けたパートナーとして、今回当社を選んでいただいた理由を率直にお聞きしたい。

藤原 ブレインパッドは、レコメンドエンジンなどの先端のソリューションを豊富に取り扱うデータ分析および関連サービスの国内でのリーディングカンパニーであり、また日本でも有数のデータサイエンティスト集団で、我々にとって最も理想的なベストパートナーであると考えた。そして、まさに将来の印刷業を成長させていくためのエンジンとなりうる企業だと判断した。我々のユーザーにとって非常に付加価値の高い分野であるし、我々が提携することによって、ビッグデータを印刷業界に特化した形でサポートできる。もちろん我々の他のソリューションと併せれば非常に大きなシナジーとなる。
 逆に、ブレインパッドでは、我々から今回の協業の話を持ち込んだ際、どのように感じたのか。

草野 130年以上もの長きにわたりイメージング分野のトップブランドとしての地位を確立してきたコダックが、今後の印刷業界のあり方を考え、データ活用を次の成長の起爆剤としてドライブしていこうと決意し、そこでパートナーになれたことは非常に光栄だと思っている。
 データ分析して何らかのアクションを起こすとなると、いわゆるワン・トゥー・ワン、パーソナライズしていくことになり、そこにはバリアブル印刷の技術は不可欠だ。そこで優れたプロダクトを持つコダックと、分析から実行のところまでを協業することでトータルなソリューションを完結できる。
 当社では50人規模のデータサイエンティストを擁しており、システム販売をメインとする同業他社と違い、分析サービスだけで収支を合わせることを前提に特化していることが最大の特徴である。つまり分析だけでフィーに見合う価値を提供することで差別化を図っている。
 しかし、我々がいくら優れた分析を行ったとしても構造的に多くのパターンをカバーできないケースがある。それを実行できるインフラが必要だ。例えば、分析結果に基づき顧客を10種類に分ければ、10パターンのデザインが期待されるが、実際に実行できるのが3パターンでは、その案件の精度は落ちる。今回の提携によって、実行の部分のソリューションとセットになるということは大きな意味を持つ。的確な分析結果に基づくターゲティングによって一見印刷物は減少するように思うが、10パターンすべてを提案できれば印刷ビジネスとしても広がる。クライアント側で販促効率が上がり、リターンも増えれば再投資される。このサイクルを回すと、業界全体が活性化されるはずである。


データ分析パッケージツールを提供

藤原 今回の提携に伴う具体的なソリューションとしては、当社に寄せられたデータ分析ニーズをブレインパッドで解析し、その結果を提供するということがひとつ。また、既存のデータベースを「如何に活用するか」というコンサルティング的なことも含まれる。
 さらに、ブレインパッドが提供するマーケティング・インテリジェンス・ソリューション「exQuick」を印刷業界向けにコダックから販売する。

草野 「exQuick」は、企業に蓄積された膨大なデータを統合し、直感的な操作で集計・分析、データ抽出およびレポート作成までを実施することが可能なソフトウェア。使い勝手が良く、現場の方が簡単な操作でデータ集計し、対象顧客を抽出できるようになる。同製品のコダックでの取扱開始は、今回の提携の柱のひとつである。
 このツールは、複数のデータベースを一元的に統合できる設計となっている。そもそもイギリスのMSP(マーケティング・サービス・プロバイダー)用に開発されたツールで、まさに印刷会社などでの活用を前提に作られたものだ。

藤原 いわゆるExcelライクで、ユーザーインターフェースにも優れたソフトウェアである。導入企業としては、「データをどれだけ既存のデータベースからうまく吸い取れるか」という技術的なハードルが気になるところだが、そこもかなり簡便にできている。
 当社は「将来のビジネスをどうするか」に悩む印刷会社の経営者に、次の成長分野の柱としてビッグデータ分析を自前でできる体制を構築し、サービスとして顧客に提案できるところまでをサポートしていきたいと考えている。
 これは、まさにコンテンツ。我々の得意分野は、このコンテンツを印刷物にするというところ。スピード、クオリティ、コストでバランスのとれた競争力のあるソリューションを持っており、これらを組み合わせることで、次代の印刷ビジネスをワンストップで創造していきたい。

草野 現在、個人向けにも大量のeメールが届く時代。それだけに物理的な「紙」で届く情報はパワーを持つ。ただ、昔のように一律のものでは響かない。ここの部分をうまく設計し、確実に届けることができれば、紙メディアはeメールよりも投資対効果が高いことはすでに実証されている。今回の提携は、その実現に向けた第一歩である。