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トップ > 特集 > 印刷通販サービス「展開する」「利用する」:ベストプリント、印刷通販進出を提案

 「印刷」の新たなビジネスモデルとして、急激な市場規模拡大が進む「印刷通販」。2013年度の印刷通販市場規模は前年度比11.1%増の543億9,000万円(矢野経済研究所調べ)とみられ、需要全体の先行きが不透明な印刷ビジネスにおいて、ある種の存在感を示している。その潜在需要は未だに大きいとされ、「低価格」「スピード感」に加え、「品質」「サポート」といった多面的な「価値」を訴求することで、今後も小ロットを中心とした印刷需要の開拓が進むと予想される。  一方、そのユーザー層にも変化が見られる。市場が形成された2000年代はデザイナーや個人が中心だったのに対し、近年では法人による利用も増え、支払い方法として今では当たり前となりつつある「売り掛け」対応が市場を押し上げているという側面もある。  なかでも、プロの印刷会社が自社のアウトソーシング先として印刷通販を利用するケースも増えている。本紙が今回Web上で行ったアンケート調査によると、印刷業による利用率は50.3%で、前年比15.1ポイント増加。「印刷会社の生産工程の一部を支える印刷通販」としての位置付けを強めるサービスも増えている。  そこで今回、印刷通販サービスを「展開する」「利用する」という2つの切り口で特集を企画。市場参入のための「ススメ」的な主体的内容と、印刷会社によるサービス利用を促す「プロの要求・需要を満たす印刷通販」という観点から「印刷通販の今」に迫る。

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ベストプリント
印刷通販進出を提案、サイト構築〜運用までをサポート

印刷ジャーナル 2014年7月15日号掲載

田仲社長
​ 様々なアイディアによる独自サービスを提供する「ベストプリント」(http://www.bestprints.biz)は、(株)五色(田仲達郎社長)が運営する代理店型印刷通販サイトだ。その同社は昨年10月より、印刷通販ビジネスを低コストで簡単に開始できるサービス「印刷通販パートナーズ」の加盟企業の募集を行っている。サイト構築やカスタマーセンター等の新たな人材採用が一切不要の同サービスは、印刷会社の印刷通販進出を支援する新たな取り組みとして注目を集めており、すでに加盟企業4社がサイトを開設し、ビジネスを開始している。

 この「印刷通販パートナーズ」は、印刷通販ビジネスに必要なインターフェイスからオペレーション等のシステムをパッケージとして提供することで、新たな印刷通販ネットワークづくりを支援するサービス。仕組みとしては「ベストプリント」のシステムを使用することで高額なサイト構築費やサーバー管理負担等のコスト負担を軽減。さらにカスタマーセンター等、顧客からの問い合わせについても「ベストプリント」が対応してくれるので、新たな人材の採用や専用施設の設置も必要なく、手軽にかつ低コストで印刷通販ビジネスを開始できる。
 このサービスを開始した理由について田仲社長は「営業訪問先で必ず話題になるのが『仕事がない』ということ。当社は、生産設備を持たない代理店型の印刷通販サイトを運営しており、そのノウハウを印刷業界のために活用できないか、と考えたのがきっかけ」と説明する。
 サイト構成や商品ラインアップ、そして価格などについては、「ベストプリント」の基本フォーマットを使用しての運用となるが、加盟企業側で修正することも可能。具体的には、自社の強みの商品を全面に出したサイトデザインやオリジナル商品の追加など、各加盟企業の特徴に合わせた運用をすることができる。

成功するためのノウハウも提供

加盟企業を募集中
​ また、このサービスの魅力は受注物件を自社で印刷することはもちろんだが、「ベストプリント」にそのまま委託することもできることだ。つまり得意分野の注文については自社で印刷、そうでないものは「ベストプリント」で印刷、といった受注物件の振り分けをすることができる。またサイト開設後、すべてを「ベストプリント」に委託することも可能。サイト開設後のプロモーション等も「ベストプリント」でサポート。また代理店同士の情報共有も行い、代理店の売上げアップも支援している。そして最大のメリットは、サイト開設から4年で売上6億円を達成した「ベストプリント」の印刷通販ビジネスのノウハウが共有できることだ。
 「もちろん、すぐに莫大な収益をもたらすシステムではないが、IT環境が普及している現在の市場において、ネットビジネスへの対応は印刷産業にとって必要なことだと思う。そのための知識と経験を加盟企業に提供していく」(田仲社長)
 印刷通販ビジネス参入を支援するサービスということは、加入企業が増えればそれだけ競合サイトも増える。同社のビジネスにとっては、マイナスにも受け取れるが、田仲社長は、既存顧客の囲い込みの効果を強く訴えている。
 「発注者の多くは、顔の見えない印刷通販よりも従来からの取引先である印刷会社に発注したいのが本音である。だがコストの問題などから印刷通販を利用するしかない。しかし既存取引先の印刷会社が印刷通販サイトを開設していれば、発注者は安心して注文を出せるはず」(田仲社長)
 同社は、印刷関連の展示会に出展し、この「印刷通販パートナーズ」を紹介している。またセミナーなども積極的に開催し、同サービスの認知普及活動を行っている。すでに加盟企業数社がサイトを開設し、印刷通販ビジネスを開始しているという。
 「サイトを開設しても、すぐに注文が来る訳ではない。当社もPR活動を行うが、1番効果的なのはリアル宣伝活動である。まずは既存の取引先にPRして、ネット注文が可能であることを説明すること。それにより今まで、他の印刷通販に流れていた仕事が戻ってくることもある。利用者が増えれば、徐々に新規顧客獲得にもつながっていく」(田仲社長)
 
印刷通販の海外展開向け活動開始

 同社は今年5月、印刷通販ビジネスの海外展開に向け、米国・カリフォルニア州に海外の子会社「Goshiki.LLC」を設立した。田仲社長は、この子会社設立を契機に印刷通販が進んでいる米国市場において、日本の印刷通販の成功モデルを展開し、米国の印刷通販ビジネスに挑戦していく方針だ。
 今後は、ホームページや会社案内などを整備し、カリフォルニアの印刷会社と提携することによって、米国市場のBtoBビジネスへ向けて日本の特殊加工などの技術を使った印刷物を販売していく予定。すでに田仲社長は、米国に移住し事業開始に向け、準備を進めている。
 「アジアで市場が伸びているとはいえ、印刷通販で世界を目指すには、アメリカとヨーロッパでのビジネスを学ばなければいけない。基本的には、これまで当社が行ってきた代理店型のビジネスモデルを米国で展開したいと考えている。具体的な活動は、今秋から開始することになるが、できるだけ早く提携先を見つけ、事業をスタートさせていきたい」(田仲社長)
 本格的な活動は、まだ先となるが、すでに田仲社長は米国在住の日本人向けに暑中見舞いハガキを日本で印刷して、国内の知人等に発送するサービスを実施している。