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トップ > 特集 > 印刷通販サービス「展開する」「利用する」:[本紙調べ]印刷通販利用実態アンケート調査:「印刷業」の利用率は50.3%に

 「印刷」の新たなビジネスモデルとして、急激な市場規模拡大が進む「印刷通販」。2013年度の印刷通販市場規模は前年度比11.1%増の543億9,000万円(矢野経済研究所調べ)とみられ、需要全体の先行きが不透明な印刷ビジネスにおいて、ある種の存在感を示している。その潜在需要は未だに大きいとされ、「低価格」「スピード感」に加え、「品質」「サポート」といった多面的な「価値」を訴求することで、今後も小ロットを中心とした印刷需要の開拓が進むと予想される。  一方、そのユーザー層にも変化が見られる。市場が形成された2000年代はデザイナーや個人が中心だったのに対し、近年では法人による利用も増え、支払い方法として今では当たり前となりつつある「売り掛け」対応が市場を押し上げているという側面もある。  なかでも、プロの印刷会社が自社のアウトソーシング先として印刷通販を利用するケースも増えている。本紙が今回Web上で行ったアンケート調査によると、印刷業による利用率は50.3%で、前年比15.1ポイント増加。「印刷会社の生産工程の一部を支える印刷通販」としての位置付けを強めるサービスも増えている。  そこで今回、印刷通販サービスを「展開する」「利用する」という2つの切り口で特集を企画。市場参入のための「ススメ」的な主体的内容と、印刷会社によるサービス利用を促す「プロの要求・需要を満たす印刷通販」という観点から「印刷通販の今」に迫る。

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[本紙調べ]印刷通販利用実態アンケート調査
「印刷業」の利用率は50.3%に拡大

選択ポイントは「価格」、支払いは「請求後払い」が増加

印刷ジャーナル 2014年7月15日号掲載

 需要全体の先行きが不透明な印刷ビジネスにおいて、ある種の存在感を示す「印刷通販」。その潜在需要は未だに大きいとされ、「低価格」「スピード感」に加え、「品質」「サポート」といった多面的な「価値」を訴求することで、今後も小ロットを中心とした印刷需要の開拓が進むと予想される。しかし、いま現在、どのように認知され、利用されているのか。
 そこで今回、昨年に引き続き、弊紙が運営する印刷業界ニュース配信サイト「PJ web news」上において、印刷通販の利用実態を探るべく、アンケート調査を実施した。調査期間は2014年6月25日〜7月4日、有効回答数は677件(本文中のカッコ内の%は前回の調査結果の数値)。

100人以上規模でも着実に利用率高まる

 まず、印刷通販サービスの利用経験に関する設問では、「利用したことがある」と回答したのが全体の48.8%で、昨年の35.6%を13.2ポイント上回る大きな伸びを示している。
 これを業種別の利用率で見ると、前回同様「デザイン」が61.4%(39.6%)で最も高く、「印刷関連業」の50.3%(35.2%)、「広告代理店」の40.7%(32.4%)と続き、いずれも大幅に増加。また、企業規模別の利用率で見ると、「10〜19人」が56.1%(43.1%)と最も多く、「1〜9人」が49.5%(45.0%)、「20〜49人」が40.8%(34.4%)、「50〜99人」が32.2%(25.7%)、「100人以上」が30.8%(前回23.6%)となっており、企業規模別のサンプル数にバラツキがあるため一概には言えないが、傾向として小規模事業所ほど印刷通販の利用率が高いことがうかがえる一方で、100人以上規模の事業所でも着実に利用率が高まっていることが分かる。

より柔軟な利用実態浮き彫りに

 「利用したことがある」と回答した中で、会員登録している印刷通販サイトの件数を尋ねたところ、「2〜5件」が45.8%(56.7%)と最も多く、「1件」が29.1%(33.3%)、「6件〜10件」が13.5%(7.2%)、「21件以上」が6.4%(0.9%)、「11〜20件」が5.2%(1.8%)となり、全体の7割が複数のサイトに登録し、さらに1社あたりの登録サイト数が増加傾向にあることが分かる。
 また、実際に発注している印刷通販サイトの数は、同じく「2〜5件」が47.4%(52.2%)とおよそ半数を占め、続いて「1件」が31.9%(43.2%)、「6件〜10件」が8.4%(2.7%)、「21件以上」が8.2%(0.6%)、「11〜20件」が4.1%(1.2%)で、この数字からも、より幅広いサービスを使い分ける傾向にあることが分かる。利用サイトのタイプとしては、「量販型」が50.5%と半数を占め、「特化型」が21.1%、「両方」が28.4%。
 また、1ヵ月あたりの印刷通販サービス利用頻度については、「1回程度」が47.5%(70.7%)とトップながらもその比率は大幅に低下。「2〜5回程度」が26.1%(23.5%)、「6〜10回程度」が13.3%(3.8%)、「11回以上」が13.1%(1.9%)となり、前回調査で浮き彫りとなった「困った時に印刷通販を利用する」という傾向よりも、より柔軟にサービスを利用していることがうかがえる。

サービス選択の決め手は「価格」。7割以上が「満足」

 印刷通販を選ぶポイント(複数回答)では、やはり「価格」が27.1%(30.0%)でトップとなった。続いて「品質」が22.0%(20.9%)、「納期(即日対応など)」が20.5%(19.6%)となっている。さらに「サポート」(7.8%)、「製品バリエーション」(6.9%)がともに6.5%、「加工バリエーション」が6.3%、「支払い方法のバリエーション」が3.6%(4.2%)、「キャンペーン」が2.1%(1.6%)、「サイトのユーザビリティ」が1.8%(6.2%)、「口コミ評価」が1.8%、「知名度」が1.2%、「生産工場の立地」が0.6%(1.6%)と続いている。
 一方、印刷通販に発注する印刷物(複数回答)については、やはり「チラシ.フライヤー」が30.9%(28.6%)で最も多く、「名刺.カード」が24.5%(24.9%)、「カタログ.パンフレット」が14.1%(14.6%)、「ポスター.POP」が13.6%(20.2%)、「冊子」が11.9%(11.7%)と続く。「その他」では、のぼり、看板、ノベルティグッズ、Tシャツ、箸袋、うちわなどの回答が多かった。
 また、1回当たりの平均発注金額では、「1万円〜5万円未満」が37.5%(37.3%)と最も多く、前回最も多かった「1万円未満」が28.2%(41.8%)に減少。あとは「5万円〜10万円未満」が13.1%(12.7%)、「10万円〜50万円未満」が12.1%(7.3%)、「50万円〜100万円未満」が6.1%(0.9%)で、前回の回答になかった「100万円以上」も3%あり、商材が広がっていることから、全体的な発注金額も増加傾向にあると言えるだろう。
 さらに、よく利用する支払い方法では、前回およそ半数を占めた「クレジットカード決済」がトップながらも29.8%(49.6%)と大幅に減少。一方で「請求後払い」が27.7%(16.6%)と10ポイント以上伸びている。その後、「銀行振込(前払い)」が21.2%(18.3%)、「商品代引」が17.0%(15.6%)と続く結果となった。前回の調査では、ほとんどの印刷通販サービスが決済代行などの外部サービスを活用して対応しているものの意外に少なかった「請求後払い」だが、ここにきて、独自サービスとして上限金額やシステム的な利便性を高めるサイトも出始めたことから利用率が高まっていることが推測される。
 また、印刷通販サービスの利用満足度を聞いたところ、「満足」が33.3%、「やや満足」が40.6%と7割以上がサービスに一定の満足を得ているようだ。「どちらでもない」が17.6%、「やや不満」が4.3%、「不満」が4.2%となっている。
 最後に、印刷通販サービスを利用する中でトラブルの経験があるか(複数回答)という設問では、「ある」と回答したのが6割を越えた。
 内訳は「品質面」が40.3%(28.1%)、「納期遅れ」が17.4%(11.4%)と増加している一方、「ない」と回答したのは37.6%(60.5%)と大幅に減少している。
「その他」では、「再入稿データではなく旧データで印刷された」「断裁ミス」といったケースも報告されている。