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トップ > 特集 > ダイレクトメール特集 2021:ベーヴェシステックジャパン、メールルームの全体最適化を提案

 (株)電通が発表した「2020年 日本の広告費」によると、プロモーションメディアに位置付けられるダイレクト・メール(DM)の広告費は3,290億円(前年比90.3%)で、その市場を「広告費」から見るかぎり、ここ数年はほぼ横ばいで推移してきたものの、2020年は4月の緊急事態宣言で実施予定案件の延期、中止が相次いだことで、一時、非常に厳しい状況に陥り、とくに来店促進タイプの送客型DMは外出自粛の影響も受けて大幅に減少した。7月以降はデジタル施策との併用も受け、回復傾向が見られる。一方で、デジタル印刷機の高度化にともなって最適なメッセージを個々人にカスタマイズすることが可能になったことを受け、より効果的でリッチなコンテンツが普及し、制作費などが増加傾向にあると考えられるため、「日本の広告費」でも数年前からその制作費関連部分を試算しているが、2020年のDM広告制作関連市場は1,053億円(前年比87.6%)にとどまり、データマーケティング関連のDM市場は新型コロナウイルス感染拡大の影響を大きく受けた形となった。このような中、印刷会社がデータ処理から印刷、宛名印字、折り加工や封入・封緘、さらに発送業務までをワンストップサービスとして提供するケースも多く見受けられ、ポスタル分野と印刷分野がますます近い関係になりつつある一方で、印刷会社が「メーリングサービスのプロ」「マーケティングのプロ」といった専門業者とコラボレーション関係を構築することも、ビジネスチャンスを大きく引き寄せる戦略のひとつと言える。

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ベーヴェシステックジャパン、封入・封緘、検査、仕分け、結束まで

メールルームの全体最適化を提案

印刷ジャーナル 2021年5月15日号掲載

 ベーヴェシステックは1950年代初頭、ドイツのアウグスブルクで設立したインサーター・システムメーカー。欧州を中心に、世界にユーザーを有するメーリング業界のトップブランドだ。日本法人のベーヴェシステックジャパン(株)(本社/東京都新宿区、小泉正裕社長)は1997年に設立し、印刷、通信機器、金融関係など、幅広い業界に製品を提供している。封入・封緘だけでなく、検査、仕分け、結束までのトータルソリューションによる全体最適化の提案で、ビジネスを展開している。

新谷本部長と小泉社長(右)

 ベーヴェシステック製品が日本市場に参入したのは1966年。半世紀以上前から、専門商社を介して様々な業界に製品を提供し、信頼と実績を築いてきた。現在は世界最高速クラスのインサーター・システムをはじめ、メールルーム全体をカバーする製品ラインアップを提供するほか、3年前からは物流市場にも参入。小泉社長は「物流システムを第2の柱として成長させ、将来的にはメーリングシステムと物流システムの2本柱を事業の要としていきたい」と話す。

 そんな同社は2014年、競争力を強化できる高速インサーター・システム「FusionCross(フュージョン・クロス)」を市場投入した。従来のインサーターでは複数台が必要であった機能を1台で実現できるハイスペックマシンだ。小泉社長は「メールルームを改善するだけではなく、抜本的に『改革』できるシステムとして多くのユーザーに評価されている」と話す。

 通常、機械設備を導入する場合、工場のスペースや動線などの都合に合わせることを第一に考えるのが普通だが、フュージョンの場合は「従来の動線を変更してでも、フュージョンを設置することを優先した動線を考えてくれる。ここが通常の機械設備導入とは違うところだ」(小泉社長)。
ユーザーにとってフュージョンの導入は、まさにメールルームの「改革」をかけた設備投資な訳である。次にその特長について説明していきたい。


ユニークな動作で安定した封入・封緘を実現


 一般的なインサーターは、その基本的な動作として、ラインで流れてくる封筒を一旦止めてから内容物を封入し、再び封筒をラインで流してから再び止めて封緘する。いわゆる「間欠動作」を繰り返している。これに対して、フュージョンでは封入動作を止めることなく、内容物と封筒の速度差を利用して封入するという非常にユニークな機構をとっている。「フロー原理」と名付けられた機構は、フュージョンだけのオンリーワンの機構である。

 東日本事業本部の新谷栄本部長は、「フロー原理」による封入動作のメリットについて「高速運転中でも、内容物と封筒の相対速度は非常にゆっくりで丁寧に封入できるため、大量に流しても安定した封入・封緘を実現でき、ジャムなども極端に少なくなる」と話す。トラブルにより生産ラインを止めることもないため、安定した品質の製品を高速に処理していくことが可能になる訳である。

 実際、フュージョンを導入したユーザーA社では「約1ヵ月半の繁忙期の中、残業を600時間削減できた」。また、B社ではこれまで昼勤と夜勤の二交代制をとっていたが、フュージョンの導入により「夜勤のシフトが不要になり、働き方改革につながった」と効果を話す。さらに、C社ではフュージョンを導入してから半年間は封入・封緘の後、念のため二次検査工程を設けていたが、「フュージョンで処理した製品は二次検査をしなくても大丈夫との結論に至った」と、現在は二次検査工程そのものを削減し、ドラスティックなワークフロー改革を実現できた例もある。

 まさに、フュージョンはメールルームを「改革」できるインサーター・システムであることが証明されている訳だが、同社は今回、フュージョンに3つのラインアップを開発、販売を開始した。「本来はdrupa2020で発表するはずの製品であった」(小泉社長)ようで、満を持しての市場投入となる。従来からのフュージョンをスタンダードモデル「フュージョン・クロス」として、上位モデル「フュージョン・スピード」、ライトモデルの「フュージョン・ライト」の3つのモデルを用意した。

 上位モデルの「フュージョン・スピード」は、定形封筒に特化することで、生産性を従来の2万4,000通/時から3万通/時に向上させている。また、スタンダードモデルの「フュージョン・クロス」は、定形封筒で2万4,000通/時、定形外封筒で1万6,000通/時。ライトモデルの「フュージョン・ライト」は、定形封筒で1万6,000通/時、定形外封筒で1万通/時のスペックとなる。3つのモデルの登場により、ユーザーは自社の使用頻度やレベルに合ったものを選ぶことができるようになった。

使用レベルに合わせて3つのバージョンを用意するFusion(写真はFusion-Speed)

 また、国内法人のベーヴェシステックジャパンでは、検査装置や手差し結束システムなどの周辺機も提供している。新谷本部長は「メールルームの全体最適化を提案していくことで差別化を図っていく」。封入・封緘だけでなく、その前後の設備も提案しながら、ユーザーのDMビジネスをサポートしていく。自社製品だけでなく、「お客様の既存設備の他社機にも接続できる設備も提案可能」(新谷本部長)とのことだ。

バルク分け用「手差し結束システム」


日本のユーザーにも安心の製品開発とサービスを提供


 日本の企業が海外メーカーの製品を導入する場合、どの業界でも共通の心配事であるのが、部品供給やメンテナンスなどのサービスである。その点、同社は東京本社、埼玉、名古屋、大阪にパーツセンターを備えており、常に部品を確保している。新谷本部長は「万が一の場合も迅速にパーツを提供できるので、安心していただきたい」と話す。

 そして、ベーヴェシステックの製品開発方針として特筆したいのが、日本独自の製品開発ニーズにも対応が可能であることだ。小泉社長は「ベーヴェシステック本社は、現地の意見を尊重した経営を行っている。このため、重ねて折るのではなく1枚1枚折るバラ折りなどの日本独特のニーズをインサータシステムに盛り込むことなども、本社の開発部門が吸い上げ、新しいユニットなどを開発してくれる。この点は他の海外メーカーとの大きな差別化であると考えている」。この「現地の意見を尊重する」という開発姿勢が、世界にユーザーを広げ、メーリング業界のトップブランドとして成長してきた要因の1つとなっていることは間違いない。

 今後の展開として小泉社長は「今回、3モデルを発表したが、それでもフュージョンはハイエンド機にカテゴライズされる。将来的にはさらに導入しやすいミドルレンジのインサーターを開発したい」。今後も世界のトップブランドとして勝ち残っていく考えだ。