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「進化する製本・後加工」特集

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全製工連、製本産業ビジョン2025|コンセプトは「再・創業」

印刷・出版に次ぐ第3の市場に挑戦〜木戸 敏雄 ビジョン策定委員長に聞く

印刷ジャーナル 2020年3月5日号掲載

 全日本製本工業組合連合会(田中真文会長)は本年1月、かねてから策定を進めてきた「製本産業ビジョン2025」を完成させた。同ビジョンは「再・創業(リスタート)」をコンセプトに掲げ、今後の製本業の生存戦略となる業態変革のヒントを提示している。「印刷・出版の2つの市場に依存するのではなく、第3の市場創りに挑戦していきたい」とする新製本産業ビジョン策定委員会の木戸敏雄委員長(東京都製本工業組合 京橋支部/(株)木戸製本所代表取締役)に聞いた。

木戸 委員長

----はじめに、今回の製本産業ビジョン2025のコンセプトに「再・創業」を掲げた理由についてお聞きしたい。

木戸 もはや、これまでと同じような製本加工業務を行うだけでは未来は創れない。大きく変化している外部環境に目を向けて、ほんの少しでも異なる視点で見つめ直し、製本ビジネスの改革に取り組んでいくことが必要であると考えている。
 これらを踏まえ、2025年に向けての新たなビジョンの鍵となる言葉は「再・創業」とすることにした。これは、製本以外の事業への進出(新・創業)ではなく、あくまでも製本ビジネスを主軸としながら、改めて自ら製本価値を問い直し、自らの強い意志のもと未来を創り出すことである。
 そして、製本価値とは「製本されたモノそのものの価値」と、「それが使われるコトの価値」という、他にない製本業だけが実現できる「モノとコトの価値」であり、それを正々堂々と伝え、より使う人に寄り添った製本ビジネスを追求することで人や社会やビジネスの中で、かけがえのない存在を目指していく。

製本産業ビジョン2025の提言書

----「再・創業」の実現に向けて「第3の市場創り」を掲げている。

木戸 製本業の顧客市場は極端に少なく、ほぼ80%を印刷業と出版業の2つの業界で占めている。そのような中、2025年に向けての製本業界の将来を考えたとき、これまでのように印刷業と出版業の2つの業界だけに依存していては生き残っていけない。
 もちろん、印刷業と出版業が我々にとって今後も重要な顧客であることは何ら変わらない。しかし、第3の市場創りへの取り組みは、我々がこれからも顧客や社会に何らかのお役に立ち、働く人々が誇りを持ち、そして幸せを感じるためには不可欠と考えている。

----「第3の市場」とは具体的にはどのような市場を指しているのか。

木戸 確かにハードルは高いし、それは分からない。第3の市場は今までとは顧客も異なり、提供方法も異なり、価格の設定方法も異なり、1件あたりの受注単価も異なるなど、何もかもが未体験ゾーンなのかも知れない。唯一、変わらないのは製本技術と届けるモノだけかも知れない。新たな商品を新たな顧客に売るという方法もあるかも知れないが、今ある技術を印刷・出版業以外の顧客に使ってもらえないか、もう一度、考えてみてもらいたい。
 なお、第3の市場としては、図書館市場、学校市場、市町村市場、個人市場などの可能性があると考えている。

----その第3の市場には、どのような戦略で取り組んでいくべきか。

木戸 重要なことは、各社が自社の周りを見直し、その可能性を少しでも感じ取ることだ。そして行動してみることだと思う。行動する際の重要なポイントとしては、まずインターネットやデジタルなどの新しい技術を活用することを視野に入れること。そして、一緒に行動する仲間を見つけることなどがある。とくに、一緒に行動する仲間=戦略的パートナーシップは何より心強い。1社で行動するより、2社、3社で行動する方が智恵が出るし、励みにもなる。

----最後にひと言。

木戸 顧客からの言い値で行う仕事は楽であるが、それでは生き残っていくことは難しい。これからは顧客に値段を決められるのではなく、自分たちで値段を決めていけるような業界を目指していきたい。

         ◇           ◇

 「製本産業ビジョン2025」の提言書は、A4判・144頁。1章「製本産業ビジョン2018を振り返る」(総括)/2章「製本業の現状と課題」/3章「2025年の日本と製本ビジネスを取り巻く環境」/4章「もし製本会社がなくなったら...」/5章「わが社の2025年は『再・創業』で創りあげる」/6章「第3の市場づくりへの取り組み」/7章「わが社の『再・創業』を描く」--の全7章の構成でまとめられている。