PJweb news

印刷産業のトレンドを捉える印刷業界専門紙【印刷ジャーナル】のニュース配信サイト:PJ web news|印刷時報株式会社

トップ > 特集 > インクジェット特集 2019:ダイコロ、Jet Press 750Sで「卒業アルバム」

インクジェットテクノロジーが印刷ビジネスにもたらす新たな事業領域とは。

特集一覧へ

ダイコロ、鮮やかな色調が求められる「卒業アルバム」で威力発揮

Jet Press 750S導入事例:個人向け新ビジネスも積極展開

印刷ジャーナル 2019年9月15日号掲載

【導入背景】小ロット対応と圧倒的な高画質を両立させる生産機として選択

松本 社長
​ ダイコロ(株)(大阪府枚方市招提田近2-8、松本秀作社長)は、1953年創業の総合印刷会社。学校の卒業アルバム製作を中心に、商業印刷やインターネット事業なども含めて幅広く展開している。創業当初からの主力である卒業アルバム事業では、現在約1,830館もの写真館と取引契約を結び、全国の幼稚園から大学まで約9,320校の卒業アルバムを製作。その数は年間約100万冊で、この分野ではトップクラスのシェアを誇る。卒業アルバムは人物写真が中心となるため、印刷にあたっては、画質や色調表現に高いクオリティが求められる。同社がコロタイプ印刷から事業をスタートしたのも、当時、コロタイプの技術が写真を印刷する最良の方法とされていたためだ。同社の品質重視の姿勢は、60年以上経った現在でもまったく変わりがない。ただ最近は、卒業アルバムも他の印刷物と同様、小ロット・多品種の傾向にあるという。

 「そのため当社は、早い時期からインクジェットデジタルプレスに注目していた。しかし画質や色調表現で納得できるデジタルプレスがなかった。そんな中で着目したのがJet Press 750Sである。事前のテスト出力で、その画質の素晴らしさに驚かされた。テスト出力をご覧いただいた写真館の方々や学校関係者からも非常に好評で、当社の営業も高く評価していたため、これなら卒業アルバムの厳しい品質要求に確実に応えられるだろうと、早速テスト導入することにした」(松本社長)

抜群の品質性能を活かし、導入直後から卒業アルバム製作でフル稼働

【導入理由】「このクオリティを待っていた」。オフセットを超える品質が決め手に

 2018年末、まだ正式発売前のJet Press 750Sをテスト導入。しかし同社は早々に実際のジョブで運用を開始した。

 「年明けから卒業アルバム製作の繁忙期に入ったことと、Jet Press 750Sが事前テストの段階から期待通りの色再現性・安定性を発揮していたことから、本番で問題なく使えるだろうと確信し、卒業アルバムの仕事で運用を開始した。私たちはまさにこのクオリティを待っていた」(松本社長)

河本 部長
​ 松本社長がこれほどまでに強調するJet Press 750Sの印刷品質の高さ。具体的なポイントについて、総合技術管理部で品質管理に携わる河本部長はこう説明する。

 「ひと言でいうと『抜け感』がいい。つまり、ハイライトからシャドーまでグレーバランスがまったく崩れないため、濁りが出ず、スッキリとした仕上がりが得られるということ」

 卒業アルバムでは、言うまでもなく、人物の肌の色や質感が重要になる。濁りのない鮮やかな色調と精緻な質感表現が必要だ。同社では、オフセット印刷においても早くからCMSに取り組み、ドットゲインを正確に合わせて、グレーバランスを最適に保つことで品質の向上を図ってきた。

 「オフセットの場合、ドットゲインを綺麗に揃えることが難しいが、Jet Press 750Sでは適切なプロファイルさえ選んでおけば、グレーがぶれることはない。オフセット以上に、シャープで濁り感のない絵が再現できるわけだ」(河本部長)

 さらに、印刷現場の視点では、Jet Press 750Sの安定性の高さも大きな決め手になったと河本部長は語る。

 「卒業アルバムの要求品質をオフセットでクリアするためには、機長はじめ、オペレーターの高い技術力が必要である。しかしJet Press 750Sは品質安定性が抜群に高いので、オペレーターの技量による品質のばらつきが起こらず、色調のチェックや微調整にかかる作業負荷も大幅に削減できる。導入を決めた背景には、こうした省力化効果に対する期待もあった」

【導入メリット】個人向け卒業アルバム製作などの新サービスが実現

 オフセットを凌駕する再現性と品質安定性、そして現場の作業負荷軽減といった効果は、テスト運用の段階から明確に実感できたと河本部長は語る。

 「オペレーターからは、Jet Press 750Sを一度使ったらオフセットには戻れないという声も聞いている(笑)。それだけ信頼できる印刷機だということ」

Jet Press 750Sの後方にはニスコーターをインライン接続

 一方、Jet Press 750Sの導入は、現場のメリットだけでなく、新しいビジネスの展開にもつながっている。そのひとつが、個人向けの卒業アルバム製作サービスだ。

 学校ではさまざまな行事が開催されるが、多くの場合、写真館のカメラマンが出向き、写真撮影を行っている。そのカット数は1行事で1,000枚を超えるという。この写真を使って卒業アルバムがつくられるが、使われる写真はごく一部。ほとんどの写真が眠ったままになる。そこで、松本社長は、卒業アルバムに載らない膨大な写真を活かせないかと考えた。すべての撮影データを整理分類し、インターネットからの注文に応じて特定の写真を選び出し、個人の卒業アルバムを作成するシステムを構築したのだ。

 「当社では8年前からインターネット事業を展開しているが、この個人向け卒業アルバムサービスもその一環である。いままでは学校という『面』でつながっていたが、今後は個人という『点』でつながっていくことが重要だと考えている。個人向けの卒業アルバム、写真集は好評で、部数は多くないものの、全体の数は着実に伸びている。このサービスは従来のオフセット印刷では実現できなかったことで、デジタルプレスによって初めて可能になった。Jet Press 750Sのおかげで、新たなビジネスチャンスが生まれている」(松本社長)

 同社は現在、オフセット印刷機とJet Press 750Sを、印刷部数によって使い分けており、商業印刷物や部数の多い卒業アルバムなどはオフセットで印刷している。しかし、河本部長は、Jet Press 750Sの活用範囲を徐々に拡げていきたいと語る。

 「Jet Press 750Sは生産性も非常に高いので、近い将来、卒業アルバムはすべてJet Press 750Sに切り替えてもいいのではないかと考えている。現在オフセット印刷機は1台につき3名の人員をつけているが、Jet Press 750Sは1名で運用している。しかも機械の信頼性が高く品質のばらつきもないため、オペレーターの作業負荷も軽減できるし、損紙もほとんど出ない。少部数の仕事が多くなっている中、Jet Press 750Sのメリットはますます大きくなっていくと思う」

本社外観

【今後の展開】卒業アルバムという日本の素晴らしい文化を海外にも

 ダイコロでは、日本での豊富な実績とパッケージ化した製作プロセスを活かし、海外でも卒業アルバムの提案を行っている。2018年には、台湾に現地法人を設立し、卒業アルバム製作を本格的にスタートさせた。松本社長自ら、学校にサンプルを持って提案に行ったところ、「仕上がりが大変美しい」「こんな卒業アルバムはいままで見たことがない」と好評で、大きな手応えを感じたという。

 「もともと外国には、卒業アルバムをつくって卒業生や保護者に配布するという習慣がない。私はこの素晴らしい日本の文化を海外に紹介し、広めたいと考えた。まず台湾からスタートしたが、この1年で約10校から注文をいただいている」(松本社長)

 海外の多くの学校は9月始まりのため、卒業アルバムの製作時期は日本と半年ずれることになる。繁忙期が重ならず、年間を通してコンスタントに卒業アルバムの仕事をこなしていくことができる。海外展開はその点も魅力だ。

 「今後は海外でも個人向けの卒業アルバムの受注が増えていくのではないかと期待している。そのためJet Press 750Sの活躍の舞台はさらに広がっていきそうだ」(松本社長)

 Jet Press 750Sは同社にとって、卒業アルバムに新たな付加価値をもたらすとともに、ビジネスの拡大を支える重要な戦力となっている。