PJweb news

印刷産業のトレンドを捉える印刷業界専門紙【印刷ジャーナル】のニュース配信サイト:PJ web news|印刷時報株式会社

トップ > 特集 > 検査関連機器特集 2018:ニヨド印刷「コレクトアイ・シス」導入

 「印刷物」を「工業製品」と捉える以上、その製造メーカーには「品質保証」というひとつの責任が生じる。そこには生産工程における機資材の見直しや工程間での工夫など、様々な手段が考えられるわけだが、最終手段はやはり生産物を「検査」「検品」するということになる。印刷業界においても多くの検査関連機器が市場投入されており、「不良品をどう処理するか」、また「不良の原因を如何に生産工程へとフィードバックするか」といったシステマチックな検査工程から生まれる高品質で安定した製品供給は、クライアントの信用を獲得する手段だけにとどまらず、多品種・小ロット・短納期化が進む中では品質管理の検証による作業の効率化、損紙低減によるコストダウンなど、経営的観点からも重要性を増している。そこで今回は「検査関連機器・システム」を取り上げる。

特集一覧へ

ニヨド印刷
非接触スキャナー入力印刷物検査機「コレクトアイ・シス」導入

スキャンスピードを評価〜検査品質の標準化と損紙削減目指す

印刷ジャーナル 2018年3月15日号掲載

御庄 社長
​ オリジナルノート、メモ、カレンダーなどの製造を得意とするニヨド印刷(株)(本社/高知県吾川郡いの町474-2、御庄康隆社長)は今年1月下旬、大ロット印刷物や高級な特殊紙の損紙削減と検査品質の標準化などを目的に、(株)ジーティービーの非接触スキャナー入力印刷物検査機「CorrectEye SIS(コレクトアイ・シス)」を導入した。客観的に品質を担保できる体制を整えるとともに、オペレーターの精神的な負担を軽減、また、インターネットにより新規受注が増える中、様々なデータにも安心して対応できるようになるなど、競争力の強化にもつながっている。

精神的負担軽減、様々なデータに安心して対応

 同社の設立は昭和27年。もともとは地域密着型の印刷会社として地元のスーパーや企業の折り込みチラシ、パンフレット、包装紙などを中心に取り扱っていたが、土佐和紙の町・いの町に立地するため紙関連企業とのつながりも深く、販促用ポケットティッシュが開発されて以来、それ向けの宣伝用ラベルほか、うちわやメモ、カレンダーなどの販促品も取り扱っている。
 また、昨今の小ロット化に対応して、今年からは、自社サイトとは別にオーダーメイドのオリジナルノート作成に特化した専用サイト「まるまるノート」を開設した。箔押しやクロス巻き、ミシン綴じなどの様々な加工を施したオリジナルノートは、これまで印刷会社が意識していなかった顧客層からの反応があるようで、御庄社長は「ゾゾタウンで服を買うような感覚で女性の個人客からの問い合わせが多く、開設2ヵ月で、すでに10件以上のお見積り依頼を頂いている。また、これによりオリジナル紙製品の製造が得意な印刷会社であることをアピールできたようで、昨今は大手が受けない小ロットのカレンダーやノート、メモの問い合わせが同業の印刷会社から入ることも増えてきている」と話す。

大ロット印刷物や高級特殊紙の損紙削減を目的に検査機導入を検討

川田 工務部長
​ 同社ではこれまで、RIP内の検査システムは導入したことはあったものの、印刷物の検査システムを導入した経験はなかったという。そんな同社が検査機導入を検討した最大の理由は、高級特殊紙の損紙削減によるコスト削減である。
 これについて川田雅樹工務部長は、「当社では高価な特殊紙を使用することも多く、刷り直しとなればあっという間に数十万円が飛んでしまうことになる」と説明する。このため、同社では刷り始めの1枚目から検査できるシステムを検討。コレクトアイ・シスは非接触のWET対応のため、印刷後すぐにチェックすることができ、さらにスキャニング時間は菊全サイズで約13秒、スキャン開始から終了まで約45秒で完了するため、検査工程が増えても全体的なメリットを考えると十分すぎるほどペイできると判断しての導入となったようだ。
 「当社は不特定多数のクライアントから様々な印刷物を受注しているため、紙や内容によって検査基準も変わる場合がある。このため、インライン検査ではなく最終的にオペレーターの目で確認できるコレクトアイ・シスが当社に最も適していた。またスキャンしてから画像ができるまでのスピードは1分ほどであると聞いていたが、実際はそれよりも短く、感動するほどのスピードであった。検査の工程が増えたとしても、オペレーターの作業負荷軽減を考えると、その導入効果は絶大だと期待している」(御庄社長)
 「エラーや間違いがあるのかないのか分からない版キズやブラ凹みを人が目で探して見ていくのは時間もかかるし、大変な作業である。その点、コレクトアイ・シスを使用すれば、マーキングされた箇所を確認するだけで良いため、その労力は比べものにならない」(川田工務部長)
今年1月末に導入した「CorrectEye SIS」
 また、同社が検査機の導入を検討したもう1つの目的は、検査品質の標準化を図ることであった。人の目による検査では、ベテランと若手オペレーターの検査品質にどうしてもバラツキが出てしまうが、これを標準化することで客観的に品質を担保できる体制を整えることにより、印刷会社としての競争力を高めていく考えだ。
 「これまではオペレーターの目だけに頼って検査を行っていたが、人の目ではとくに繁忙期などは集中力にも限界がある。また、『まるまるノート』など新しい事業も始まり、新しいクライアントとのお付き合いも増えていく中、中にはどうやって作成したのか分からないようなデータもある。モニター上では見えているが、本当に出力できるのか不安になるようなデータもあるが、そのようなデータであっても、コレクトアイ・シスを使えば、クライアント支給の出力見本さえあれば、照合して簡単に検査することができる」(川田工務部長)
 さらに、「これは副産物としての使い方であるが、コレクトアイ・シスは最大600dpiの解像度があるため、大判の製版スキャナーとしても十分に使用できる。つい最近も、廃業した印刷会社のクライアントから『データもフィルムもなく実物の包装紙しかないが、何とかして欲しい』との要望があり、コレクトアイ・シスでスキャニングしてデータ化して印刷させていただいた」と川田工務部長。導入からわずか1ヵ月であるが、同社では様々な効果の可能性を見出している。
オリジナルノートを作れる「まるまるノート」
アナログとデジタルの良さを融合させ、クライアントからより安心される印刷会社に

 同社ではこれまで、決まった顧客とのやり取りだけで、新規顧客の集客には注力していなかったが、インターネットにより昨今では日本全国から、とくに印刷関連企業からの受注が入ってくることが増えてきているという。
 御庄社長は、「今後、同業の印刷会社からさらに多くの仕事を受けていこうとした場合、プロの印刷会社を納得させるシステムが必要になる。工場見学なども必要になってくるかも知れない。その時の対外的なアピールとしてもコレクトアイ・シスは有力なツールとなってくるはずである。当社は印刷業界では当たり前となっているプロセスを省略せずに愚直にやっている。刷りの品質にも厳しく、アナログの印刷会社の良いところを持っている会社であると自負している。そんな当社に今回、新しくデジタルの検査システムが加わった。これによりクライアントから『ニヨド印刷に任せれば安心で間違いない』と評価される会社を目指したい」と抱負を話す。
 新事業をスタートさせ、さらなる躍進を図る同社の今後に注目したい。