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デジタル印刷特集 2016

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7割以上がデジタル印刷機を保有
インクジェット機、ハイブリッド機が増加

日印産連「印刷業界におけるデジタル印刷に関するアンケート調査 2015」

印刷ジャーナル 2016年3月25日号掲載

 (一社)日本印刷産業連合会のデジタルプレス推進協議会(相馬謙一座長)は、2010年から毎年実施している「印刷業界におけるデジタル印刷に関するアンケート調査 2015」の調査結果をこのほど発表した。今回の調査では、回答企業の約7割(108社)でデジタル印刷機を保有しているなど、前回調査よりも全般的に保有率が向上していることが判明した。

 今回の調査では、印刷設備を主力な生産設備としている印刷業界の8団体(印刷工業会、全日本印刷工業組合連合会、日本フォーム印刷工業連合会、日本グラフィックコミュニケーションズ工業組合連合会、日本グラフィックサービス工業会、全日本シール印刷協同組合連合会、全国グラビア協同組合連合会、全日本スクリーン・デジタル印刷協同組合連合会)から抽出した558社にアンケート用紙を郵送し、135社が回答している。
 それによると回答企業の80%(108社)で推計300台以上のデジタル印刷機を保有、1社平均2.8台となり最も台数の多い回答はトナー機9台、インクジェット機9台であった。
 デジタル印刷機保有率については、全国グラビア(27%)を除くと各団体からの回答企業の7割以上はデジタル印刷機を保有している。とくにJFLP(ラベル)、全国グラビア、JSPDA(スクリーン)の保有率が向上しており、これらの業界でもデジタル印刷の普及期に入ってきたと言える。
 また、デジタル印刷機の生産機としての利用率も高まっており、月間印刷ページ数(A4判面積当たり)が5万ページを超える回答が34件あり、デジタル印刷機保有社数(108社)の32%に当たる。業界別では、軟包装フィルムが多い全国グラビアが75%、業務用モノクロ物が多いジャグラは58%、大判出力が多いGCJは40%、印刷工業会と全印工連は各々30%など。今回のアンケートは大手のデータプリント企業の回答が少なく、前回調査では出力ページ数で筆頭であったフォーム工連で月間5万ページ以上を出力している回答は27%に留まっている。
 また今回の調査では、デジタル印刷機保有企業の分析は保有企業全体を「全デジタル」(108社)と、上位グループ(デジタル印刷月間5万ページ/A4面積当たりの回答34社)を「上位G」と略して比較検討している。
 まず、保有しているデジタル印刷機の方式(トナー、インクジェット、ハイブリッド)については、全体集計と上位Gとの比較では、全デジタルと上位Gは前回調査から、ともにトナー機の比率が約10ポイント減少し、インクジェット機とハイブリッド機がその分、増加している。
 次にデジタル印刷機の保有台数の合計では、全デジタルの回答からの推計で302台となり、1社平均は2.9台。内訳はトナー方式179台(59%)、インクジェット方式116台(39%)、ハイブリッド印刷7台(2%)となる。
 月間出力ページ数(A4換算)では、全デジタルのトナー方式による出力ページは、月間2,082万ページ(回答数55)で1社平均37万ページ、インクジェット方式は月間337万ページ(回答数26)で1社平均14万ページ、ハイブリッド印刷は651万ページ(回答数3)で1社平均217万ページとなる。
 印刷方式別のメディア形態や種類についての設問では、全デジタルのトナー方式でカット紙が85%に及び91%は紙メディアを使用している。
 インクジェット方式のデジタル印刷機は、高速の連帳機(輪転型)、ワイドフォーマットなどが存在し、最も多い回答がモノクロとカラーのロール紙で合わせると43%、メディアは用紙が7割、フィルムが3割となる。
 ハイブリッド方式はカット紙が6割、ロール紙が3割、シール・ラベルが14%あり、メディアについては100%用紙であった。
 また、今回はデジタル印刷ビジネスの大きさを有版印刷売上に占めるデジタル印刷売上の比率から類推。それによるとデジタル印刷売上が有版印刷売上を超えている(101%以上)という回答が全デジタルで回答社数の6%、上位Gには5%存在する。一方で未だに5%未満という微々たるビジネス展開に留まっているところが、全デジタルでは回答社数の47%、上位Gでは57%にも及ぶ結果となった。

デジタル印刷機の種類・保有台数

 印刷方式別の保有社数については、全デジタルと上位Gは前回調査から両者ともにトナー機の比率は10ポイントほど減少している。一方、インクジェット機とハイブリッド印刷がその分、増加している。
 月間に数万ページ程度を出力している全デジタルに属する中小印刷業にとって、利用しやすい中速高画質のトナータイプのカラー機が各社から投入されているが、大量印刷を可能にする輪転型の帳票機は高速、高画質のインクジェット機の開発が進み選択肢が増すなど、印刷企業にとってはニーズも合わせた機種選定が容易になってきたことが伺える。
 デジタル印刷機の保有台数の合計は、全デジタルの回答からの推計で302台となり、1社平均は2.9台となる。内訳はトナー方式179台(59%)、インクジェット方式116台(39%)、ハイブリッド印刷7台(2%)となる。
 上位Gは、それぞれ34社・124台、1社平均は3.6台であり、内訳はトナー方式79台(64%)、インクジェット方式40台(32%)、ハイブリッド印刷5台(4%)となっている。
【参考分析 大判インクジェット方式保有回答】

 インクジェット方式のデジタル印刷機は大判(ワイドフォーマット)出力機と輪転方式に大別される。主な用途は、前者は屋外広告や店舗内バナー広告物などの商業印刷分野、後者はデータプリントなどフォーム印刷分野であり、印刷業界においても異なる業態でそれぞれ使用されている。さらにインクジェット方式は、シール・ラベル向けなども開発されているなど、様々な機種が登場している。今回のアンケートでは、設問を簡略化したことから、インクジェット方式を細部まで分けた設問となっていないため詳細な分析ができないことから、参考分析として、全デジタル回答から「インクジェット/大判」に回答した18件について概説している。
 それによると大判印刷機以外にも、トナー方式やハイブリッド方式など各種のデジタル印刷機を設備している。印刷業界の企業では、大規模なサイン&ディスプレイ専業者のように数十台のワイドフォーマット機を設備しているところはあっても少数と考えられる。

印刷方式別の月間出力ページ数(A4換算)比較

 全デジタルでは、トナー方式の出力ページ数(A4換算)は月間2,082万ページ(回答55)で1社平均37万ページ、インクジェット方式は月間337万ページ(回答26)で1社平均12万ページ、ハイブリッド印刷は651万ページ(回答3)で1社平均217万ページとなる。
 上位Gでは、トナー方式の出力ページ数は月間2,026万ページ(回答23)で1社平均65万ページ、インクジェット方式は335万ページ(回答8)で1社平均28万ページ、ハイブリッド印刷は月間651万ページ(回答3)で1社平均217万ページとなる。
 全デジタルと上位Gで出力ページ数の差異から推計すると、トナー出力は月間56万ページを32社で分け合っていることになり、1社平均1.75万ページ、インクジェット出力は月間2万ページを18社で分け合い1社平均1,111ページとなる。当然ながら印刷している品目の違いもあるが、デジタル印刷ビジネスを、すでに軌道に乗せている企業と、これからビジネス化していくところの違いは大きい。

印刷方式別のメディア形態

 全デジタルは、カット紙の使用が84%に及ぶ(モノクロ37%、カラー47%)が、上位Gは78%(モノクロ37%、カラー41%)でカラーの少ない分の7ポイントがそのまま両者の差異となっている。トナー機においてもモノクロ出力は年々減少しており、カラー出力が増加している。この要因として、トナー機のカラー出力品質の向上が挙げられる。
 トナー方式では、紙メディアが通常であるが、ウェットトナー機ではフィルムメディアへの出力も盛んに行われており、フィルムの回答が1割前後あった。
 インクジェット方式のデジタル印刷機は高速の連帳機(輪転機)、ワイドフォーマットと呼ばれる大判出力機、厚みのあるパネルなどに印字できるフラットベッド機、シール・ラベル機など多彩な出力機が存在する。最も多い回答がモノクロとカラーのロール紙で合わせると43%で、続いて大判出力機(半裁以上)の25%であった。シール・ラベル用途も増えており、インクジェット方式の可能性が実機となり広がっていることがわかる。
 インクジェット方式のメディアは、用紙が7割強、フィルム3割弱で全デジタルも上位Gも大差はない。
 ハイブリッド方式では、100%紙メディアで、今後はグラビア印刷などフィルムメディア分野におけるハイブリッド印刷が行われることも予測される。

デジタル印刷売上と有版印刷売上との比較

 各社におけるデジタル印刷ビジネスの大きさを有版印刷売上に占めるデジタル印刷売上の比率から類推すると、デジタル印刷売上が有版印刷売上を超えてしまっている(101%以上)という回答が全デジタルで回答社数の6%、上位Gには5%存在する。
 一方で未だ5%未満という微々たるビジネス展開に留まっているところが、全デジタルでは回答社数の47%、上位Gでは57%にも及ぶ。
 この結果から、デジタル印刷機が主要な生産システムになっている企業と、いわゆる「ベビー印刷機」として脇役に留まっている企業の違いであり、デジタル印刷の大量生産を行っている上位Gは、同時に有版印刷のビジネスもきちんとこなしているということが伺える。
 また、デジタル印刷ビジネスの各社におけるビジネスの広がりを推計するために、全デジタル印刷売上に占めるデジタル印刷売上(後加工売上含む)の上位1位と2位の割合を示すと、売上上位1位と2位の仕事でデジタル印刷売上の50%以上を占めているという回答が9割近くになる。一方、上位Gでは7割強と少なく、それだけ多くの種類をこなしていることが判明し、デジタル印刷ビジネスが拡大しているとも言える。

印刷方式別の収益・稼働状況

 トナー機は、週5日の稼働が全デジタルでも上位Gでも6〜7割と多いが、インクジェット方式では全デジタルは44%、上位Gで28%と低い。ハイブリッドでも週5日の稼働は半分である。
 トナー機では、儲かるという回答は上位Gの半分以上、全デジタルでも4割を占める。これに+-0を加えると、8割またはそれ以上がデジタル印刷ビジネスを成立させており、ハイブリッド印刷も同様の傾向にある。
 一方、インクジェット機は儲からないが概ね3分の1あり、デジタル印刷ならではのビジネス展開を各社が模索することが求められる。
 売上1位のデジタル印刷物を全デジタルと上位Gで比べると、印刷品目については両者似たような構成であり、とくに1番目から5番目は同じ品目が並ぶ。
 全デジタルは、(1)商業印刷、(2)事務用印刷、(3)シール・ラベル、(4)ブックオンデマンド、(5)データプリントの順であり5品目の合計比率は全デジタルの77%に対し、上位Gはデータプリントが3番目に来るが、合計は79%とほぼ同じである。
 上位Gは商業印刷や事務用といった品目を手堅く抑えており、データプリント、ブックオンデマンドなどのデータ処理や管理能力が求められる品目も確実に抑えている。出版印刷はオフセット印刷においては商業印刷と並ぶ2大品目であるが、今回の調査では上位Gからなくなり、それに代わりブックオンデマンドが7〜8%を占めているが、フォトアルバムも上位Gから消えている。
 参考分析した全デジタル「インクジェット/大判」のグループは、1番目と2番目は商業印刷と事務用印刷であるが、3番目と4番目にスクリーン印刷、大判プリントが入っている。これらは、いずれも大サイズの印刷物であり、従来はスクリーン印刷で製作されていたものである。
 売上2位のデジタル印刷物を全デジタルと上位Gで比べると印刷品目について両者は少し異なる。全デジタルの上位5品目は、(1)事務用印刷、(2)商業印刷、(3)大判プリント、(4)ブックオンデマンド、(5)シール・ラベルで4分の3を占めるが、上位Gでは3番目にデータプリントを加えた6品目で4分の3となる。
 参考分析した上位G「インクジェット/大判」のグループは、1番目に大判プリントが入るが比率は29%で、次に商業印刷など通常の印刷品目が2番目以下に続いている。
売上高が大きいデジタル印刷物のビジネスモデル

 「売上高が1位」及び「売上高が2位」のデジタル印刷物ビジネスモデルの調査では、売上高1位も2位もほぼ同様の結果となった。特徴的なのは、いずれも(1)通常営業、(2)ワンストップサービス、また(3)と(4)がバリアブル印刷とBtoB型W2Pであり、この4項目で4分の3以上が占められている。
 デジタル印刷ビジネスでは、提案型営業できちんとしたソリューションを提示し、ワンストップサービスで一連の業務を請け負う。
 そしてデジタル印刷ならではのバリアブル機能を活かした内容とする。
 さらにビジネス継続のために顧客専用Web to Printで顧客との結びつきを強化するという姿が見えてくる。

デジタル印刷が有版印刷の売上を超える時期

 デジタル印刷の推進役は経営者であるという回答は、以前は上位Gの比率が高かったが、今回の調査では全デジタルが39%で上位Gを6ポイント引き離したことは大きな改善といえる。業界全体に印刷ビジネスを推進するためには、経営陣の強力な意見が重要であるとの認識が広がったことが推察できる。
 デジタル印刷の導入促進について、全デジタルでは「提案型営業、極小ロット対応、バリアブル出力、顧客啓発、多能工化、データ作成の自動化」の回答が6割をしめており、上位Gと同じような認識になってきた。デジタル印刷ビジネスの拡大に必要な営業活動やデジタルの特徴を活かした受注品目の重要性への理解度や取り組みが普及してきたと言える。
 「すでにデジタル印刷がオフセットなどの有版印刷の売上を超えてしまっている」という設問に5〜10年前との回答が4%、3〜5年前が2%、3年以内は5%となった。
 将来、超える時期の予測については3年以内に超えるとの回答が4%あり、3〜5年後が7%などあるが、「超えることはない」とのコメントが14%に及んでいる。