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ザイコンジャパン
両面・片面の最新デジタル印刷機を市場にラインアップ

国内の販売展開を加速 〜 今年中にショールームも開設へ

印刷ジャーナル 2015年3月25日号掲載

山部 社長
​ ラベル・パッケージ分野やドキュメント分野のデジタル印刷ソリューションを提供するザイコンの日本現地法人であるザイコンジャパン(株)(山部淳社長)は昨年12月、神田明神や湯島聖堂など、歴史的建造物が建ち並ぶ東京都文京区湯島に販売拠点を移し、活動を開始している。今回、同社の代表就任から1年が経過した山部社長に日本市場における今後の展開や、今年3月にベルギーで開催されたプライベートイベント「ザイコン・カフェ」の模様などについて伺った。


 「ザイコン・カフェ」は今年3月10日から12日までの3日間、ベルギー・アントワープで開催されたザイコン主催のデジタル印刷ソリューションのプライベートイベントである。今回は会期3日間で1,000名が来場している。その内訳としては、ブランドオーナーが100名、コンバーターが600名、パートナー企業が200名、そしてザイコンの社員が100名である。
 会場には、「Xeikon 9800」や「Xeikon CHEETAH(ザイコン チータ)」の新機種の他、「Xeikon 3500」や「Xeikon 3300」など、計6台のデジタル印刷機が展示され、ワインラベルやホールディングカートンなど、用途に応じた17種にわたる印刷実演でデジタル印刷機を活用した様々な高付加価値印刷の提案が行われた。
 このイベントの最大の魅力は、ザイコンのデジタル印刷機だけでなく、レーザーカットや箔押しなど後加工機関連のメーカーや印刷素材となるメディア関連のメーカーなども出展参加していること。これにより印刷から最終製品として完成するまでの一連の工程をすべて見学できる。
 また会期中は、それらパートナー企業によるテクニカルセミナーやユーザー各社によるザイコン製品を活用した技術カンファレンスなど、多彩なセミナーも併催され、こちらも各セッションとも盛況であった。

最新機種「Xeikon 9800」で印刷実演

 今回、注目を集めていたデジタル印刷機の1台は最新機種の「Xeikon 9800」であった。今年2月にスイスで開催された「フンケラー・イノベーションデイズ」において発表された機種であるが、ザイコンユーザーへの正式公開は今回が初めてとなる。
Xeikon 9800
 新機種の「Xeikon 9800」は、毎分最大21.5メートルの印刷速度による5/5シングルパス両面印刷を実現する最新モデル。印刷速度については、従来機種「Xeikon 8800」の毎分19.2mから21.5mに進化を遂げている。これは、高速印刷に対応できる新開発の「QA-CDトナー」の採用によって実現したもの。この「QA-CDトナー」により、生産性の向上と高品質化へのニーズに対し、これまで以上に貢献できる。
 用紙対応力も40g/平米の薄紙から300g/平米の厚紙にも問題なく印刷することが可能で、ザイコンのフロントエンド「ザイコンX-800」との組み合わせにより1,200×3,600dpiの印刷解像度を実現する。使用できる「QA-CDトナー」は、CMYK、レッド、グリーン、ブルー、エクストラマゼンタ、スーパーブラックのほか、白とクリアトナーも用意されており、高付加価値印刷をワンパスで行うことができる。
 この「Xeikon 9800」は、文書などのドキュメント印刷を高速かつ、薄紙に印刷するユーザー向けに開発されている。欧米市場では現在、薄紙によるインデックス印刷などが増加しており、今回のイベントでも薄紙によるドキュメント印刷に特化した印刷実演が披露されていた。
 
片面機の高速モデル「Xeikon CHEETAH」も公開

 最新機種のもう1台として紹介されたのはラベル・パッケージ分野向けのデジタル印刷機「Xeikon CHEETAH」だ。この「Xeikon CHEETAH」は、昨年9月に米国で開催された「ラベルエキスポ」で発表された片面印刷機の高速モデル。従来機(Xeikon 3300/3500)より60%以上の高速化を図り、毎分30mの印刷速度を実現している。印刷解像度は1,200dpiで、メディア幅は200から300mmまで対応可能となっている。トナーについては、低温定着型の「ICEトナー」を改良したものを採用することで高速化を実現している。会場では、透明フィルムに4色+白トナーの実演が披露され、高速印刷だけでなく、白トナーによる高精度な白打ち印刷が来場者の関心を集めていた。
Xeikon CHEETAH
 今回のビジネスカンファレンスで事例を発表したコンバーターの1社は、「デジタル印刷機でラベル印刷を行うということは、必ずしも小ロット対応が目的ではない」と説明していた。つまり中・大ロットでもデジタル印刷機の特性をフルに発揮させるだけでなく、さらに印刷物に高付加価値を付加する特殊な後加工を連携させることで、高い利益を創出できるビジネスが可能となるということ。今回のイベントでは、そういった印刷実演が各印刷機で行われており、来場者にデジタル印刷機の可能性を紹介できたはずだ。

成功の鍵は後加工との連携

 これまでザイコンは、デジタル印刷機の分野で両面機を主体に展開してきた。しかし2008年以降は、片面機もラインアップに追加し、その取り組みを強化している。この動向は日本についても同様であり、そのターゲット市場としては、ラベル・パッケージ印刷分野が中心となる。
 実際のユーザーの声を聞いてみると、日本市場では特色対応などの要望が多く、そのためデジタル印刷機の導入が進んでいないのが現状である。
 しかし欧米では、特色対応よりもデジタル印刷機の特性である小ロット対応やバリアブル印刷機能、そして今回のイベントでも提案されていた様々なメディアへの対応力と特殊加工による印刷物の高付加価値化が評価されている。つまり、従来の印刷方式をデジタルに置き換えるといった単純な移行ではなく、デジタル印刷による新たな製品開発が成功の鍵となっている。
 この流れを日本においても積極的に、そして日本市場に適した運用形態として提案していきたいと考えている。とくにドキュメント印刷と比べ、ラベル・パッケージ印刷は、フィニッシングラインがなければ、製品化できない印刷物が多い。今回のイベントでは、多くのパートナー企業の協力により、最終製品として完成するまでのすべての工程を見せることができたと思う。

デモ機を設置しショールームを新たに開設

 昨年12月に当社は、事業所を東京都文京区に移した。その目的の1つがショールームの開設である。
 これまで印刷テストを行う場合、ユーザーから印刷データを預かり、それをザイコン本社でテスト・検証を行ってきた。しかし、この方法では、時間がかかるだけでなく、色再現性や品質などを送られてきたテストサンプルでしか評価できない。そのため日本のユーザーが求める色などが忠実に再現できていないこともある。この問題を解決するには、やはり日本にもデモ機を設置し、いつでもテスト・検証が行える環境を構築する必要があった。
 ショールームに設置する印刷機は「Xeikon 3500」で、ロールtoロール、ロールto
シートの形状や薄紙から粘着紙、さらにフィルムなどに対する印刷など、ユーザーが求める印刷テストに対応していく。「Xeikon 3500」は片面機であるが、両面機については、国内導入ユーザーの協力を得ることで、同様の印刷テストを行える環境を整備していく。今年中には、デモ機を設置する予定で、今後はショールームとしても多くのユーザーの皆さんに活用してもらえればと考えている。今年、日本で開催される国際展示会「IGAS2015」では、このデモ機を会場で紹介していく。
 また倉庫機能も一部ではあるが、移管したことで消耗品や部品などの配送時間を短縮でき、よりタイムリーにユーザーに供給できる体制を構築していく。
Xeikon 9800ではドキュメント印刷を披露イベントでは多彩な印刷実演が行われた

ザイコンにとってアジアは重要なマーケット

 今年2月には、マレーシア・クアラルンプールに「ザイコン アジア・パシフィック」が設立され、日本に先立ちデモ機として「Xeikon 3300」が設置された。ザイコンは、アジア地域を成長市場と位置付けている。今回、マレーシアと日本にデモ機を設置するということは、ザイコンがアジア地域を今後の重要なマーケットとして考えている証拠といえる。その方針に応えるためにも販売展開を加速していく。
 また、今回のイベントとは趣旨が異なるが、ザイコンは今年1月にドイツ・フランクフルトで開催された世界最大のホームテキスタイルおよび業務用テキスタイルの国際見本市「ハイムテキスタイル2015」という展示会に出展し、インテリア商材の壁紙を当社製デジタル印刷機で印刷し、その品質を披露した。
 この展示会には、日本のインテリア業界関係者も多数来場していた。その多くの方は、デジタル印刷機による壁紙印刷について認識を持っていたと思う。しかし、そのすべてはインクジェット方式による印刷である。
 この展示会でザイコンは、唯一、電子写真方式による壁紙印刷を紹介した。高速出力による高品質な壁紙印刷は、多くの来場者から高い関心を集めていただけでなく、テキスタイル分野においても、ザイコンのデジタル印刷機が通用することを実証できた。