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1社平均保有台数は3.8台 〜 8団体143社が回答

日印産連「印刷業界におけるデジタル印刷に関するアンケート調査」実施

印刷ジャーナル 2015年3月25日号掲載

 (社)日本印刷産業連合会(日印産連、稲木歳明会長)の技術委員会・デジタルプレス推進協議会(相馬謙一座長)は、2010年から毎年実施している「印刷業界におけるデジタル印刷に関する調査アンケート」の調査結果をこのほど発表した。同調査は、印刷業界における生産機としてのデジタル印刷機の利用状況を調査し分析することで、利用率の向上へのヒントを提供していくことを目的に実施されている。今回、同調査結果の内容を抜粋して紹介する。


 今回のアンケート調査は、昨年9月に郵送で実施したもので、調査先は印刷設備を主力な生産設備としている印刷業界の8団体である印刷工業会、全日本印刷工業組合連合会、日本フォーム印刷工業連合会、日本グラフィックコミュニケーションズ工業組合連合会、(社)日本グラフィックサービス工業会、全日本シール印刷協同組合連合会、全国グラビア協同組合連合会、全日本スクリーン・デジタル印刷協同組合連合会から抽出した573社にアンケート用紙を郵送し、143社が回答している。
 調査結果では、回答企業の74%(106社)で推計400台のデジタル印刷機を保有。1社平均は3.8台となり、5台またはそれ以上を保有しているとの回答(4件)もあった。回答企業のデジタル印刷機保有率は、団体により96%から0%までと団体ごとの差異は大きいが、グラビア、スクリーンを除くと回答企業の3分の2以上はデジタル印刷機を保有している。
 アンケートの回収状況では、団体による関心の大きさや対応機種の選択肢の多少等から回収率は異なるが、以前に比べてグラビア印刷、スクリーン印刷からの回収率が向上している。また、デジタル印刷の利用率も高まっており、月間印刷ページ数(A4判面積当たり)が10万ページを超えている回答がデジタル印刷機を保有する企業106社の平均34%あった。業界別では、データプリントが主体のフォーム工連の64%を筆頭に、業務用モノクロ冊子が多いジャグラ58%、印刷工業会42%、全印工連32%、GCJ11%となる。
 以下、デジタル印刷機保有企業の分析は保有企業全体(106件)と上位グループ(デジタル印刷月間10万ページ/A4面積当たりの回答の36件、以下、上位G)をベストプラクティスとして比較検討を実施している。

フォーム印刷業界では主流のデジタル印刷

 デジタル印刷の売上高は、回答77社の合計で約145億円(1社平均約1.9億円)。上位Gに入っているのは、3団体(印刷工業会、全印工連、フォーム工連)だけで、フォーム工連からの回答合計が売上高の72%を占めている。さらに上位Gでは、同じく81%を占めていて、同団体所属の印刷会社が大量のデータプリントなど、デジタル印刷を大量受注していることがわかる。
 保有しているデジタル印刷機の種類(色数、サイズ、方式)についての全体集計と上位Gの比較では、色数(カラー、モノクロ)では上位Gのモノクロ比率が高いが、サイズ、方式(トナー方式とインクジェット方式)については保有機に大差はない。
 色数については、全体集計ではカラー機が173台(43%)でモノクロ機の71台(18%)の2.4倍であるが、上位Gは、カラー機91台(42%)、モノクロ機86台(40%)と、ほぼ同率でカラーの大量出力企業では、多くがモノクロで大量出力も行っていることを示している。
 前年調査と同様に個別にみると、モノクロとカラーの出力枚数の比率が数倍以上の差異がある企業が散見される(モノクロが圧倒的に多い、逆にカラーが圧倒的に多いなど)。デジタル印刷の受注生産品目は、印刷企業によっても異なるし、1社の受注品目も多岐にわたっていると考えられる。
 また、前年調査と比較して全体集計ではカラー機の台数が2ポイント増加し、モノクロ機が同率減少しているのに対して、上位Gは逆にモノクロ機が4ポイント増加し、カラー機が同率減少するなど、多少変動があるが大きな傾向に変化はない。
 保有するデジタル印刷機の最大出力サイズは、全体集計がA3サイズ137台(67%)、A4サイズ14台(7%)、A2/B2サイズ9台(4%)、その他のサイズ45台(22%)。上位Gでは、A3サイズ64台(70%)、A4サイズ4台(5%)、A2/B2サイズ3台(3%)、その他のサイズ20台(22%)と、全体集計と上位Gで大きな差はないが、しかし「A4〜A3〜A2〜他のサイズ」と、異なるサイズのデジタル印刷機を保有しているということは、多様な印刷品目の受注に対応していることがわかる。とくに大判のインクジェット印刷機などは、ワンストップサービスの展開に活用されていると思われる。

中小印刷会社で導入が進むトナー機

 印刷方式については、全体集計と上位Gは同じ傾向で、7割がトナー機、3割がインクジェット機である。前年調査では両者のトナー機の台数は10ポイント以上の差で上位Gが多くの台数を設置していたが、全体集計は台数が増加し、上位Gは減少したために両者の差がほとんどなくなっている。
 全体集計は、前年調査に比較してトナー機が4ポイント増加したのに対して上位Gは逆にトナー機は4ポイントの減少で、インクジェット機は同率増加している。理由としては、月間に数万ページ程度を出力している全体集計に属する中小印刷業にとって、利用しやすい中速高画質のトナータイプのカラー機がメーカー各社から投入され、選択肢が拡大してきたことによると考えられる。
 大量印刷を可能にする連帳機は、インクジェット機の選択肢が増加していることが、上位Gのインクジェット機へのシフトを加速している可能性がある。近年は枚葉機、連帳機ともに新製品の発表も多くなり、印刷企業にとっては、ニーズに合わせた機種選択が容易になってきたといえる。
 デジタル印刷機の方式別売上高の延べ数は、全体集計ではインクジェットと有版印刷(ビジネスフォーム印刷機やオフセット印刷機など)とのハイブリッド印刷の売上が19%で最多。トナーのハイブリッドを加えると36%で、カット紙はカラーとモノクロで31%、インクジェットのロール紙はカラーとモノクロで23%と、この3分野の合計で90%を占める。
 大判出力は1%と少ないが、インクジェット・ロール紙として回答されているケースもあるので、実態とは少し異なった結果になったように見える。
 上位Gでは、インクジェットと有版印刷(ビジネスフォーム印刷機やオフセット印刷機など)を組み合わせたハイブリッド印刷の売上が20%で最も多い。トナーのハイブリッドを加えて39%となり、全体集計より3ポイント多いが、カット紙はカラーとモノクロで28%と3ポイント少なく、インクジェットのロール紙はカラーとモノクロで24%と全体集計とほぼ同じで3分野合計の91%は全体集計より1ポイントだけ多い。大判出力は0%となってしまったが、同様にインクジェット・ロール紙として回答されているケースもあると考えている。

団体によって異なるデジタル印刷の運用形態

 業界団体別の方式別保有台数では、次のような結果となった。
<印刷工業会>
 全体集計と上位Gは、ほぼ同じ傾向で、カット紙(カラー、モノクロ)で7割、モノクロ連帳(ロール紙)が3割。
<全印工連>
 全体集計は96%がカット紙をトナー機で印刷(カラー、モノクロ)しているが、上位Gは52%がロール紙をインクジェット機で印刷し、45%は大判印刷をインクジェット機で行っている。同じ業界であっても全印工連は、多様なビジネスを展開している印刷企業が集結しているとも考えられる。
<日本フォーム工連>
 全体集計は、50%がハイブリッド印刷(トナー機またはインクジェット機によるハイブリッド)であり、31%がロール紙(連帳)をインクジェット機(カラーとモノクロ)またはトナー機(モノクロ)で印刷、この2分野で81%を占める。カット紙はカラー、モノクロを合わせても僅か11%であった。上位Gも51%がハイブリッド印刷であり、37%がロール紙(連帳)をインクジェット機(カラーとモノクロ)またはトナー機(モノクロ)で印刷、この2分野で88%に達する。トナー機のカット紙はカラー、モノクロを合わせても僅か9%で、同業界がデータプリントを主体としていることがよくわかる。
<ジャグラ>
 全体集計の98%、上位Gの97%がカット紙をトナー機で印刷(カラー、モノクロ)している。カラー、モノクロの割合も同様にほぼ半々で、ほとんど同じ業態の印刷企業からのアンケート回答になった結果であると推察できる。

8割以上がデジタル印刷ビジネスを成立

 稼働日数と収益性についての問いでは、上位Gの稼働日数が多いように思えるが、実際は5日稼働が57%、週に1〜3日稼働の回答が36%(前回45%)と、納期が定期的に集中する品目を受注している結果であると思われる。
 全体集計も5日稼働が50%、1〜3日稼働の回答が36%と、ほぼ同様の結果であった。
 また収益状況については、「儲かる」という回答は、上位Gの半分以上から、全体集計でも4割の回答があった。これに「±0」を加えると、8割または、それ以上がデジタル印刷ビジネスを成立させているといえる。
 「儲からない」との回答は、全体集計では21%、上位Gでも12%あり、前年調査より増加している。しかし、単純な極小ロット印刷であれば、最近は省エネタイプのUV乾燥付オフセット印刷機の普及にみられるように競争力を失いつつあり、何とかして、デジタル印刷ならではのビジネス展開を各社がさらに模索することが求められている。

デジタル印刷による売上品目に大差なし

 売上高1位のデジタル印刷物を全体集計と上位Gを比べると、印刷品目については両者似たような構成で、とくに1位から4位は同じ品目が並ぶ。商業印刷、事務用印刷、データプリント、ブックオンデマンドの順であるが、4品目の合計の比率は全体集計の65%に対して上位Gは71%と1割多い。
 上位Gは、商業や事務用といったオーソドックスな品目を手堅く抑えており、データプリント、ブックオンデマンドなどのデータ処理や管理能力が求められる品目も確実に抑さえている。出版印刷は、オフセット印刷においては商業印刷と並ぶ2大品目であるが、デジタル印刷で生産されるものは少量にとどまっている。
 本の形態で極小部数が求められるフォトアルバムは、全体集計と上位Gの両方で、出版に次ぐ品目になっている。出版印刷とフォトアルバムを合わせた比率は全体集計が9%、上位Gは12%と全体集計より3ポイント多い。逆にラベル印刷は、上位G(3%)が全体集計(8%)の半分以下の比率となっている。
 売上高2位のデジタル印刷物では、全体集計と上位Gの印刷品目は1位から4位は同じ品目が並ぶが順番が異なる。全体集計では商業印刷、事務用印刷、ブックオンデマンドの順で、売上高1位と同順であるが、上位Gはデータプリント、商業印刷、事務用印刷、ブックオンデマンドの順となる。4品目の合計の比率は全体集計・上位Gともに同率の77%であり、デジタル印刷の定番品目と言える。

重要なのはワンストップサービスの展開

 売上高が1位のデジタル印刷のビジネスモデルとしては、全体集計は、ワンストップサービス(21%)、通常営業(21%)、可変印刷(16%)、B2B型W2P(15%)、ハイブリッド印刷(7%)、在庫レス提案(7%)となる。前年調査と比較すると上位4品目は、順位だけが異なる。しかし前年になかったハイブリッド印刷が5位となり、BtoC型W2Pが8位と下げた。
 上位Gでは、ワンストップサービス(19%)、B2B型W2P(17%)、可変印刷(17%)、通常営業(17%)となり、前年は1位であった通常営業は順位を下げている。
 これらの4品目で、全体集計では売上の73%、上位Gは70%を占める。全体集計も上位Gも大差はないが、Web to Printのように仕組みで受注する方向が上位Gから見えてきた。
 売上高が2位のデジタル印刷のビジネスモデルでは、全体集計は、可変印刷(25%)、ワンストップサービス(21%)、通常営業(18%)、B2B型W2P(10%)、在庫レス提案(8%)となる。前年調査と比較すると可変印刷が最下位から1位に躍進し、通常営業も順位を上げたが、付加価値後加工や特色対応が順位を下げており、デジタル印刷ならではの方向での利用が増加していると考えられる。
 上位Gでも、可変印刷(28%)、ワンストップサービス(17%)、通常営業(17%)、B2B型W2P(11%)、となり全体集計と同様の傾向がみられる。

提案コンセプトは「売上向上」と「コストダウン」

 今回、新たに加えられた「デジタル印刷物における顧客への提案コンセプト(売上高1位)」では、デジタル印刷ビジネスで重要な提案コンセプトについて聞いている。提案内容を「売上アップ、集客アップ、4P提案などのマーケティング力向上への提案」と「コストダウンに関連するさまざまな提案」の2つに大別している。
 売上高1位の顧客への提案について、全体集計では売上向上系の提案が3割、コストダウン系が7割となった。上位Gもほぼ同様であるが、本来の顧客ニーズは両方にあると考えられるが、印刷企業1社で、この両方に取り組むだけでなく、業界団体の壁を越え、得意分野を持ち寄っての企業連携による総合的な提案があっても良いだろう。
 提案ともいえないのは低価格提案(値引き提案)であるが、全体集計16%、上位Gでも12%存在する。
 また、売上高2位の顧客への提案について、全体集計では、売上向上系の提案が3割、コストダウン系が7割で売上高1位とほぼ同様である。低価格提案についても、全体集計の18%、上位Gで12%存在する。
 デジタル印刷ビジネスの推進役についての問いでは、上位Gは経営者・役員の合計が41%であるのに対して、全体集計でも40%と同等になり、前年よりも改善の方向にある。業界全体に印刷ビジネスを推進するためには、経営陣の強力な意思が重要であるとの認識が広がったことが推察できる。
 デジタル印刷機の導入促進に必要なことについて、全体集計では「提案型営業、極小ロット対応、バリアブル出力、顧客啓発、多能工化、データ作成の自動化」の回答が6割を占めており、上位Gと同じような認識になってきた。デジタル印刷ビジネスの拡大に必要な営業活動やデジタルの特徴を生かした受注品目の重要性への理解度や取り組みが普及してきたと言える。