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 2014年度の国内市場規模が前年度比1.2%増の2,935億円と予測されるデジタル印刷分野。トラディショナルな印刷物の需要自体がシュリンクする中、「どこに正当な利益創出戦略の軸足を置くか」という業界共通のテーマに対し、常に最有力候補として名乗りをあげてきたのも、この分野である。  ここで注目すべきは「収益構造の変化」である。2012年、北米におけるデジタル印刷物の出荷量は15%増加。さらに今後15年間でその市場は倍増し、印刷物全体の25〜30%を占めると予測されている。  このデジタル印刷ビジネスが、クライアントに対して「発言力と価格交渉力」を生むだけでなく、新たな需要を創出できるとするならば、「ソリューションの時代」へと突入した日本の印刷ビジネスにおいても、その前を素通りするわけにはいかないはずである。これまで印刷業界の「変革」を支えてきたオフセット印刷機械メーカーが、このデジタル印刷を「印刷産業のイノベーション」と捉え、相次いで本格参入しているのも、その証拠のひとつである。  今回の特集では、日印産連が実施した「デジタル印刷に関するアンケート調査結果」やデジタル印刷分野における後加工の重要性を示唆したブライター・レイター 山下潤一郎氏による寄稿、さらに、デジタル印刷分野で新たな需要創出や利益率向上に成功している6社の事例などを通じて、デジタル印刷分野の現状把握と近未来展望に迫ってみる。

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138社で合計464台のデジタル印刷機を保有
回答企業のおよそ6割が「A3」機を設置

日本印刷産業連合会、デジタル印刷に関するアンケート調査を実施

印刷ジャーナル 2014年3月25日号掲載

 (社)日本印刷産業連合会(日印産連、足立直樹会長)のデジタルプレス推進協議会(相馬謙一座長)は、2010年から実施している「印刷業界におけるデジタル印刷に関する調査アンケート」の調査結果をこのほど発表した。同調査は、印刷業界における生産機としてのデジタル印刷機の利用状況を調査し分析することで、利用率の向上へのヒントを提供していくことを目的に実施されている。


 アンケートには、印刷工業会、全日本印刷工業組合連合会、日本フォーム印刷工業連合会、日本グラフィックサービス工業会、日本グラフィックコミュニケーションズ工業組合連合会、全日本シール印刷協同組合連合会、全国グラビア協同組合連合会、全日本スクリーン・デジタル印刷協同組合連合会の各団体の組合員企業から191社が回答。
 今回は、回答191社の内、モノクロ出力10万ページ/月(A4換算)以上、またはカラー出力5万ページ/月(A4換算)以上と月間出力ページ数が多い企業38社を「ベストプラクティス企業(以下、上位G)」として別集計し、比較考察している。
保有比率では印刷方式・サイズに大差なし

 デジタル印刷機(生産機)の保有台数・稼働状況については、回答企業191社の72%にあたる138社が合計464台のデジタル印刷機を保有し、1社平均の保有台数は3.4台となる。また5台以上または、それ以上保有という回答も4件あった。
 また上位Gの38社では、213台で1社平均5.6台を所有。上位Gの機械台数は、全体平均の1.6倍程度であるが、上位Gが大きなプリントボリュームを実現しているのは、生産能力の高い設備導入が要因と考えられる。
 印刷方式では、「トナー方式」が292台で全体の63%。「インクジェット方式」が160台で34%。上位Gでは、「トナー方式」が161台で75%。「インクジェット方式」が40台で19%となっている。
 サイズ別の保有台数では、「A3サイズ」が258台で全体の57%、「その他のサイズ」が125台で28%、「A4サイズ」が40台で9%。上位Gも同様に「A3サイズ」が120台で59%と最も多く、次に「その他のサイズ」が52台で25%となった。
 色数別の保有台数では、カラー機が307台で67%、モノクロ機が138台で30%。上位Gでは、カラー機が111台で52%、モノクロ機が90台で42%となった。
 この結果からデジタル印刷機の種類を比較すると全体と上位Gでは、印刷方式(トナー/インクジェット)、サイズともに大きな差がないことが判明した。また色数については、上位Gの方がモノクロ機の設置台数の比率が4割ほど多い結果となった。

商業印刷以外の用途でバラツキ
 
 デジタル印刷機で印刷した売上高1位の印刷品目の問いに対し、全体集計では、1位が「商業印刷」で25%、次いで「事務用印刷」が22%、「シール・ラベル印刷」が10%、「データプリント」9%となった。
 上位Gでは、「商業印刷」が28%、続いて「出版印刷」が18%、「その他」15%、「ブックオンデマンド」が13%と、全体、上位Gともに売上1位の印刷品目は商業印刷となっているが、2位以降は大きく異なっているこの結果から上位Gでは、
「個人別対応」テキストから「多品種大量」教材出版なども含めて、専用システム化、インライン化された生産システムによるビジネス展開が想定される。この回答からは、大きな設備投資を伴う場合もある一方、短期契約で応えざるを得ない苦しい側面もあることも推察される。
 また、デジタル印刷ビジネスの推進役についての問いに対し、全体集計では経営者が16%、役員クラスが14%、部課長クラスが12%。上位Gにおけるカラー機の推進役は「経営者」27%、「役員クラス」18%、「部課長クラス」15%で、モノクロ機でも同様に「経営者」26%、「役員クラス」17%、「部課長クラス」15%という結果となった。

異なる導入促進の条件

 デジタル印刷機導入促進に必要なことへの問いに対して全体集計では、「セキュリティで信頼度を上げる」10%、「その他」9%、「1人3台以上の出力機を稼働」7%、「優秀なIT協力先」7%、「画像品質」7%、「ワークフロー」5%となった。
 上位Gにおけるカラー機導入促進に必要なことでは、「提案型営業育成または人材確保」12%、「バリアブル出力対応力」12%、「ハイブリッド印刷」10%、「IT教育または人材確保」9%、「顧客の啓発」9%、「極小ロット対応」8%、「工程管理の自動化」7%であった。またモノクロ機導入促進に必要なことについては、「顧客の啓発」13%、「バリアブル出力対応力」12%、「提案型営業育成または人材確保」12%、「IT教育または人材確保」10%、「工程管理の自動化」8%、「ハイブリッド印刷」8%となった。
 これらの結果からデジタル印刷の推進役について大きく異なるのは、上位Gでは経営者・役員の合計が43〜45%であるのに対し、全体集計では30%と少なく、経営陣の強力な意志が重要であることが推察される。
 また、デジタル印刷の導入促進について、上位Gでは「顧客啓発、提案型営業、IT教育、バリアブル出力、ハイブリッド印刷、工程の自動化」の回答が6割を占める。全体集計では、「セキュリティ、1人3台稼働、IT協力先、画像品質、ワークフロー」など生産側の課題が多く挙げられる結果となった。