「いろいろな印刷を毎日お手ごろな価格で」をキャッチコピーに展開する「
ベストプリント」は、（株）五色（田仲達郎社長）が運営する印刷通販サイト。「実績が出なければやめる」との覚悟で田仲社長が3年前に立ち上げた同サイトは、「後払い方式」や「Tポイントシステム」導入など、従来にないサービスを他の印刷通販サイトに先駆けて取り入れたことが評判を呼び、開設から3年で年商6億円の印刷通販サイトとして成長を遂げている。
流通業界から転身した田仲社長が立ち上げた印刷通販サイト「ベストプリント」は、生産設備としてPOD機1台を有するものの、それ以外の印刷設備を持たない、いわゆる「販売代理店型印刷通販サイト」だ。しかし取り扱う印刷物は、他の量販型印刷通販サイトと同等の商品ラインアップとなっている。
同サイトの大きな特長は、田仲社長のアイディアから生まれる多彩なサービス提供にある。
「当社は、他の印刷通販サイトと違い、いわゆる『価格No1』戦略を取っていない。それをカバーするためにも『サービス』に重点を置き、これまで展開してきた」（田仲社長）
その1つが、これまで先払いシステムが当たり前であった決済システムに「後払い」、つまり請求書支払いをいち早く取り入れ、請求書による決済が主流である民間企業等から絶大な支持を得た。この取り組みは現在、多くの印刷通販サイトが導入しているが、そのパイオニアは同サイトである。
「後発組の当社が、このビジネスで成功するには、やはり他のサイトとは圧倒的に異なるメリット提供が必須であると考えた。法人顧客のほとんどが、その商取引において請求書という手段を用いているはず。そのシステムに目をつけた」（田仲社長）
サービス力で差別化を図ることを目的に社員教育も徹底して行ったという。特にカスタマーサービス部門では、電話対応の向上につとめてきた。電話対応時は、印刷に関する専門用語を使用しない、などの取り組みは注文時に多少の不安を抱える利用者に安心感を与えることとなり、その結果、同サイトが実施している顧客アンケートで、電話対応が評価されていることが確認できたという。
印刷会社や異業種とのコラボレーションを実現
設備産業である印刷業界は各社によって、自社の強みと弱みはそれぞれ異なる。またネット通販を利用するユーザーの要望も様々だ。
「現在は、自社設備内で生産できるサービスをユーザーに提供し、さらに説明をしたうえで購入してもらっているのが現状。ユーザー自身も都合に合わなければ、ネット検索で印刷会社を探している」（田仲社長）
この課題に対し、同サイトは、大規模な設備を持たないことをメリットとし、各印刷会社と提携を行い、ユーザーニーズに合った商品を提供している。例えば、梱包方法。「100枚結束で納品してもらいたい」というユーザーには、提携している印刷会社と相談を行い、できる限りユーザーニーズに応えた商品提供を実践している。また同サイトでは、小ロットの印刷物に特化した体制を構築し、他社にない商品展開で、様々なユーザーニーズに対応している。
独自サービスを積極的に展開
他の印刷会社との連携によるサービス提供では、すでに開始しているものもある。それは、札幌・東京・名古屋・京都・大阪の各都市で「チラシ・フライヤー印刷の当日お届け」だ。このサービスは、「ベストプリント」で受注した印刷物を各地域の印刷通販会社に発注するもの。このほかにも「未使用デザイン買取サービス」やDTPソフトに不慣れな利用者に対し、データ制作の段階から専門オペレーターがサポートを行う「データ制作サポート」など、常に新しいサービスを考案して提供している。
今年6月から開始した印刷物発注のデータ制作段階から支援する新サービス「データ制作サポート」は、イラストレーター等のDTPソフトに不慣れな利用者に対し、同サイトの専門オペレーターが印刷物のデータ制作から注文までのアドバイスを無償で行うもの。同サービスにより、利用者は専門的な知識がなくても気軽に印刷物を発注でき、またベストプリント側ではデータ入稿時に発生するデータ不備等を未然に防ぐことが可能となる。
また「未使用デザイン買取サービス」は、デザイナーが自身で制作したデザインやイラストを有料でベストプリントが買い取るサービス。これまでデザイナーは、プレゼンやクライアントからの依頼で数種類のデザインを制作し、その中から1案が選ばれ、その対価が支払われるが、それ以外の作品への対価の支払いはないのが現状。そこで同サイトでは、一定の基準と規約を設け、デザイナーから残念ながら不採用となった未使用のデザインやイラストを買い取り、そのデザインやイラストを発注者の要望により、リニューアルを施し、新たなデザイン・イラストとして販売している。
「当社では価格だけを追求するユーザーではなく、便利な印刷通販サイトを利用したい、という顧客獲得を目指し、現在も試行錯誤を重ねている」（田仲社長）
