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トップ > 特集 > 印刷会社の印刷通販サービス活用 2013:プリントビズ:「製造業の責任」を明確化し、プロの需要に応える

新たな印刷サービスとして市場拡大が進む「印刷通販」。一方で同サービスを外注先として利用する印刷企業も増加傾向にあり、本紙がWeb上で行ったアンケート調査によると、印刷業による利用率は35.2%にのぼり、その数はさらなる高まりが予測される。そこで今回、「印刷会社の印刷通販サービス活用」をテーマに、プロである印刷会社が印刷通販サービスを活用する際の注意点についてMCCの奥敦雄社長に話を聞くとともに、印刷通販利用実態アンケート調査結果を公開。 さらに、プロの要求・需要を満たす印刷通販サービスを展開する19サイト(関連含む)を、量販型・特化型に分けて紹介する。

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プリントビズ:
「製造業の責任」を明確化し、プロの需要に応える

[量販型印刷通販サイト]9月に全面リニューアル 〜 100項目以上の新機能盛り込む

印刷ジャーナル 2013年7月5日号掲載

東條社長
​ 「安心のインターネットプリンター」を標榜する「プリントビズ」は、大阪のクリエイティブ業界・印刷関連企業のための「安心の生産工場」として確固たる地盤を固める北東工業(株)(本社/大阪市中央区上町1-19-4、東條秀樹社長)が展開する総合店型印刷通販ブランドだ。「製造業としての責任」を明確にすることで、プロユーザーの要求に高い次元で応えている。そしてオープンから6年目を迎えた今年9月、100項目以上の改善点や新機能を盛り込んだサイトの全面リニューアルを実施する計画だ。


 分業化が進む大阪の市場で多店舗展開し、ピーク時はデザイン・印刷関連企業およそ3,000社以上に対し、プロのための共同生産工場としてサービスを提供してきた北東工業。そんな同社が全国規模のネット通販印刷への参入検討を始めたのはおよそ12年前のことだ。「Web営業所プロジェクト」と称して「大阪市内を網羅する営業店舗をWeb上にも開設する」というコンセプトのもとサイト開設準備を進め、2007年2月、印刷通販サイト「プリントビズ」をオープンした。
 「下請けのスーパー」「安心の生産工場」を標榜してきた同社は、「安定した高品質を、圧倒的な瞬発力で...」という基本理念のもと、常に最新鋭の生産技術・設備を取り入れることでプロの要求に高い次元で応えてきた。とくに、オンデマンド印刷の黎明期、その代名詞だった「E-Print」時代から、全国でもトップクラスの稼働率を誇り、デジタル印刷分野においては先駆者として知られる。CTP+オフセット印刷によるショートラン印刷においても、その圧倒的な瞬発力は多くが知るところだ。創業以来、これら多品種・小ロット・短納期印刷の生産体制強化に特化してきた同社にとって、印刷通販ビジネス参入における「ストレス」はほぼなかったという。
塚脇部長
​ このことについて東條社長は「当社はもともと大阪地区においてプロユーザーの要求に応えてきた設備、技術、人材がある。これをWebという新しい窓口を使って商圏を全国に広げただけ。また、対象顧客もデータ作成者の拡大にしたがって全業種に広がりつつあるだけなので、企業ドメインは何ら変わらない。印刷製造業としての品質保証、信頼感はそのままに、徐々に軸足を移しながら、地に足の着いた印刷通販サービスを展開している」と振り返る。

         ◇         ◇

 北東工業のコンセプトは明確だ。「プロユーザーのための生産工場」である。営業、制作、デザインといった川上部門を備えない代わりに、首から下の製造工程は多岐に亘って充実させ、「できないことの少ない印刷会社」としてワンストップサービスを実践してきた。そのため、プリントビズのユーザーも7割以上をプロユーザーが占めている。また、利用のきっかけは35%が口コミだ。取締役事業推進部長の塚脇一輝氏は、「製造業として培ってきた『北東イズム』を印刷通販サービスにも水平展開できている証である」と話す。
http://printbiz.jp/
​ 一方で、一般ユーザーの需要を無視しているわけではない。「データを作成できる一般企業なども、その経験を重ねることでプロユーザーになる。将来の潜在顧客を育てることも重要」と東條社長。同社では、サイト内にWeb to Printシステムを組み込み、新規顧客獲得やデータを作成できないユーザーの需要を取り込むほか、クリエイターとクライアントをダイレクトに引き合わせることを目的としたマッチングサービスサイト「Egoto.me」も設置。これら2段構えで、将来の潜在顧客にもアプローチしている。

         ◇         ◇

 現在、500〜600億円程度と推測される印刷通販市場。東條社長は「潜在市場はその10倍程度、およそ5,000億円になる」と語る。
 しかし、100%オーダーメイドの製造サービスとして考えたとき、1社300億円規模を超える成長はそう簡単ではない。となると、いずれ数十社の、本当に力がある印刷業者がこの市場をシェアすることになり、ユーザーはそれをニーズに応じて使い分ける。東條社長は、そのひとつに「地域性」という使い分けのポイントを挙げている。
 「発注はインターネット経由だが、納品には100%物流がからむ。顔が見え、もしもの時にもリカバリーが期待できる『距離感』もひとつの選択肢になる時代は必ず来る。『大阪や近畿で印刷通販を使うならプリントビズ』と顧客に選ばれるようになれば、実はそれだけでも相当な数字になる。これまで当社を育てていただいた大阪で、即日配達などの地域性の高いサービスを積極的に展開していくことで、業界へのご恩返しにもなる」

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 今年9月に予定している全面リニューアルでは、新機能のほとんどは、プロユーザー(BtoB)向けサービスの最適化である。その最たるものは、ユーザーのスキルなどに応じた導線設計の最適化だ。印刷通販の多くは、印刷を生業としない一般ユーザーに向けたサイト設計になりがちである。トラブルや誤解を招かないように丁寧な表現や手法を追求するからだ。しかし一方で、手慣れたユーザーにとってはかえって面倒なシステムにもなってしまう。
 例えば、同サイトが開設以来独自のサービスとして提供し、好評を得てきた「プレビュー承認」機能についても、すべてのユーザーが望んでいるわけではない。同社ではデータ入校後、業界最速の3時間以内を目安にデータチェックを終え、プレビュー承認を提示しているが、急ぎの仕事の場合でも、顧客はこのプレビュー承認の連絡と確認作業を待たなければならない。
 今回のリニューアルでは、ユーザーのスキルや経験値、発注商品に応じて、最適化された導線がいくつか用意され、ユーザーはそれを自由に選択できるようになる。
 また、「裏メニュー」のような機能も加わる。サイトにはないメニュー(用紙やサイズ等)だが、定期的に別途見積もりや来店で対応している商品について、ユーザーとの契約の中で、ユーザー限定商品としてサイトメニューに組み込むというもの。ログインするとそのユーザーだけに用意されたメニューが表示されるというイメージだ。
 さらにスマホにも対応する。進捗確認やプレビュー確認はもちろん、発注作業までを想定したものになるという。「スマホからのアクセスは15%程度まで増えており、今後は無視できないようになるだろう」(塚脇部長)
 もちろんユーザーにストレスを感じさせない、直感的な操作が可能なサイトのユーザビリティ向上についても大幅な改善が加えられる予定だ。

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 「市場から認められる印刷通販会社になるのはそう簡単ではない。そこに求められる要件は思いのほか多く、印刷物製造会社としての本物の強さが要求される。だからこそ、そこに北東工業、すなわちプリントビズの強みがある」(東條社長)
 同社は、ここ数年で4台の印刷機を新設。品質向上に向け、水なし印刷やLED-UV印刷といった新技術を積極的に導入したほか、ジャパンカラー認証ではすでに標準印刷認証、プルーフ運用認証を取得済みで、現在最上位のマッチング認証取得に取り組んでいる。さらなる質の向上に取り組み、製造業としての責任を全うしていく考えだ。