東京都製本工業組合(星野一男理事長)では、製本業界の立場から電子書籍への対応を検討していくための特別委員会を今年3月に正式に発足する。同委員会では、(株)国宝社・林庸光社長が、その舵取り役として委員長の就任が予定されている。そこで今回、林社長に、同委員会の活動計画などについて伺った。
---発足の背景
林 ご存知のように昨年は「電子書籍元年」といわれ、その象徴ともいえる「iPad」が、ついに日本でも発売された。その市場動向を敏感に察知し、すでに印刷・出版社では、ビジネスモデルとしての構築、運用が始まっている。我々、製本業界としても行動を起こさなければならない時期だと思う。
---委員会構成
林 現在、委員会メンバーの選出を進めており、そのメンバー構成としては、8名を予定している。具体的には、書籍部会、雑誌部会から各2名、また商印部会、紙製品部会、手帳部会からも各1名を選出し、さまざまな角度から独自の調査・分析を行っていく。
---活動期間
林 実際の活動計画は、これから議論を進め決定していくことになるが、「電子書籍」などのIT技術は、急速に進化を続けていくことを考えれば、1年または2年で、ある程度の方向性を示さなければならない、と考えている。
---活動の骨子
林 まずは報道発表をはじめとする電子書籍に関する情報収集を積極的に行っていく。業界だけでなく、一般社会おいても「電子書籍」という言葉だけが一人歩きし、実際のメリット、デメリットをしっかりと認識している人は現状、まだそれほど多くないと思う。その意味でも最新動向をつねに把握し、製本業界としての施策などを検討する土台づくりを実施していく。また委員会は毎月会議を行い、その内容については、機関誌等を通じて随時公開していく方針である。
---委員会の役割
林 電子書籍が今後、どれだけ市場に普及し、また製本業界にどのような影響をあたえるのかは正直わからない。しかし、あらゆる場面を想定し我々の業界としての選択肢を考えておく時期であり、その提案を行っていくことが、特別委員会の真の役目であると私は考えている。
---電子書籍と製本
林 私自身、世界規模の出版物である聖書は、なぜ電子書籍化されないのか、ということをまず問いたい。もちろんこの問いに対する明確な回答はない。しかし製本業界には、電子書籍にはない価値、つまり創意工夫を凝らした加工技術がある。これらの特性を活かし、電子書籍を敵視するのではなく、双方の特性を最大限に発揮することで、あらたな可能性が生まれると確信している。