業界の動向
ジョイス氏によると、紙の需要は主要国すべての地域で下落しており、その下落率は全世界でおよそ20%にも達している。また、米国の印刷生産量と出荷量は、1990年代のレベルまで下降しているという。一方、中国、インド、ブラジルを除くすべての主要経済国ではGDPがマイナス成長となっているが、2010年にはプラスに転じると予測されている。
広告費においてもすべての地域で下降しているものの、米国とカナダ以外は2010年には増加に転じる見込みで、米国とカナダの回復は2011年と予測される。
そんな中、急成長を遂げる広告メディアがインターネットである。
ジョイス氏は、インターネットメディアが、2015年には世界の広告費全体の25%を占めるまで成長するとの予測を示した上で、「厳しい経済環境下、現在でも予想以上にデジタルを活用したマーケティングへとシフトしている。印刷ビジネスに大きな影響を与えるこれらマーケティング・広告分野がデジタルへとシフトする中、コダックはそこにソリューションを提供していく」と述べた。
デジタル印刷のチャンス
不況=コストカット。その矛先は、真っ先にマーケティング部門に向けられる。その理由は、投資対効果が見えない部門だからだ。しかしジョイス氏は、「デジタル技術が投資対効果を見える化できる」とし、「印刷会社はそのことをもっとクライアントに示すべきだ」と指摘し、興味深い3つの世代別の傾向を示した。
まず、若い世代(18~34歳)は、eメールやオンラインよりもダイレクトメールによる情報の受け取りを好むということ。次ぎに、ベビーブーム世代の93%は、印刷物の記事を読んだ後、さらに詳しい情報を得るためにオンラインを使うということ。最後に、女性(25~44歳)の85%がダイレクトマーケティングを読むのに対し、eメールは53%であること。
ジョイス氏はこの傾向をもとに、紙によるワン・トゥ・ワンコミュニケーションがマルチメディアキャンペーンにおけるマーケティング投資対効果(ROMY)を向上させるという実証数字を示し、「この事実を印刷会社がもっと示すことで新しいビジネスモデルへと変革を遂げることができる」と訴えた。
コダックのソリューション
コダックは、電子写真方式及びインクジェットにおいて、信頼性、生産性、トータルコスト、品質といった広範囲にわたる「オフセットクラス」のソリューションを提供している。
とくに、これまでトランザクションビジネスの成長に焦点をあててきたインクジェット分野において、コダックは商業印刷におけるデジタル適合を加速させる。それが昨年のdrupa2008で発表された「Streamインクジェット技術」である。
ジョイス氏は、現在ベータテストを行なっているモノクロの「Streamコンセプトプリントヘッド」を今年中に市場投入するとともに、4色フルカラーの「Streamコンセプトプレス」を2010年1-3月に市場投入することを明らかにした。
Streamインクジェット技術のベースとなるのは、ノズルプレートに採用されているコダック独自のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)インク液滴形成技術。高解像度、より小さなインク液滴量、ストリーム技術の高速な液生成により、インクジェット技術でオフセットに匹敵する品質、生産性、コストを実現するというものだ。同技術では、インク表面の若干の温度変化によりインク液滴が高速で形成されるため、顔料インクでコート紙や各種の商業印刷用支持体上に印刷できる。
ジョイス氏は、詳細なスペックについては明らかにしなかったものの「印刷会社がマーケティングの世界へ参入することを強力に後押しするものだ」とした。
◇ ◇
最後にジョイス氏は、「大きな変化の中で印刷会社は、印刷物製造からデジタル技術を活用したマーケティングに対してのソリューション(アイデア)を提供できるパートナーとなる必要がある。その変革のためのソリューション(アイデア)を提供するのがコダックの使命だ」と締めくくった。