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トップ > 特集 > マルチカラー印刷特集:パントン・ヘキサクローム・コンソーシアム 価値観の相互認識が重要

 デジタル化の進展によりプロとアマの垣根がなくなる中、印刷業界が「プロ」としての役割を果たすためには、品質・作業性・高生産性への対応はもちろん、環境へも配慮した生産効率の確立、さらに差別化という観点からは、「付加価値創造」は不可欠なポイントになっている。そんな中、「多色化」への取り組みはますます進み、4色プラスαの提案は今では当り前となりつつある。6色のヘキサクロームや7色のHiFiカラーなど、広色域印刷の領域は今後さらに注目を高めていくだろう。そこで今回、マルチカラー印刷への取り組みにより、付加価値創造と価格競争からの脱却を図る企業を特集した。

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パントン・ヘキサクローム・コンソーシアム
価値観の相互認識が重要
6色=高い、ではなく6色=効果

印刷ジャーナル 2008年12月15日号掲載

増子理事長
​ ヘキサクローム印刷の普及と技術確立を目的に設立されたパントン・ヘキサクローム・コンソーシアム(以下PHC)が今年発足5年目を迎えた。PHCでは、デジカメ時代にフィットしたカラーシステムであるヘキサクローム印刷の市場性は大きく、さまざまなコンテンツの実験を繰り広げ、多くの成果やワークフローの確立を実践してきた。そこで今回、PHC・増子光晴理事長((株)ユーホウ・代表取締役社長)に発足から現在までの成果や今後の課題、目標などについて伺った。



――設立5周年を迎え、これまでの活動を振り返って。
 増子 最初はヘキサクローム印刷の啓蒙から始まった。今年11月には、ワークショップと展示会を開催し、多くの方にPHCの活動実績を披露できたと思う。また印刷サンプルを集めた展示会では、ここ数年でヘキサクローム印刷以外の高品位印刷が誕生している印刷業界においてヘキサクローム印刷で刷られた製品が数多く商品化されていることを実感した。
――普及にあたり4色と6色のコスト差を問題視するケースが多いが。
 増子 確かに4色と6色とのコスト差について言われる。そのコストについては、つねに普及の壁になっている。当然、4色印刷よりも使う色数が多くなるので、お客様に提供する価格も高くなる。しかしそれは印刷物の価値を高めているのであって、その価値観をお客様に納得してもらえるようにしていかなければ、単価による競争にしかならない。
――単にコスト面だけの比較は間違っているということですか。
 増子 私自身もお客様から4色から6色のヘキサクローム印刷に切り替えた場合、その価格は1.5倍位になるのか、と質問され私は、正直に倍になると答える。しかし倍の効果はでます、と説明している。またコスト面で言えば、逆の発想で発色が良いということで、どんな紙でも従来プロセス4色印刷に比べ、その表現力が高いということ。つまり使う用紙のランクを1つ下げても印刷表現力は、かなり高いので用紙コストを抑えることもできる。
 またインキについても、2色多い分、コストがかかるというのが一般的な意見かもしれないが、当社の事例でいえば、掛け合わせ総量が少なくなる。4色の場合、全てのインキを掛け合わせなければ出せない色をヘキサクローク印刷であれば、2色で再現できることもある。またインキ膜厚も通常の4色印刷よりも薄くでも色を出せるので、インキ使用量も抑えることができる。
――ヘキサクローム印刷のメリットとは。
 増子 当社で受注している、あるキャラクターのジグソーパズルの印刷物は、ヘキサクローム印刷に切り替えたときに、お客様も、その販売価格を上げている。結果、売上は、かなりアップした。つまり人間の視覚に対し、高品質というものが刺激されたことが要因と言える。これは市場がその価値を認めたからこそ価格が高くなっても一般消費者は、購入するということ当社の例で言えば、先程のキャラクター関連の商品や美術関係の書籍など、いわゆる一般消費者が高価でも求めている製品が順調に推移している。
 またヘキサクローム印刷に取り組むことによって、4色印刷のレベルも確実に上がっていると思う。お客様の要望で予算的に6色印刷できない場合、4色印刷となるが、その4色自体、ヘキサクローム印刷を実践している企業とそうでない企業には、その品質に差があると思う。
――現在、課題としていることは。
 増子 やはり普及の拡大が最大の課題といえる。印刷産業だけでなく世界全体に不況感が漂うなか、新しいものにトライするという考え方をする企業は少ないと思う。またパントン社がエックスライト社に吸収されたことで分版ソフトなどが手薄になってきている。その影響から訴求については、今後もかなり苦戦することが予想される。ですからコンソーシアムとして、そういったソフトウェア関係の諸問題にどのように対処していくかが大きな課題となる。
 今回のdrupaでもインクジェットをはじめとするデジタル印刷機の台頭が目についた。スピードやコスト、そして品質といった点でまだ課題が残されているが、技術の進歩により、オフセット印刷と肩を並べる時代がいずれ来ると私は考えている。そのとき印刷会社は、デジタル印刷では実現できない武器を持っていなければ、生き残れない。ヘキサクローム印刷は、その最大の武器であると私は確信している。
――今後の展開について
 増子 ヘキサクロームは難しい、あるいは高い、といった認識のハードルを取りたい。そのためにもヘキサクロームという言葉をあまり使いたくないと思っている。通常4色と同じように通常6色として定着するような位置付けにしたいと考えている。
【PHC会員】
 (株)アド・シーズ/(株)きもと/(株)研文社/(株)恒陽社/(株)小森コーポレーション/ザ・インクテック(株)/サカタインクス(株)/セイコーエプソン(株)/(株)ダイム/(株)第一印刷所/DIC(株)/高桑美術印刷(株)/(株)T&K TOKA/東京インキ(株)/(株)東光社/東洋インキ製造(株)/東レ(株)/富士フイルムグラフィックシステムズ(株)/(株)まんだら舎/女神インキ工業(株)/(株)メディアテクノロジージャパン/(株)ユーホウ/リョービ(株)/菱江産業(株)/(株)ユナイテッド・カラー・システムズ
(2008年10月20日現在、25社)