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ポリウレタン系ホットメルトによる無線綴じ製本「PUR製本」には数多くのメリットがある。しかし優れたPUR製本実現には、接着のり、オペレーター、設備、この3つに注意を向ける必要がある。今回、ミューラー・マルティニの情報冊子「今こそ、PUR製本-差別化のための新技術」よりその注意点を抜粋してみた。

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差別化のための新技術 いまこそPUR製本

印刷ジャーナル 2007年7月25日号掲載

 ポリウレタン系ホットメルトによる無線綴じ製本「PUR製本」には数多くのメリットがある。しかし優れたPUR製本実現には、接着のり、オペレーター、設備、この3つに注意を向ける必要がある。
 
PUR製本の魅力の数々

 PUR製本の最大の魅力、それは「こわれない」本を製作できるということ。
▽丈夫な本をつくる
 引張り強度は、どんなタイプの印刷用紙でもPURがホットメルトを上回っている。極端な話、本の背を内側にして折り、ズボンのポケットに押し込んだままハイキングしても、PUR製本であればびくともしないが、ホットメルトの場合はそうはいかない。
 PUR製本では、1枚1枚のページが紙の繊維レベルで接着剤にしっかり固定されているからである。さらに、PURは変質劣化する心配がない。したがってPURで綴じられた本は長持ちし、ほぼ「永遠」の命を得るのである。
▽温度変化に強い
 PUR製本は外気温度に影響されにくく、暑さであれ寒さであれ、温度変化による劣化が少ないという特性をもっている。日本の寒い冬、気温の下がった住宅のなかでも、あるいは温度も湿度も上昇する日本の夏に車のフロントガラスの前においても、PUR製本ならマイナス30度からプラス100度の範囲で書籍の形状と性能を維持する。
▽素材の選択肢が増える
 綴じる素材の種類が多いこともPURが従来のホットメルトよりも優れている点。これまでは紙に限定されていたが、PURはプラスチックフォイルにも使えるので、製品のデザインの可能性が広がり、付加価値を高めることができる。
▽広開性がよい
 当然ながら、PUR製本は広開性の良さも並外れている。ハンドフリーで読めることに、多くの読者が魅力を感じることだろう。
▽環境にやさしい
 PURであれば大豆油インキでフルブリード印刷した折丁を綴じることも可能。また、接着剤の溶解温度が低めなので、エネルギー消費量を節減する。書籍のライフサイクルが尽き、再生紙に生まれ変わるときも、紙と接着剤が完全に分離される。
 
いつまでも高品質

 機械設備は、そのライフサイクルを通して精密さを維持しなければならない。機械精度に誤差が大きいと、書籍の品質にたちまち悪影響が及ぶ。接着剤の膜にムラが出たり、背にまったく接着剤が塗布されないこともある。
▽切替え(アジロ綴じ/糸かがり←→PUR/ホットメルト無線綴じ)
 実質生産高に大きく貢献するのはマシーンの運転速度だけではない。小ロット化が進む昨今は切替えの回数が増え、切替え作業の所要時間も生産性を大きく左右する。
 アジロ綴じから無線綴じへ切替える場合にはとりわけ、すべての背加工ステーションのスイッチをオフまたはオンにして、前のポジションに正確に戻さなくてはならず、手間がかかる。そのためにも、正確で完全自動のシステムが不可欠になる。
▽あらゆるタイプの書籍を生産
 ミリング加工のブローシャ、レイフラットブローシャ、糸かがりした中本をPURで仕上げるソフトカバー書籍、そして日本で広く用いられているアジロ綴じなど、あらゆるタイプの書籍を生産できる設備機械を選ぶことが重要である。現在の仕事を制限しないことはもちろん、将来の仕事の幅も限定しない設備を選ぶことを真剣に考慮すべきである。市場に流通しているあらゆるタイプの書籍を生産できる体制を整え、幅広い選択肢を用意しておくことが重要である。
▽デュアルバインディング
 新たに購入するマシーンで最初からPURだけを使用することはあまりないが、PURの比率は徐々に増えていく。その結果、ホットメルトからPURへの切替え、逆にPURからホットメルトへの切替えの頻度が増えてくる。これにはデュアルバインディングの機能が重要となる。つまり、グルーポットの交換、次の生産に使用するポットの予熱、背加工ステーションの構成の切替え、これらが素早く完了しなければならないということである。
 
繊維を完全に露出させる背加工

 背加工はPUR製本の決め手となる工程である。本の背の正確な均一性、繊維の完全な露出ができていなければ、丈夫で長持ちする本にはならない。よく知られているように、PUR接着剤は紙の繊維で接着力を高めている。
 PURに適したミューラー・マルティニのハイエンドモデルは、4つの背加工ステーションが特長である。
 PURのみの製本には、ヘッドのセットアップを、ミリング、レベリング、ファイバーラファー、ループ式の横走ブラシの順番で行なうことを推奨している。ブラシのステーションは独立型なので、高さを他のヘッドとは別に調整でき、紙の繊維を最大限に露出させることができる。デュアルバインディングの場合には、ミリング、レベリングとファイバーラファーのコンビネーションツール、ノッチング(ガリ)、ブラシの順番が最適である。
 
ローラーグルーポットで本のタイプに応じてフレキシブルに

 工程にグルーローラーを装備するだけで、アジロ綴じや糸かがりも含め、あらゆるタイプの書籍を生産するための要件が整う。ノズルシステムは、本の背に接着剤を一定量塗布するミリング加工製品にとくに適している。とはいえ、アジロ綴じと糸かがりの書籍とでは、背に必要な接着剤の塗布量が違ってくる。また、本にかかる接着剤の圧力も微調整しなければならない。
 アジロ綴じの場合には、最も内側のページまで目に接着剤を埋めるため、目の部分に多めの接着剤が必要になる。さらに、目を埋めるための圧力を調整しなくてはならす、ノズルでは限界がある。しかし、日本市場向けに開発されたローラー付きのPURグルーポットなら違う。
 ミューラー・マルティニは、日本市場独特の要件を満たすトータルシステムを開発した。このグルーポットは次のような特徴を備えている。
▽高さ設定:ローラー高さとバックスピナーは、生産中でも0.1ミリ刻みで自動的に切り替わる。
▽PUR製本のためにミューラー・マルティニが開発した特徴として、ドクターブレードの開きもローカルのコントロールパネルから運転中に調節可能。
▽現在の最先端技術である接着長さ調整の自動化。
 これらの特徴により、運転中でもマシーンを止めずに接着剤の圧力を簡単に調整でき、しかもアジロの目に接着剤が正確に埋まる。接着剤の膜の厚みも調整可能である。
 
高さ・幅の設定は完全自動完全自動の高さ設定で素早い切替え

 ミューラー・マルティニは、グルーポットを完全自動にし、さらに背加工ステーションやプレスステーションなど、他のすべてのステーションにも同じアイデアを採用した。背の厚みだけでなく、ハングアウトに関係する設定もすべて自動化されている。高品質のPUR製本ではとくに小ロット化が進んでいるだけに、自動化は当然の流れである。
 無線綴じからアジロ綴じ/糸かがりへの切替え、またはその逆の切替えにはとくに、次のようなメリットがある。
▽マシーンが高度に自動化されているので、アジロ綴じまたは糸かがりの本を選択すると、使用しないステーションは自動的に下がる。オペレーターはステーションに触れる必要もない。
▽アジロ綴じ/糸かがりから無線綴じへの切替えでは、元の位置を探すという面倒な機械作業が不要になる。ボタンをいくつか押すだけで、すべてのステーションが瞬時に元の位置に戻る(リピートジョブに有効)。
したがって切替えは数分で完了。ミューラー・マルティニのブックメジャリングディバイス(オプション)を接続すれば、本のデータが正確に測定され、そのままマシーン本体へ送信され、正確なセットアップが短時間に完了する。マシーンから出てくる一部目から、ほぼ完成本となる。
 
デュアルバインディング

 同じラインでホットメルトとPURの両方を処理し、競争力を高めるためにも、デュアルバインディングに対応するマシーンが必要である。
 グルーポットは素早く交換できなくてはならない。
ミューラー・マルティニのハンディなグルーポットはトロリー式で引き出しやすいので、2分もかからずに交換できる。当然ながら、安全かつ正確にマシーンに挿入できるよう個々のパーツにガイドがついており、リピートジョブにはとくに便利である。
 新たにセットするホットメルトグルーポットは、中の接着剤がすでに溶融し、生産可能な状態になっていなくてはならない。マシーンの構成によっては、この予熱はマシーン内でできるので、省スペースになる。小型のマシーンの場合は、予熱は外付けの小さなキャビネットで行なわれる。
 背加工におけるホットメルト製本とPUR製本の違いも忘れてはならない。ミューラー・マルティニは多様な背加工ツールを用意している。
   ◇   ◇
 顧客とエンドユーザーに付加価値を提供することを考えるならば、PUR製本分野への参入を勧める。
 本はより強く丈夫になるので(引張り強度の増加、温度変化にたいする安定性、経年変化が少ない)クレームが減少するほか、PVCその他の特殊な材料も使えることでデザインの幅が広がる、環境にやさしい方法で生産できる、ハンドフリーで読めるレイフラット特性を読者に提供できるなど、PUR製本には数々の魅力がある。一言でいえば、エンドユーザーを満足させることができるのである。
(ミューラー・マルティニの情報冊子「今こそ、PUR製本-差別化のための新技術」より抜粋)