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トップ > 特集 > 進化する製本・後加工 2007:製本事業者50社にアンケート

印刷物制作の最終工程を担う「製本・後加工」。高付加価値印刷がより一層求められ、CIP4など印刷工程の全体最適化が業界のキーワードとなる中、ポストプレス分野が印刷物制作全体に果たす役割は今後ますます重要になってくるだろう。全日本印刷工業組合連合会は業態変革推進プラン第3ステージにおいて「ワンストップサービス」を指針に打ち出し、印刷各社はさらなる経営効率化と生産技術の高度化・省力化・環境対応など、変革の時代に即した企業戦略樹立に向けて努力を続けている。

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【トレンド】
製本事業者50社にアンケート実施(弊紙調べ)

印刷ジャーナル 2007年1月15日号掲載

 印刷物制作の最終工程を担う「製本・後加工」。高付加価値印刷がより一層求められ、CIP4など印刷工程の全体最適化が業界のキーワードとなる中、ポストプレス分野が印刷物制作全体に果たす役割は今後ますます重要になってくるだろう。全日本印刷工業組合連合会は業態変革推進プラン第3ステージにおいて「ワンストップサービス」を指針に打ち出し、印刷各社はさらなる経営効率化と生産技術の高度化・省力化・環境対応など、変革の時代に即した企業戦略樹立に向けて努力を続けている。
 そのような中、昨今では都市圏においても製本・後加工設備を内製化する印刷会社が一段と加速している。しかしメーカーの技術革新が進んでいるとはいえ、熟練技術と人手を要するこれら後工程を印刷会社が専業者レベルで行なうことは決して容易なことではなく、「お客様満足」をさらに高めていく商品を持続的に提供していくためにも、印刷業界と製本業界は今後さらにパートナーとしての絆を深めていく必要がありそうだ。
 そこで今回、「進化する製本・後加工特集」として、首都圏・関西圏に事業所を構える製本事業者にアンケートを行ない(従業員10名~50名規模を中心に50社)、製本業界の現状について調査した。 

印刷業界の課題が波及

 現在の景況感は、「やや悪い」と「かなり悪い」で72%を占めている。その理由は「受注価格の下落」が最も多い40%。次いで「受注量の減少」の36%となっている。「適正な価格ではない」、「部数が減少しても価格は変わらない」など、印刷業界の課題がそのまま製本業界へ波及している。その他、「学生数の減少」や「他都府県への仕事の流出」による受注量減少など、業態変革推進プランでも示唆されている少子化や競争相手の変化による受注量減少の問題も現実に起きている。
 一方、「やや良い」と回答した9%の企業は、「納期厳守」、「品質管理の敢行」、「設備改善」を徹底している企業が多かった。特別なノウハウを必要とする差別化戦略を行なっている訳ではないが、厳密な工程別チェックやNoミスによる差別化、さらに作業環境改善策として立体工場から平面工場へ移設を検討するなど、「取引先の要望に応える」ことを第一目的とする回答が目立った。印刷会社同様、「お客様満足」の確立が、取引先との強い信頼関係を構築する要因の1つとなっているようだ。
 
「納期」「品質」「コスト削減」に努力

 取引先からの要望が「短納期」(30%)、「高品質」(同)、「低価格」(同)で90%を占める中、製本各社が同業他社と差別化を図っている点についても、「お客様なのである程度の無理強いは仕方がない」、「乱丁防止装置など検査機を導入している」など、納期・品質による差別化が70%を占めた。しかし、「企画提案」(15%)、「付加価値サービス」(15%)などのソフト面で差別化戦略している製本事業者もあり、印刷物の内容如何で最適なパートナーを選定することが重要なポイントになる。
 また当然、印刷会社から要求されていると思われる環境対応にチェックしている企業は2%のみ。それだけ納期・品質・価格への要求が格段に大きい表われとも言える。
 そのような中、製本・後加工機械メーカーへの開発要望については「省力化機械」の36%に次いで、「検査機能強化」が27%、「生産性向上」と「高品質機械」が共に18%となり、いずれも納期短縮・品質向上・コスト削減に貢献する製品の開発を求める意見が大多数を占めた。印刷会社が製本・後加工を内製化する場合、CIP4対応は大前提となるが、製本事業者でこの項目にチェックを入れた企業はなかった。
 
過度の納期集中は品質事故に~「製本をもっと知って欲しい」との声も

 印刷会社に対する要望についての回答では、「価格の是正」が最も多く、47%を占めた。次いで「納期面」に対する要望が29%、「品質面」に対する要望が18%。「もう少し良識のある価格をお願いしたい」など価格是正を訴える意見が多い一方、「過度の集中は品質事故につながる」、「印刷会社の方ももっと製本のことを知って欲しい」と、安定した品質を保つためにも、ある程度の納期調整は必要という声もあった。外注先である製本・加工業者にただ単に無理難題を押し付けるのではなく、製本の知識を身に付ければ、お互いを知れば、結果的に「お客様満足を高める」仕事に結びついていくだろう。
 某製本メーカーは、「昨今は地方だけでなく、都市圏でも印刷会社による製本・後加工の内製化が一段と進んでいる。中には印刷会社への納入がほとんどという製本機械メーカーもあるくらいだ。しかし印刷会社が製本工程を内製化した場合、技術的にはまだまだ専業者に追いつけていない」と指摘している。ちなみに88%が多少なりとも印刷会社の内製化による影響を受けていると回答している。
 ワンストップサービスの考え方の基本は、あくまでも「お客様の役に立つこと」である。ワンストップサービス=製本・後加工工程の内製化だけではなく、もう一度立ち止どまり、自社と取引先の特長を再確認した上で前へ進むことがワンストップサービス実現に向けての近道となる。