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2005年2月、京都議定書が発効となった。地球温暖化の原因とされる温室効果ガスの一種、二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素、HFCS、PFCS、六フッ化硫黄を、先進国において削減していこうというもので、削減率は1990年を基準として国別に定め、共に一定期間内に目標の達成を目指す国際的な約束事である。

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【先進企業ルポ】
富沢印刷
「環境対応」掲げ、新市場開拓

印刷ジャーナル 2007年7月5日号掲載

左から富沢営業部長、富沢社長、秋山常務 南千住駅から歩いておよそ四分。東京の下町にひときわ目を引くシンプルモダンなデザインの社屋を構える富沢印刷(株)(東京都荒川区南千住、富沢勝利社長)は今年2月、アグフア製サーマルCTP「アセントII」+ケミカルレスプレート「アズーラ」を導入し、印刷ビジネスにおける環境対応の実践を開始した。感性と技術を追求することで成長を遂げてきた同社が次のステップとして選んだ「環境対応」。クリオネマークのゴールドプラス認証を目指すとともに、新しい市場開拓に乗り出す。
 富沢社長が兄とともに立ち上げ、丹精込めて築き上げてきたこの会社も今年で47年目を迎える。創業当時は、はがき、封筒をはじめ、名刺や事務用伝票類などを主としていたが、現在では、カタログやパンフレット、ポスターをはじめとする商業印刷中心の業態へとシフトしており、その歴史には着実に業態変革を重ねてきた軌跡が刻まれている。
 オフセットへの転換に伴い、DTP設備を導入し、版下からデザイン制作までを手掛けるようになり、「印刷」を単に「刷る」という製造工程ではなく、「顧客の広報・コミュニケーション活動全般を支える業務」として捉えることで顧客の厚い信頼を獲得。その信頼を確実なものにするため、2000年に4色機1号機導入、2004年に2号機を増設し、フルカラー化を一気に推し進めた。
省スペース設計のアセントII 2色機時代にすでにDTP環境を整えていた同社だが、製版・刷版工程は100%外注。4色機導入以来、カラー化を一つの柱とした営業展開を推し進めた結果、その外注費は製版・刷版工程の内製化を視野に入れざるをえないまでに増えた。そこで同社は昨年、必然的にCTP導入の検討に入る。機種選択のポイントは「環境」と「省スペース」だった。
 「印刷ビジネスにおいて『環境対応』は避けて通れない課題だという認識は以前からあり、少しずつ準備はしてきた。そして製版・刷版設備をもたない当社にとって未知の世界でもあるCTP導入を、環境対応を一気に加速させるきっかけにしたいと考えた」とする富沢社長。「環境対応」は、常に先行して取り組まないと追いつけなくなるというのが富沢社長の考えだ。
 また省スペース設計も東京の下町で生産活動を営む会社として必須条件であったという。1センチでも設備は小さい方が良いわけだ。
 結果、これら条件を満たしたのが、アグフア製サーマルCTP「アセントII」+ケミカルレスプレート「アズーラ」であった。
 製版・刷版設備を持たない同社では、当然、CTPベンダーとの付き合いはなかった。このことについて同社常務取締役の秋山昌彦氏は「かえって平等な立場で機種の検証ができたのではないだろうか。『既存の設備で使えるものは流用しよう』という変な束縛もなく、自社にあった設備を冷静に判断できた」と振り返る。
 アセントII導入は今年2月。アイドリング期間は非常に短く、想像以上にスムースに進み、即実運用に入ったという。「アグフアさんに頼んで本当によかった」と改めてそんな心境を語ってくれた富沢社長は、環境と品質の両面からアズーラを高く評価する。
 「自動現像機を設備し、廃液を処理する...。そんなことはもう時代に合わない」と考える富沢社長。メンテナンス部分では、CTP導入がはじめての同社にとって比較するものがないため、あまり実感はない。しかし、別の会社でCTPの運用に携わったことのある現在のオペレータは「非常に楽だ」と評価している。
 また、検版性も選択理由の一つ。「カラー物はインクジェット出力で確認すればいいが、単色もしくは出力の必要がないようなものは、やはり刷版上で確認したい。その点、アズーラは検版性にも優れ、作業効率を落とすことなく安心して作業を進められる」(秋山常務)
 一方、XMスクリーニング「スブリマ」も機種選択に大きな影響を与えたという。同社では「見た目の差別化」としてクライアントに訴求しやすい高精細印刷という位置付けと、「インキ量削減=環境対応」という位置付けで、スブリマによる240線印刷を「富沢の標準品質」としてアピールしている。
 同社では美容関係のクライアントが多く、高精細印刷は大きな武器になっている。とくに髪の毛などの微細な再現性で顧客から喜ばれ、校正の回数も飛躍的に削減できたという。この中には、毛染めのカラーチャートなどもあり、毛束が数十種類並んでいるようなシビアな仕事でも、大きな成果をあげている。
 現在同社では、環境にやさしい生産活動に取り組む印刷業界のシンボル「環境保護印刷マーク(クリオネマーク)」の取得に向け、準備を進めている。湿し水のノンアルコール化、大豆油インキ使用など、以前から着実に環境対応を進めており、現在、「シルバー」認証ステータス登録基準はすでにクリアしているが、アズーラの採用、そしてスブリマによる高精細印刷に加え、大豆油インキからノンVOCインキへ、湿し水ろ過装置設置を実現することで最高ステータス「ゴールドプラス」の認証に挑戦している。
 現在のCTP化率はおよそ70%。アナログの在版に関しては出来るだけ早期にデジタル化、CTP化したいとしており、当初想定していた1,200版/月を目標に営業展開を図っている。それが「環境保全」に繋がる企業活動であるからだ。
 今後の課題について、同社の富沢隆久営業部長は、「既存のクライアントの中では、まだまだ環境への関心、こだわりをもつ企業は少ないと感じている。今後、クリオネマークという一つの証を手に入れ、新しいマーケットをターゲットに営業展開を図りたい」と意欲を示している。