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トップ > 特集 > 全印工連、業態変革推進プラン第3ステージ 新創業へ:全印工連、業態変革推進プラン第3ステージ発表

全日本印刷工業組合連合会(浅野健会長)は10月20日、山口県下関市で開催された「全日本印刷フォーラム2006やまぐち大会」の記念シンポジウムで、「業態変革推進プラン-全印工連2008計画」の第3ステージを発表した。第1ステージ「業態変革ミニマム」から始まったこの中期業界計画は、第2ステージ「原点回帰」を経て、今回の第3ステージでは「新創業」という概念が持ち込まれた。そのポイントとなるのが、「顧客が基準」「コラボレーション」「創業者精神」の3要素。これらを統合して、活動テーマを「ワンストップサービス」という言葉に集約している。また第2ステージで提供された「7keys」に続き、新創業へのアクションプランとして5つの扉「5Doors」と題した33のチェック項目が示されている。

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全印工連、業態変革推進プラン第3ステージ発表
新創業は「ワンストップサービス」
「7Keys」から「5Doors」へ、33のチェック項目を提示

印刷ジャーナル 2006年10月掲載

顧客のことを真剣に考える企業体質
 全ての事業の使命は「顧客創造とイノベーション」にある。その原点は「顧客満足」に他ならない。新創業へのアクションプランの第一は顧客のことを真剣に考える営業姿勢である。
 既存顧客や新規顧客の経営課題に対し、解決策を提案できる力量を印刷業が持たなければ、競争要因は価格しかなくなる。このためには、得意先を誰よりも好きになり、市場と顧客を誰よりもよく知ろうと研究することで企画提案力を高め、顧客の成長とともに自社も成長する。その結果、自社と顧客がWin&Winになるような発想が不可欠になってきた。ここでベースとなるのがマーケティング志向だ。
 これからは、印刷専業であっても受注型ではなく提案型営業をしていかないと仕事は取れなくなっていくだろう。顧客ニーズヘの対応と競争への対応を深めることで、企業力が強化されるのである。

マーケティング志向の企業風土へ
 印刷業界にマーケティング発想の必要性が問われてから30年ほどが経過している。言葉としては定着してきたが、未だにその本質を理解している企業は少ない。その大きな要因は、受注産業体質に他ならない。顧客から言われたものを言われた通り作り、言われた納期を守りさえすれば良かった。それで顧客が満足した時代もあった。今までの顧客の期待感とは、所詮その程度であったのだろう。
 デジタル化、ソフト・サービス化の進展とともに競争は激化し、企画提案の無い営業活動は存在感を失ってきた。印刷物だけでの差別化は困難になり、印刷付帯サービスヘの要求が増している。これからは顧客の課題を考え抜き、解決策を立て、実行・検証する提案型営業を行なう努力をするなど、新しいビジネスモデルの開発にもチャレンジし、顧客志向のビジネスヘの腕を磨いていく。そして顧客とともに成長していくという提案志向が「新創業」のポイントである。


​社会の大変化(潮流)の認識と対応
 時代の潮流を予測する目的は、意思決定の妥当性を高めるためで、2つの考え方がある。1つは過去の事例から成功や失敗のエッセンスを学び、意思決定に生かすためである。もう1つは、将来の予測や目標値をもとに現状とのギャップを埋めるために、どのような手立てが必要かを考えるためである。いずれも正解、不正解はなく、妥当性と一貫性が求められる。これからは社会の大きな潮流を予測することで、根拠と自信を持って戦略を構築し、組織を動かす材料としていく。そこには自らの理想とする姿、イメージの仮説が必要となる。その仮説を実施して、正しかったか、間違っていたかを検証することで、仮説の精度を高めていく。
 印刷のメディア特性を十分に理解し、電子メディアとの融合が求められたときには、各々の特徴や使い分けなどが答えられなければならない。クロスメディアの発想は今後の印刷業には不可欠な要素となってきた。

「新産業創造戦略」のビジネス支援分野
 「新産業創造戦略」(経済産業省)では、企業の事業再編などにより「ビジネス支援分野」が新産業分野の1つになるとしている。また少子化や2007年問題などからも、顧客企業の業務の支援ができる印刷品目はたくさん考えられ、印刷産業にとっては好機と捉えるべきだ。顧客に様々な提案ができるチャンスの到来であり、提案することでニーズを発掘できるだろう。
 経営者の仕事は会社の船頭舵取りである。社会の潮流は大変化を続けており、当分止まりそうもない。これからは今まで経験したことがないくらい大きく舵を切らなければならない。まさに新創業するような覚悟が求められ、この熱き思いを社内に浸透させるときが来ている。
 足元の生産性や収益性に不安があれば、もう一度、原点回帰し、第2ステージの業態変革7Keysを実施し、自社の弱みや社内のギャップを埋めておいて欲しい。


より競争力を高める発想
 自社の競争力を理解していない企業が多い。自社は顧客にどのように評価され、なぜ指名発注してもらえるのかを分析しているだろうか。
 今後の競争力強化の考え方の中心は「差別化」にある。競合他社と何が違うのか。どこが優れているのか。その強みに永続性はあるのかを自問自答する必要がある。お客様の笑顔が続くようなビジネスの好循環など、ユニークな優位性を1つでも多く所有して事業のアイデンティティを確立すべきであり、そこに経営資源を集中的に投入していくことになる。
 既存の競争のルールを守っている限り、競争要因は変わらない。市場の常識を覆すルールによるビジネスモデルを構築することで、競争要因が変わってくる。
 ルールキーパー【ルールを守るだけの企業】にとどまらず、ルールメーカー【新しいルールを作り、市場を創造できる企業】になれるように、常識を疑う習慣を養ってみてはどうか。
 競争力の強化は印刷業だけの問題ではない。多くの業界が海外の企業や業界の枠を越えた競争環境の激化にさらされている。今までの日本企業は、多くが同質化競争を戦略の中核にしてきた。
 具体的には「このような前例はあるのか」「競合他社もやっていますので」という理由が、戦略決定の決め手になっていた。これでは、利益を確保する機会を大きく失い、市場での存在感も得られずに細く短くという運命をたどる。
 また、競争力の要素として「企業の社会的責任」を忘れてはならない。環境問題、コンプライアンス、社会文化貢献活動など社会との関わりは日に日に増えている。一人一人の社員や企業は社会に活かされてこそ、初めて競争のスタート台に立てるのだという意識を持つことが大切なのである。


独自性を発揮できる武器
 多くの顧客が困っていることを解消できるように、印刷会社においても様々な工程の改善や技術の習得をしていくことが、独自性を発揮できる武器になっていく。自社独自の武器、自信を持って顧客に提案できる強いニッチ品目を持つということは、様々な波及効果が生まれる。独自性を創り出す源泉は顧客の課題を真剣に考え、問題解決の手助けを考えて提案していくというマーケティング発想を習慣化することである。自社で全てを作る必要はなく、共創ネットワーク企業と協調して生産していくことで、強みの幅も広がっていく。
 独自性を発揮できる武器の効果で最も大きいのは、営業が自信を持って得意先を訪問できること。得意先から評価されることで、得意先に夢を語り、自己主張する営業活動が定着する。1つでも独自の優位性を持つことで、競争のしかたも変わってくるのである。
力強くしなやかな企業へ
 現状に満足することは、企業にとって破滅への道であることをわきまえていなければならない。経営環境の変化は、時によってビジネスチャンスにも危機にもなる。上手く対応できる企業は好機にできるし、できない企業は対応に追われる。企業がしなやかな発想を持つためには「常識は変化するもの」という発想が必要となる。「市場の常識は非常識」と考えることで、未来志向になれるのである。
 近年、ソフト化、サービス化が多くの印刷業で推進されているのも、問題の本質を理解しているからであろう。また、lT化の進展と共にデジタルデータの加工・操作能力は大きな武器になっている。印刷業の存在意義をおおいに発揮するチャンスとも言える。
 ときには、自社の経営資源にこだわることなく、提案領域を拡大する勇気が問われてくるし、このために共創ネットワークを増やすことがますます重要になってくる。


新創業戦略はワンストップサービス構築
 「1カ所で買い物が済めばどんなに楽だろうか」という消費者のニーズに応えているのがスーパーマーケットや百貨店である。そのニーズの広がりは利便性を前面に打ち出したコンビニエンスストアを創造し、業態革命を生んだ。印刷業界にも同様なことが言える。顧客は最終商品にするまで多くの工程を必要とするものをその都度、個別に打合せし、発注するのでなく、もっと簡略化したいというニーズを持っている。
 一括で総合的に受注してくれる窓口ともいえるワンストップサービスヘの対応が、今後の印刷業の基本的サービスとして求められている。ワンストップサービスは、出発点と到達点の2段階がある。
 【出発点】のレベルは「印刷物制作を中心として前後工程の印刷付帯サービスを連携させた範囲」である。しかしこれは作り手側(印刷会社)の都合に過ぎない。
 【到達点】は本来的な「顧客が望むワンストップサービス」であり、印刷から関連する商品やサービスまでの幅広い一括したメディア総合受注の体制である。
 ワンストップサービスを実際に行なうには、仕事全体が仕切れて予算管理までができるプロデューサー機能が必要となる。全ての作業の総指揮官として、全体を把握し、指揮、命令をスムーズに遂行できる人材が必要である。プロデューサーは自社内や共創チームにおいても関係者の信頼が厚く、顧客への説得力も持っている。そうした人材の育成や確保を急がねばならない。
 また、ワンストップサービスを可能にするには、仕組みで考えなければならない。自社でできる範囲はどこまで、それ以外を頼む先はどこか、そして共創ネットワークとの連携方法、決済手段、責任の範囲などを明確に規定し推進することで、顧客の要望をかなえることになる。