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トップ > 特集 > 普及期に入ったノンプロセス・プレート:CTP導入のハードル低く ストレス低減、環境保護に評価

先進技術と革新的ソリューションを提供し続けるコダック ポリクローム グラフィックス社(以下、KPG)が、drupa2004で発表したノンプロセスサーマルCTPプレート「サーマルダイレクト」。国内でも昨年のJGAS2005で受注を開始。今年に入り導入が進み、ノンプロセスプレートは、いよいよ普及期に入りそうだ。その特長はやはり自動現像機や処理薬品を使用しないことに尽きる。自動現像機に関わるコスト、メンテナンス、スペースを排除することで、CTP導入のハードルを低くするとともに、環境保護印刷実現のツールとして市場の評価は高まっている。

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CTP導入のハードル低く
ストレス低減、環境保護に評価

印刷ジャーナル 2006年5月掲載

期待される機上現像方式

 CTPが世に登場してから大きな期待が寄せられてきたノンプロセスプレートの開発。その方式としては、(1)感光層をIRレーザーのパワーを利用して飛散させるアブレーション方式、(2)感光層自体が親水性から親油性に変わる相変化方式、(3)IRレーザーにより感光層を硬化させ、印刷機上の湿し水で膨潤させて緩んだ未露光の感光層をインキのタックで剥がすという機上現像方式、(4)水溶性樹脂の中に散りばめた親油性熱可塑性粒子からなる感光層をIRレーザーで溶融させ、クリーニングユニットで未露光の感光層を水洗する熱溶融方式がある。KPGでは、最も早くから開発されてきたアブレーション方式を採用し、2002年から「エクスサーモTP-Z」(アルミベース)を発売しているが、これは完全なプロセスレスを実現しているわけではなく、露光後に簡単な水洗処理が必要である。また、プレートセッターは、露光カスを取り除くためのバキューム装置を備えた機種を使う。
 これに対し、drupa2004で同社が発表したノンプロセスサーマルCTPプレート「サーマルダイレクト」は、DI印刷機でも使われている機上現像方式の発展系の技術が採用され、露光後の現像・水洗・ガム引き等の処理工程が一切不要な完全ノンプロセスプレートである。
 国内では年初から導入、とくに地方の印刷会社での導入が活発化しているという。



ストレス無くCTPへ

 最大の採用理由は、やはり自動現像機がいらないというメリットに尽きる。
 地方の印刷会社では、アナログ刷版、紙版など、多くが2~3つの製版工程をもつが、そこにCTPが加わると一時的に作業負担が増大し、実務が煩雑になる。とくに少人数の印刷会社では影響が大きく、CTP導入に二の足を踏んでいるケースが多い。その最大のネックとなるのが現像液の管理であろう。
 そんな印刷会社でもCTP化をスムースに進められるのが自動現像機を要しないノンプロセスプレート「サーマルダイレクト」である。自動現像機に関わるコスト、メンテナンス、人、スペース全てを排除することで、オペレータのストレスを無くし、新規のCTPユーザーにとってハードルの低いCTPシステム構築が可能になる。
全面的にサーマルダイレクトを<br />採用した津田印刷​​​ その事例が今年1月、刷版工程のCTP化に踏み切った(株)津田印刷(宮城県柴田郡、津田政行社長)である。全面的にサーマルダイレクトを採用し、従来の印刷仕様を一切変更せずに刷版工程のCTP化で生産性向上と短納期対応を実現している。
 「最大のメリットは機上での現像。つまりダウンタイムを利用して現像すること。これは単に自動現像機による現像処理をなくすだけでなく、生産性そのものを変えた」(同社取締役プリプレス責任者・津田春光氏)
 印刷適性は、PS版と同様にアルミの支持体に電解研磨と陽極酸化を施した砂目を採用することで、従来プレートと同等。月平均600版を使用する津田印刷では、耐刷力10万枚というスペックも確認済みだ。
 また、高いリニア特性を持ち、ドットゲインコントロールが容易である他、高解像力を備え、FMスクリーニングにも対応。津田印刷でも3月から、FMスクリーニング「スタッカート」を使い、付加価値印刷にも挑戦し、クライアントから高い評価を得ている。
 「サーマルダイレクトは、小~中ロット市場向けに菊半、菊四裁サイズの導入が多い。自動現像機がないことから版数の少ないユーザーにはメリットが大きく、従来CTP化を検討さえしなかったところでも今後導入が予想される」(KPG CTP販売促進課・畑信雄課長)。



既存ユーザーは「環境」

 「テストした印刷会社のほとんどで採用いただいている」(畑氏)というサーマルダイレクト。既存のCTPユーザーでも、環境保護印刷に取り組み社会的責任を果たすと同時に、差別化を図ることで価格交渉力を強化するため、サーマルダイレクトを採用するケースも増えている。
 中堅印刷会社では、昨年設立された環境保護印刷推進協議会「E3PA」による「クリオネマーク」を営業戦略的に活用しようという動きがある。サーマルダイレクトは「E3PA」が推奨する環境保護印刷「ゴールドステータス」に適合する製品であることも普及の要因だ。また(社)日本印刷産業連合会の「グリーンプリンティング認定制度」では「現像レス」という項目もあり、今後の普及を後押しする要素となりうるだろう。
 一方、印刷機上で高いパフォーマンスを発揮するサーマルダイレクトは、UV印刷の事例も出始めており、高い汎用性を発揮している。
 「UV印刷適正は確認できているが、運用上、もう少し経験値を重ねる必要がある」(畑氏)



IPEXデイリーに採用

サーマルダイレクトが採用された<br />「IPEXデイリー」 4月4日から英国バーミンガムで開催されたIPEX2006会場で毎日発行された新聞「IPEXデイリー」にもサーマルダイレクトが使用された。同新聞は、制作から印刷までのすべての製作工程が展示会場で行なわれ、コダックプリプレスソリューションの中核となる「Prinergyワークフローマネジメントシステム」を中心に、イメージキャプチャーから刷版作成までの各製品が使用された。一部を除きスタッカートスクリーニングも使用され、会場ではコダックの先進性、サーマルダイレクトの実用化をアピールしていた。



検版は「現像」ありき

 サーマルダイレクトは、低コントラスト、機上現像技術から起因する使用上の注意点として、(1)プレートスキャナが使えない(2)オフラインパンチは機種により可・不可(3)印刷の外注は注意--といったものがある。しかし(1)は「CIP4/PPFファイルによるインキ壺コントロール」、(2)は「主流がインラインパンチ」、(3)は「事前テストによるコミュニケーション」により、導入の障害となるケースはほとんどないようだ。
 「ノンプロセスプレートの問題点として検版性が叫ばれてきたが、実際は『現像』という不安定要素がなくなるため、設定さえしっかり行なえば、検版の必要性はなくなると考えている。逆に『現像』があったから検版しなければならなかったわけだ。また、現在の高い印刷適性を維持しながら感度を上げて生産性を高めることが次のステップと考えている」(畑氏)